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『運動器理学療法の「なぜ?」がわかる臨床アルゴリズム』より

連載 工藤慎太郎

2026.11.06

評価から治療選択へ,熟練者の頭の中にある「なぜ,そう考えるか?」を可視化した「なぜ?」シリーズ最新作。圧痛や荷重時痛,神経伸張テストといった評価の統合から,モビライゼーション等の治療選択,さらにはハイドロリリースや体外衝撃波治療を医師に相談する判断基準までをアルゴリズムで徹底解説しています。
「医学界新聞プラス」では本書の「第8章 変形性膝関節症」の項目より一部をピックアップし,4週にわたりご紹介します。

変形性膝関節症の臨床アルゴリズム

1 変形性膝関節症の痛みの原因を見極める

 

変形性膝関節症では,内側部や前面に疼痛が生じることがある。関節内の炎症による滑膜炎が生じると,滑膜の増殖に伴い,関節水腫が生じる。関節水腫が生じると,関節内圧が高まるため,関節周囲の筋が抑制される。特に内側広筋が萎縮することにより,膝関節機能が低下する。そのため,最初に関節水腫の有無を膝蓋跳動検査で評価する。

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1)内側部痛を見極める

滑膜炎による疼痛がコントロールできたら,次に膝内側部の構造に由来する疼痛を評価する。膝内側部に存在する構造としては,①内側半月,②内側側副靱帯などの関節構造,③鵞足構成筋の腱や半膜様筋腱およびその腱に加わる摩擦力を軽減する滑液包が挙げられる。

●鵞足構成筋腱や半膜様筋腱およびその腱に加わる摩擦力を軽減する滑液包

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 鵞足は,縫工筋,薄筋,半腱様筋の停止腱が脛骨粗面内側に付着する部位である。この部位には停止腱の深層に滑液包(鵞足包)が存在する。病態としては,鵞足構成筋の強い牽引力によって惹き起こされる付着部症と,その深層に存在する滑液包への摩擦力によって惹き起こされる滑液包炎が考えられる。いずれにしても鵞足構成筋の筋緊張を低下させることで,同部位に加わる力学的ストレスを低下させることが,理学療法に期待される。そのため,鵞足部の圧痛を認めたら,鵞足構成筋のどの筋の緊張がトリガーになっているかを,筋腹の圧痛と鵞足トリガー筋の判別テストで鑑別することで,効率的な治療が展開できる。
 難治例では,鵞足部や鵞足包に対する注射治療を行うこともある。そのため,鵞足部の画像評価を行い,付着部が変性しているのか,鵞足包が腫れているのかを鑑別する図8-5。

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図8-5鵞足部滑液包
a) 最も近位の縫工筋腱は表層の筋膜層と連結する。その深層に薄筋腱,半腱様筋腱が停止する。
b) 鵞足部滑液包が低エコーに観察でき,ドップラーモードで血流を認める(赤と青の部分)。正常膝で滑液包(*)が低エコーに観察されることは少ない。

 さらに,これらの治療を行っても疼痛の改善がみられず,疼痛部位が比較的広範囲である場合には,伏在神経由来の疼痛を疑い,伏在神経の圧痛を評価する。伏在神経は広筋内転筋板を貫いて,大腿遠位内側部を縫工筋に沿って下行し,膝蓋下枝と内側下腿皮枝になる図8-6。そのため,特に広筋内転筋板から縫工筋にかけての圧痛を評価する。

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図8-6伏在神経の走行
伏在神経は Hunter 管を出た後,膝関節レベルで膝蓋下枝と脛骨内側に走行する枝に分かれる。膝蓋下枝は縫工筋の深層を抜けて,膝蓋腱まで走行する。膝蓋腱を膝蓋支帯で切開する際に,膝蓋下枝を切離する場合がある。

●膝蓋大腿関節

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 膝蓋大腿関節のアライメント異常も膝蓋大腿関節を含めた伸展機構への力学的ストレスを増加させる。特に膝蓋骨高位や膝蓋骨の外側偏位が問題になる。いずれも膝蓋骨に付着する大腿四頭筋および膝前面の関節包の周囲構造のインバランスが問題になる。外側広筋の過緊張や腸脛靱帯の拘縮が生じている際には内側広筋の筋力低下が生じていることも多く,両者の改善が重要になる。

第2回へ続く

 

「次に何を見る? これでいいの?」評価・治療選択に自信がもてないセラピストへ

進化した「なぜ?」シリーズ最新作。圧痛、荷重時痛、ROM制限に神経伸張テスト、これらの理学療法検査をどう評価して、徒手療法、ストレッチング、モビライゼーションをどう組み立てていくのか?さらにはハイドロリリースや体外衝撃波治療の導入をどのタイミングで医師に相談するのか?本書は、運動器理学療法の複雑なプロセスをアルゴリズムに集約。「なぜ、そう考えるか?」が見えてくる。暗黙知を形式知に、そして実践知へ。 

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