エビデンスでひも解く ストレッチングのすすめかた
エビデンスと実践がつながる!これがストレッチングのスタンダード
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ストレッチングはリハビリ領域やスポーツ現場で広く用いられる一方、その処方の根拠まで十分理解されないまま実践されることも少なくない。本書はストレッチング研究の第一人者である中村雅俊氏らを編者に迎え、最新のエビデンスをQ&A形式でわかりやすく解説。さらに、関節の運動方向を基準に整理した実践的なストレッチング手技を豊富な写真とともに紹介する。「なぜ処方するのか」を理解し、明日の臨床や指導に生かせる一冊。
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序
理学療法士を目指していた学生時代,臨床実習でストレッチングを実施しようとしたとき,私はある壁にぶつかった.「どのくらいの強さで伸ばせばよいのか」「何秒間,何セット行うのが効果的なのか」「この方法で本当に目的の筋が伸びているのか」──当たり前のように行われていた手技であったにもかかわらず,その根拠を問われると何も答えられなかった.そのときに抱いた悔しさと「なぜなのか」という問いが,私がストレッチングの研究を続けてきた原点である.
本書はその疑問への,現時点での「最善の答え」をまとめたものだと考えている.もちろん,ストレッチングに関するすべてが解明されているわけではない.しかし,これまでに蓄積されてきた科学的根拠(エビデンス)をできる限り丁寧に整理し,臨床やスポーツ現場で実際に役立てられる形に落とし込むことを目指した.
本書には,いくつかの特徴がある.まず,個々の筋を単位とするのではなく,関節の運動方向を基準としてストレッチングを整理した点である.どの方向に関節を動かすことで,どの筋が伸張されるのかをイメージしやすいよう,解剖学的な情報も随所に盛り込んでいる.
次に,ストレッチングの方法を複数提示している点である.柔軟性の程度に応じて選択できるようにしたほか,セラピストが行うパッシブストレッチングだけでなく,自身で実施できるアクティブストレッチングやダイナミックストレッチングも取り上げた.このように,多様な実施方法を1冊の中で体系的にまとめている点は,同種の書籍にはあまりみられない,本書ならではの特徴といえよう.
さらに,随所に「小話」として,臨床やスポーツ現場でよく取り上げられる話題や,知っていると少し役に立つ知識を盛り込んだ.エビデンスを正確に伝えることに加え,読み物としても楽しみながら学べる内容となるよう心がけた.
本書は,理学療法士・作業療法士を目指す学生から,臨床で活躍するセラピストやアスレティックトレーナー,さらにはストレッチングを実践するアスリートや運動愛好家まで,幅広い読者を対象としている.それぞれの立場に応じて活用していただけるよう内容の構成や解説に工夫を凝らした.また,ストレッチングを研究テーマとする方々にとっても,エビデンスを整理した資料として活用していただければ幸いである.
本書を手にとった皆様が,「明日の臨床で試してみよう」「これまでのやり方を見直してみよう」と思えるような知識と技術をお届けできたのであれば,編者としてこれほど嬉しいことはない.
本書の企画・編集にあたっては,共同編者の三木貴弘先生,医学書院の北條立人氏をはじめ,多くの関係者の皆様に多大なるご支援をいただいた.また,神戸国際大学の武内孝祐先生,城西国際大学の深谷泰山先生には,長年にわたる共同研究を通じて培われた豊富な知見を,本書の執筆においても惜しみなくご提供いただいた.ここに記して,心より感謝申し上げる.
2026年6月
編集を代表して 中村雅俊
目次
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序
■エビデンス編
Q1 ストレッチングの種類について教えてください
Q2 関節の柔軟性を増加させるためのスタティックストレッチングのエビデンスを教えてください
Q3 そもそも身体の「柔軟性」とは何でしょうか? 関節の柔軟性=筋の柔軟性の評価なのでしょうか?
Q4 スタティックストレッチングで即時効果を得るには,どのくらいの時間実施すればよいでしょうか?
Q5 スタティックストレッチングを一定期間行うことにより,どのような効果が期待できますか?
Q6 スタティックストレッチングはウォーミングアップのルーティンから排除するべきですか?
Q7 定期的なスタティックストレッチング介入を行うと,筋力低下や筋萎縮が生じますか?
Q8 ストレッチングはどのくらいの強さで行うのがよいでしょうか?
Q9 スタティックストレッチングは障害予防に有効ですか?
Q10 ダイナミックストレッチングとバリスティックストレッチングにはどんな効果がありますか?
■実践編
上肢の筋肉へのストレッチング
1 肩関節屈曲筋群
2 肩関節外旋筋群
3 肩関節内旋筋群
4 肩関節外転筋群
5 肩関節内転筋群
6 肘関節屈曲筋群
7 肘関節伸展筋群
8 手関節屈曲筋群
9 手関節背屈筋群
頸部・体幹の筋肉へのストレッチング
1 頸部屈曲筋群
2 肩甲骨挙上筋群
3 頸部回旋筋群
4 頸部側屈筋群
5 体幹屈曲筋群
6 体幹伸展筋群
7 体幹側屈・回旋筋群
下肢の筋肉へのストレッチング
1 股関節屈曲筋群
2 股関節伸展筋群
3 股関節外旋筋群
4 股関節内旋筋群
5 股関節外転筋群
6 股関節内転筋群
7 膝関節屈曲筋群
8 大腿四頭筋
9 足関節底屈筋群
10 足関節背屈筋群
11 足関節その他の筋肉
索引
[エビデンス小話]
ストレッチングの方法は解剖学的な肢位での作用とは異なることがある
研究分野で用いられる用語──弾性率(剛性率)
研究分野で用いられる用語──stress-relaxationとストレッチング効果
Constant-angle vs constant-torque stretching
男性よりも女性のほうが柔軟性は高いのは本当?──ストレッチングの効果は性別によって違う
加齢に伴う筋の柔軟性の変化とストレッチング効果
研究分野で用いられる用語──torque-angle curve, stiffness, stretch tolerance
ストレッチングにより関節拘縮を改善することができるのか?
ストレッチングが筋血流に及ぼす効果
ストレッチングが血管(動脈スティフネス)に及ぼす効果
トレーニング前,トレーニング中のスタティックストレッチングで疲労は予防できるのか
運動後にストレッチングを実施することで筋肉痛を予防できる? できない?
レジスタンストレーニング前およびセットの間にストレッチングを実施することはよいのか




