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取材記事

2026.10.22

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写真 塚本康司氏

第34回総合リハビリテーション賞贈呈式が2026年9月17日,医学書院(東京都文京区)にて行われた。本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東京大学を退官する際(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団へ寄付した基金を原資として発足。2025年発行の同誌に掲載された全24編の投稿論文を対象に,最も優れた論文に賞が贈られた。

◆自殺企図は回復期リハビリテーションの阻害因子ではなく,適切な介入により同等の転帰が期待できる可能性

受賞論文は,塚本康司氏(研究当時・東京都リハビリテーション病院,現・東京大学医学部附属病院/医師)他による「若年外傷患者において受傷機転が自殺企図であることは回復期リハビリテーションの阻害因子となるか——傾向スコアマッチングを用いた後方視的研究」[総合リハビリテーション.2025;53(10):1039-45.]である。

自殺企図による外傷患者は,訓練意欲の低さや家族関係の脆弱さ,精神疾患・希死念慮の再燃などへの懸念に加え,診療・看護体制の不十分さや病棟認定維持にかかわる実績指数・在宅復帰率への影響が危惧されることから,急性期病院から回復期病院への転院依頼を断られる例が少なくない。本論文は,切迫した希死念慮がなく精神的に安定していることなどを条件に自殺企図者を受け入れてきた東京都リハビリテーション病院において,39歳以下の若年外傷患者130人を自殺企図群23人と非自殺企図群107人に分け,自殺企図が回復期リハビリテーションの阻害因子となるかを後方視的に検証したもの。

全体の単純比較では,自殺企図群のほうが若年で脊髄損傷が多く,急性期入院日数が有意に長期,入院時FIM(Functional Independence Measure)が有意に低いなど重症度が高い傾向にあり,結果として回復期入院日数が長く,退院時FIMや自宅退院率が低いなど一見して転帰不良であった。しかし,回復期リハビリテーション開始時点の患者条件を揃えるため,年齢,損傷部位,急性期入院日数,入院時FIMの4項目を用いた傾向スコアマッチングにより抽出した非自殺企図群23人と自殺企図群23人を比較したところ,有意差を認めたのは性別(自殺企図群で女性が多い)と介入職種(自殺企図群では再発防止や社会調整のため全例にソーシャルワーカーが介入など)のみであり,転帰にかかわる回復期入院日数,退院時FIM,退院先の有意差は全て消失した。

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この結果から,自殺企図者の転帰の違いは入院時の患者条件によるものであり,自殺企図そのものは回復期リハビリテーションの阻害因子ではなく,回復期リハビリテーション病棟で適切な介入を行えば非自殺企図者と同等の機能回復と転帰が期待できると結論づけている。

『総合リハビリテーション』誌編集委員を代表して藤谷順子氏(国立国際医療センター)は,「臨床上極めて重要でありながら正面から取り上げることがためらわれてきた問いに真摯に向き合い,転帰の違いは受傷機転そのものではなく患者背景や入院時の状態による可能性を丁寧な分析で示した」と評価。さらに,自殺企図群の全例にソーシャルワーカーが介入している点にも言及し,転院調整に難渋する急性期病院の悩みを回復期病院の側から受け止め,適切な患者選択と多職種による社会的支援があれば十分な機能回復と社会復帰を期待できることを明確に示した臨床に根差した動機も高く評価した。その上で,「本論文の価値は,漠然とした懸念や先入観に対し,臨床データをもって答えた点にある。自殺企図という経緯によって患者のリハビリテーションの可能性が狭められることのない医療への,確かな一歩となることを願う」と講評した。

受賞のあいさつで塚本氏は,共著者や査読関係者への謝意を示すとともに,最近の事例として,リハビリテーション科医が不在の病院から自殺企図患者のリハビリテーションについて相談を受け,退院までサポートしたことを紹介。「リハビリテーション科医は不足している現状がある一方,『リハビリテーション科医の専門性とは何か』との話がなされることもあるが,このように患者さんに寄り添ってサポートできるのはリハビリテーション科医ならではではないか」と語り,あいさつを終えた。

『総合リハビリテーション』誌では2026年にも,同年に掲載された投稿論文から第35回総合リハビリテーション賞を選定する。詳細については同誌投稿規定を参照されたい。