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実際どうなの? 糖尿病診療のココが知りたい

連載 小森田祐二

2026.10.13 医学界新聞:第3590号より

 糖尿病治療薬の中で,評価が少し難しい薬の一つがツイミーグ®(一般名:イメグリミン)です。ツイミーグ®は,2021年9月に日本で発売された2型糖尿病治療薬です。発売当初は“新規作用機序”という点で注目されました。

 一方で,実際の外来では「どの患者さんに使えばよいのか」「DPP-4阻害薬やメトホルミンと比べて何が違うのか」「結局,どれくらい効くのか」が少し見えにくい薬でもあります。日本人で臨床試験が行われていることは強みですが,裏を返せば,SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬のように,国際的な大規模アウトカム試験や海外ガイドラインの中で位置づけが固まっている薬ではありません。今回は,ツイミーグ®を,“日本の外来でどう位置づけるか”という視点で整理してみたいと思います。

 私自身の結論から言うと,ツイミーグ®は「主役」の薬ではありません。SGLT2阻害薬のように心不全や慢性腎臓病を意識して早めに使う薬でも,GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬のように体重減少までを期待して使う薬でもありません。現在の糖尿病診療では,血糖を下げるだけでなく,心臓や腎臓を守る視点も含めて薬を選ぶ場面が増えています。その中でツイミーグ®は,現時点では「血糖を下げる薬」であり,「HbA1cをもう少し下げたいときの選択肢の一つ」と考えるのが,実臨床に近いと思います。

 では,ツイミーグ®はどれくらい効く薬なのでしょうか。日本人2型糖尿病患者を対象としたTIMES 1試験では,イメグリミン1000 mg 1日2回の単剤投与により,24週後のHbA1cはプラセボと比べ0.87%低下しました1)。この数字だけを見ると,単剤でもそれなりに効く薬という印象になります。ただし,長期試験であるTIMES 2試験を見ると,52週時点でのHbA1c変化量は単剤では-0.46%でした2)。

 一方で,他剤との併用では効果に幅があり,特にDPP-4阻害薬との併用でHbA1cが-0.92%と比較的大きく低下しました(図1)。さらに,DPP-4阻害薬で効果不十分な日本人2型糖尿病患者にツイミーグ®を追加したFAMILIAR試験の中間解析では,24週時点でイメグリミン群vs.プラセボ群でHbA1c変化量は1.02%でした3)。ただし,TIMES 2試験はオープン試験,FAMILIAR試験も現時点では中間解析であり,数字は参考程度です。ツイミーグ®は「入れたら長く続ける薬」として扱うより,1~3か月で効果を判定し,続ける価値があるかをその都度確認していくのがよいと思います。

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図1  併用薬別に見たツイミーグ®のHbA1c低下効果(文献2より転載,一部改変)
TIMES2試験における52週時点でのHbA1c変化量を示している。

 ツイミーグ®の特徴としてよく挙げられるのが,「ミトコンドリアに作用する」という説明です。作用機序としては,インスリン分泌を助ける,肝糖産生を抑える,インスリン感受性を改善する,インクレチンに関与する,などいろいろな説明がされていますが,これらの根拠の多くは細胞実験や動物実験のデータです。

 糖尿病治療薬は,血糖が改善するだけでミトコンドリア関連の指標が良く見えることがあります。高血糖,脂肪毒性,炎症,インスリン作用不全などが改善すれば,結果としてミトコンドリア機能が良くなったように見えるからです。「ミトコンドリア機能を改善する薬」と言い切るよりも,「血糖を下げる機序としてミトコンドリア関連経路が想定されている薬」くらいの理解でいいと思います。

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 基本的には,SGLT2阻害薬,メトホルミン,DPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬,インスリンなど,より優先度の高い薬を一通り考えます。そのうえで,腎機能,消化器症状,費用,注射への抵抗,体重,低血糖リスクなどの理由で選択肢が限られる場合に,ツイミーグ®を候補にします。特に,DPP-4阻害薬を使っているもののHbA1cをもう少し下げたい患者さん,やや痩せ型でインスリン分泌能が少し落ちていそうな患者さん,低血糖や体重増加を避けたい患者さんには,試してみる価値があります。

 筆者は,「高齢・非肥満で,DPP-4阻害薬はすでに内服しており基礎インスリン使用も検討するところだが,費用・注射への抵抗・サポート体制などから,インスリンは使いにくい」場面で使用することが多いです。また,「糖尿病罹病期間が長く,長期でSU薬を内服しているが,高齢で低血糖リスクが年々上昇している」場面で,SU薬からの切り替えとして使用することもあります。

 逆に,高度の肥満で,食行動や体重増加が血糖悪化理由の中心にある患者さんに対し,内服薬をただ積み上げる形でツイミーグ®を追加するのは,あまり良い一手ではありません。例えばBMI 30前後で,間食や飲酒が多く,SGLT2阻害薬やメトホルミンを使ってもHbA1cが8%台,という患者さんでは,ツイミーグ®を足しても問題の本質は解決しにくいです。

 腎機能低下例ではどうでしょうか。以前は使いにくい印象がありましたが,製造販売後の第4相試験であるTWINKLE試験では,eGFR 45未満の2型糖尿病患者に対して,腎機能に応じて減量しながら52週投与され,結果として,HbA1cは24週で0.53%,52週で0.47%低下しました4)。

 ただし個人的には,腎機能低下が進行している患者さんにツイミーグ®を使用してHbA1cを少し下げることに大きな意味があるとは思えず,「腎機能低下が進行しているのにHbA1cが目標を達成していない」場合は,まずインスリン(かつ/またはGLP-1受容体作動薬)を検討し,腎保護効果のある他の薬剤の使用や,生活指導に重点を置きます。添付文書上はeGFR 10以上であれば用量調整して投与可能になっていますが,個人的にはeGFR<30でツイミーグ®を導入することはほとんどありません。

 副作用で一番意識すべきは消化器症状です。TIMES 2試験では,イメグリミン単剤投与で悪心6.7%,下痢3.0%,便秘3.7%,嘔吐0.7%の割合で報告されています2)。頻度が極端に高いわけではありませんが,実臨床では胃腸症状が継続の妨げになる患者さんがいます。特にメトホルミンとイメグリミンの併用では,悪心12.5%,下痢17.2%と,頻度が上昇します5)。多くは投与4か月以内に発症し,軽症で短期間に改善する例が多いとされていますが,もともと胃腸が弱い患者さん,病歴が長く自律神経障害が疑われる患者さん,高齢で食欲低下が心配な患者さんでは,導入初期に注意が必要です。

 低血糖については,単独やDPP-4阻害薬などとの併用ではほとんど起こりません。SU薬やインスリンと併用すればもちろん低血糖リスクは上がりますが2),そもそもイメグリミンはSU薬やインスリンが使いにくい人で使用することが多いので,基本的には併用しないように注意します。

 もう一つ,地味ですが重要なのが「飲みにくさ」です。ツイミーグ®は錠剤が大きく(図2),通常は1回2錠,1日2回の服用です。しかも新薬なので薬価も決して安くありません。「大きい薬が増えます」「お腹の症状が出ることがあります」「費用も少しかかります」と説明したうえで,それでもツイミーグ®が必要だと考える理由(低血糖を避けたい)を導入時に丁寧に説明したほうがよいです。

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図2  実物大のツイミーグ® 
※Web版,PDF版は実寸ではありません

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 「ツイミーグ®は日本でしか販売されていない,心腎イベント抑制エビデンスもない,海外ガイドラインにももちろん載っていない」と批判的に言われることも多いですが,肥満2型糖尿病が中心の欧米では使いどころがないでしょうし,今後も日本だけの薬にはなる可能性が高いとは思います。ただし,日本でしか使われていないからといって,価値が低いとは限りません。アメリカでは物足りないけど日本では便利な軽自動車のように,非肥満,高齢の方,インスリン分泌能が低下しやすい日本人の外来では,必要とされる場面があると思います。


1)Diabetes Care. 2021[PMID:33574125]
2)Diabetes Obes Metab. 2022[PMID:34866306]
3)Diabetes Obes Metab. 2025[PMID:40116188]
4)J Diabetes Investig. 2025[PMID:40757959]
5)J Diabetes Investig. 2025[PMID:39723797]

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林眼科病院付属林内科クリニック 院長

2009年九大医学部卒。福岡赤十字病院,九大病院,嘉麻赤十字病院など経て,20年より九大大学院医学研究院病態機能内科学特任助教。24年より現職。XではDr.U@内科医(@dr_ukio)として,糖尿病診療に関する有益な情報を随時発信中。著書に『いま,すぐ,ひける 糖尿病診療ノート』(日本医事新報社)。

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