神経理学療法学講義
脳卒中編
脳卒中理学療法のNew Standardを示す、学会編集のテキスト
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日本神経理学療法学会が企画・編集する、神経理学療法の“標準”を体系的に学ぶためのテキスト。脳卒中に関連する運動障害・痙縮、歩行障害、協調運動障害/姿勢バランス障害、高次脳機能障害を軸に、神経メカニズム、脳画像所見、評価の種類と特徴、臨床症状とメカニズム、理学療法エビデンスを統合的に解説し、臨床と教育の標準化をめざす。学術大会の教育講演をもとに構成され、神経理学療法の現在地と実践知を提示する一冊。
| 編集 | 一般社団法人 日本神経理学療法学会 |
|---|---|
| 発行 | 2026年07月判型:B5頁:240 |
| ISBN | 978-4-260-06481-1 |
| 定価 | 5,280円 (本体4,800円+税) |
更新情報
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2026.08.27
- 序文
- 目次
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序文
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序
このたび,一般社団法人日本神経理学療法学会として初めての著作となる『神経理学療法学講義──脳卒中編』を刊行できますことを,大変うれしく思っております.本書は,2021年から2023年にかけて本学会で開催された教育講演をもとに企画されたものであり,神経理学療法の標準とは何かをあらためて見つめ直し,その共通認識を広く共有することを目的としてまとめられました.
脳卒中をはじめとする中枢神経障害に対する理学療法は,障害像の多様さや病態の複雑さから,高い専門性と的確な臨床判断が求められる領域です.その一方で,臨床の現場で何をよりどころとし,どのような考え方を共有していくべきかについては,神経障害領域におけるコモンセンスを整理し,次の世代へと確かに引き継いでいくことがますます重要になっています.本書は,そうした課題に応えるべく企画されたものであり,神経理学療法に携わる者が共有すべき基本的な視点を示す一冊になったのではないかと考えております.
本書では,「運動障害・痙縮」「歩行障害」「協調運動障害/姿勢バランス障害」「高次脳機能障害」という重要なテーマについて,それぞれ第一線でご活躍の先生方にご執筆いただきました.いずれの章も,日々の臨床に役立つ内容であると同時に,神経理学療法を臨床医学としてどのように位置づけていくのか,その基盤となる科学的根拠をあらためて考える機会を与えてくれるものと思います.本学会としても,この領域における学術的蓄積をさらに深め,科学的根拠に基づく知見を継続して示し続けることで,神経理学療法の発展にしっかりと貢献していきたいと考えております.
また,本書の刊行にあたっては,次世代を担う多くの先生方にご参画いただきましたことを,大変心強く感じております.こうした学術的な取り組みが,世代を超えて知見をつなぎ,本学会の今後の発展を支えていくものと確信しております.ここに,執筆に携わってくださったすべての先生方に心より感謝申し上げます.とりわけ,本企画を学術的に牽引してくださった学術局長・畿央大学の森岡周先生,そして本書の編集に多大なるご尽力を賜った理事・順天堂大学の藤野先生に,深く御礼申し上げます.
本書が,神経理学療法に携わる臨床家,教育者,研究者の皆様にとって有益な指針となり,わが国における神経理学療法のさらなる発展につながることを心より願っております.
一般社団法人 日本神経理学療法学会 理事長
大畑光司
目次
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序
エディトリアル 縦糸と横糸で編む神経理学療法学
■運動障害・痙縮
① 神経メカニズム
1 運動発現に関与する脳領域
2 随意運動に関与する下行性脊髄路
3 随意運動の遂行にかかわるプロセス
4 随意運動時の大脳皮質運動関連領野(M1・SMA・PM)の活動
5 一次運動野と皮質脊髄路
6 補足運動野と運動前野の機能
② 脳画像所見
1 脳損傷部位と運動障害の関連性
2 拡散テンソルトラクトグラフィ(DTT)による皮質脊髄路の評価
3 臨床応用のための皮質脊髄路の三次元的理解
③ 評価の種類と特徴
1 ガイドラインで推奨されている評価
2 各評価に含まれる項目
3 既存論文で多く使用されている評価
4 評価の特徴や目的に合わせた評価法の選択
5 評価の内容や目的を理解するうえで重要な用語
6 評価各論
④ 臨床症状とメカニズム──運動麻痺
1 発生機序
2 病態生理と臨床症状
3 回復過程と予後
⑤ 臨床症状とメカニズム──痙縮
1 痙縮の定義
2 疫学と臨床的背景
3 臨床症状
4 発症後経過と痙縮出現の時間軸
5 メカニズム総論:反射性要因と非反射性要因の相互作用
6 反射性要因:脊髄反射回路の過興奮
7 非反射性要因:筋・腱複合体の構造学的変化
8 上位中枢の不適応と動作時の痙縮:痙性運動障害の視点
⑥ 理学療法エビデンス
1 運動障害に対する理学療法の基本原則
2 上肢運動障害に対する理学療法
3 下肢運動障害に対する理学療法
4 痙縮に対する理学療法
5 痙性運動障害に対する介入
■歩行障害
① 歩行の神経メカニズム
1 歩行制御の神経機構の基本的枠組み
2 定常的歩行動作を支える神経機構
3 随意的歩行運動を支える神経機構
4 情動にもとづく歩行制御の神経基盤
② 脳画像所見
1 歩行の神経機構と基礎神経科学的知見
2 脳卒中者の歩行障害に関連する因子
3 歩行障害と脳画像研究
4 脳画像所見を活用した理学療法の実際
③ 評価の種類と特徴
1 評価尺度の概要
2 臨床に用いる値の解釈
3 歩行評価の詳細と特徴
4 評価の意義
④ 臨床症状とメカニズム──運動制御
1 臨床症状の特性
2 歩行能力の低下
⑤ 臨床症状とメカニズム──認知制御
1 適応的歩行の定義と構成要素
2 個人因子の適応的歩行への影響
3 課題因子の適応的歩行への影響
4 環境因子の適応的歩行への影響
5 脳卒中者の予期的能力に関連する評価
6 脳卒中者の適応的歩行調整のアプローチ方法
⑥ 理学療法エビデンス
1 歩行障害と理学療法
2 歩行障害に対する理学療法ガイドライン
■協調運動障害/姿勢バランス障害
① 神経メカニズム
1 協調運動について
2 姿勢バランス
② 脳画像所見
1 姿勢バランス障害に関連する脳領域
2 脳幹・小脳の脳画像解析と協調運動・姿勢バランス
3 基底核レベルの脳画像解析と協調運動・姿勢バランス
③ 評価の種類と特徴
1 バランスのタイプと必要となる動作
2 各バランスと転倒との関係
3 バランス障害の評価の目的
4 座位バランスの評価
5 立位バランスの評価
6 診療で推奨される座位,立位バランスの評価ツールと評価時期
④ 臨床症状とメカニズム──協調運動障害
1 協調運動障害と運動失調
2 協調運動障害の特徴とメカニズム
3 運動失調の鑑別評価
⑤ 臨床症状とメカニズム──姿勢バランス障害
1 姿勢の平衡と定位
2 姿勢制御の神経機構
3 各種神経疾患における姿勢障害のメカニズム
4 重心動揺計測を用いた姿勢障害の評価
5 重心の制御特性を考慮した評価の意義
⑥ 理学療法エビデンス
1 姿勢バランス障害と理学療法
2 姿勢バランス障害と課題指向型アプローチ
3 姿勢バランス障害に対する理学療法ガイドライン
4 姿勢バランス障害に対する理学療法エビデンス
■高次脳機能障害
① 神経メカニズム
1 遂行機能障害の神経メカニズム
2 注意障害の神経メカニズム
3 姿勢定位障害の神経メカニズム
4 失行の神経メカニズム
5 視覚失認の神経メカニズム
6 身体失認の神経メカニズム
7 片麻痺の病態失認の神経メカニズム
② 脳領域の画像所見
1 病巣を局在ではなくネットワークからとらえる必要性
2 全般性注意障害に関連する脳領域
3 半側空間無視に関連する脳領域
4 pusher現象に関連する脳領域
5 高次脳機能障害に関連する主な連合線維束の構造と画像上の同定
6 高次脳機能障害に関連する主な投射線維束の構造と画像上の同定
③ 評価と種類
1 MMSE(mini-mental state examination)
2 MoCA(Montreal cognitive assessment)
3 TMT(trail making test)
4 標準注意検査法(clinical assessment for attention:CAT)
5 FAB(frontal assessment battery)
6 BIT(behavioral inattention test)
7 CBS(Catherine Bergego scale)
8 KF-NAP(Kessler foundation neglect assessment process)
9 その他の半側空間無視の評価
10 SCP(scale for contraversive pushing)
11 BLS(Burke lateropulsion scale)
④ 臨床症状とメカニズム──注意障害・半側空間無視
1 注意障害とは?
2 注意障害の神経機構とその臨床症候
3 半側空間無視とは?
4 神経ネットワークと病態メカニズム
5 症候分類と臨床的特徴
6 空間無視と関連する認知機能の低下および合併しやすい症候
7 姿勢・行為・移動能力との関連
8 回復過程と代償戦略
⑤ 臨床症状とメカニズム──姿勢定位障害
1 pusher現象
2 listing phenomenon
3 視床性失立症(thalamic astasia)
4 lateropulsion
⑥ 理学療法エビデンス
1 半側空間無視(USN)
2 全般性注意障害
3 姿勢定位障害
索引
書評
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脳卒中理学療法の“判断軸”を整える
書評者:髙良 光(琉球大病院医療技術部リハビリテーション部門)
本書を読んでいると,「あのときの担当症例は実はあの病態だったのでは」「この評価のほうが症状をうまくとらえることができたのでは」といった反省とともに,次はもっと病態解釈を深く考えて介入してみたいという気持ちが強くなってくる。
本書は臨床に出たばかりの若手にお薦めしたいだけではなく,若手に指導する機会が多い中堅やベテランにもお薦めしたい一冊である。評者がまだ右も左もわからない新人理学療法士だった約20年前,“神経理学療法”という言葉を耳にしたことはなかった。当時はまだ“〇〇法”などの手技系が主流で,基本的な病態を理解することやガイドラインを活用することは養成校でも十分教わっていなかった(当時の教育が良くなかったということではなく,そのような時代であったということ)。標準化には程遠く,各自がやりたいことをやっていた時代かもしれない。一方で最近は多くの情報が溢れており,その中でいったい何を押さえればよいのか迷うことが多い。そのような中で,学会がいま押さえるべき知識を一冊の本にまとめたことは非常に意義深い。
本書は200ページを超えるボリュームであるが,内容は「運動障害・痙縮」「歩行障害」「協調運動障害/姿勢バランス障害」「高次脳機能障害」の4つの大項目に分かれている。それぞれについて,発生メカニズム,病態理解,評価法,理学療法エビデンスなどが体系的にまとめられており,介入方法一辺倒ではなく,病態理解や理論的背景をしっかり押さえることができる。また最新のエビデンスやガイドラインを踏まえた理学療法アプローチもまとめられている。文字が多く,図がやや少なめで,読み込むには気合が必要そうだが,脳卒中診療にかかわる理学療法士にとって興味深い内容ばかりで,読んでいるとあっという間に時間が過ぎていく。
本書の内容が充実しているのは間違いないが,序文およびエディトリアルでは大畑光司氏(北陸大医療保健学部教授),森岡周氏(畿央大ニューロリハビリテーション研究センター教授)が本書にかけた熱い思いを語り,神経理学療法の発展に向けた展望を示しており,こちらもぜひ一読いただきたい。エディトリアルにて「標準化とは,理学療法士が共有すべき基礎知識,評価の視点,病態の捉え方,介入を選択するための判断軸を整えることである」と森岡氏が述べている。この「判断軸を整える」という言葉の意味が本書を読むことで理解できるかもしれない。
神経理学療法に携わる身として,この『神経理学療法学講義―脳卒中編』は基礎となる知識を提供してくれる一冊であり,「標準化とは何か?」をあらためて考えさせられる一冊でもあった。少しでも本書が気になっている方がいればぜひ手に取って,著者の熱い思いを感じてほしい。
FROM CHAOS TOWARD CLARITY
書評者:髙橋 忠志(東京都立荏原病院リハビリテーション科/日本神経理学療法学会東京地方会リーダー)
本書の書評を担当することは,名誉であると同時に大変な重責と感じました。一度はお断りしようとも考えましたが,本書を拝読して感じたことを率直に書かせていただきます。
米国では,神経理学療法をどのように考え,教え,実践していくべきかを節目ごとに問い直す場として,STEP会議が開催されてきました。第1回は1966年のNUSTEP(Northwestern University Special Therapeutic Exercise Project)です。Bobath,Brunnstrom,PNF,Roodなど,当時主流であった神経促通アプローチが取り上げられ,そのProceedingsは約1,200ページにも及び,1980年代まで理学療法教育の主要教材として利用されました。
1990年にはIISTEP会議が開催されています。IISTEP会議は神経促通アプローチを中心とした時代から,Motor Controlに関する新しい理論・知識を取り入れる時代へ神経理学療法のパラダイムシフトを象徴する転換点とされます。
その後,2005年にIIISTEP会議,2016年にIVSTEP会議が開催され,今後の神経理学療法の未来が議論されています。
わが国は米国理学療法の影響を強く受け,その影響は少なからず現在までも続いているとIISTEP会議から36年たった今もなお感じることがあります。
また,臨床現場では現象から治療,例えば「重度麻痺だから長下肢装具」といったように目の前の現象と治療を直接的に結び付け,その背景にある病態やメカニズムを十分に吟味しない臨床思考に出合うことがあります。
本書では,運動障害・痙縮,歩行障害,協調運動障害/姿勢バランス障害,高次脳機能障害の4つのテーマについて,神経科学を基盤に,評価,病態理解,仮説,治療プログラムの立案・実施,効果判定へと至る臨床推論の過程が明確に示されています。この流れのまま構成されているため,臨床を思い浮かべながら心地よく読み進めることができます。また,引用文献は二次元コードから各論文へアクセスでき,読み手をさらに深い学びへと誘います。こうした構成からも,本書が卒後教育の一端を担おうとする編集者・執筆者の不退転の覚悟を感じます。
KimberleyらはIVSTEPの総括に「FROM CHAOS TOWARD CLARITY」と題し,IISTEPを振り返っています。当時は,“breaking down of ideas”と“sense of chaos”が生じ,それまで大切にされてきた信念が揺らぎ,専門領域における権威者(gurus)や異なる学派(sects)が調和していく時代でした。そして結語では,既存の理解や信念が覆される不快さや混沌を受け入れ,古い考えと新しい考えを融合することによって,真理へと前進することが述べられています。
本書は,まさに日本の神経理学療法学における“FROM CHAOS TOWARD CLARITY”を象徴するターニングポイントとなる一冊です。単なる知識のアップデートにとどまらず,脳卒中理学療法の「New Standard」として学び直すための一冊として,多くの理学療法士に手に取っていただきたいと思います。
最後に,評者は2023年3月に開催された日本神経理学療法学会SIGsで装具療法のファシリテーターを担当しました。事前のオンライン会議で本書編集委員のお一人である森岡周先生(畿央大ニューロリハビリテーション研究センター教授)に「SIGsは米国のSTEP会議をめざしているのですか?」と尋ねたところ,「日本はまだSTEP会議を行えるまで成熟していない」との返答がありました。
森岡先生,われわれはどの程度成熟しましたか?
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。




