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Dr.いっしーの聴診レッスン

連載 石井大太

2026.04.03

研修医の皆さんは自分の聴診器をきちんと“ベッドサイド”に連れて行っていますか?
ロッカーの肥やしや医局のテーブルのオブジェと化してはいませんか?

学生の皆さんは自分の聴診器はもう手にしましたか?
聴診器に触れるのに早すぎることはありません。ぜひ自分に合う聴診器を見つけて,積極的に触れ合いましょう。

本連載では,臨床現場ですぐに生かせる「聴診のコツ」をクイズ形式で学んでいきます。
第1回は聴診の基本編です。まずはウォーミングアップとして,次の4つの質問の答えを考えてみてください。

いくつ自信を持って答えられましたか?
それでは,一緒に答え合わせをしながら,聴診の基本をマスターしていきましょう!


Q1. 自分に合う聴診器はどうやって見つけ出す?

A. ①イヤーピースのフィット感,②ベル型と膜型の切り替え,③実際の聴診音の3点をチェックする

「弘法筆を選ばず」とよく言われますが,聴診に慣れていない初学者においては,自分に合う聴診器を積極的に探して欲しいと思います。 『サパイラ──身体診察のアートとサイエンス 第2版』にも“最初に入手した聴診器を約20年は持つことになるだろうから,注意して選びなさい。自分を「それに合わせよう」などと思って買わないこと”と記載があります1)
選ぶ際の前提となる知識として,まずは聴診器の大まかな構造を理解しておくことが必要です。聴診器は患者に当たる側から順に,チェストピース,チューブ,耳管,イヤーピースで構成されています(図1)。

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図1 聴診器の構造

自分に合う聴診器を見つけるための,具体的な3つのポイントは以下の通りです。

①イヤーピースのフィット感を大事に
イヤーピースは自身の耳孔に密着するものを選ぶことが重要です。この時素材や大きさによっては耳閉感が強く,かえって聴診に集中できないこともあるため,ストレスなく聴診ができるものをいろいろと試してみましょう。

②ベル型と膜型を備えたものがオススメ
ものによってはチェストピースを圧迫する力で膜型とベル型が分けられる仕様のものもありますが,聴診に慣れていないうちは,チェストピースは切り替えができたほうが音の変化に気が付きやすいですし,何より「ベル型でしか聴こえない音を聴きに行くんだ!」という自分の意識づけにもなります。

③実際の音を聴いてみよう!
これら2つのポイントを確認した上で,最後は聴診器を装着して,正常音でも良いので実際の心音と肺音を聴いてみることが重要です。聴診器はそれを扱う人と同じく特徴も十人十色で,こちらの聴診器ではよく聴こえるが,あちらの聴診器では全く聴こえなくなるというのはざらにあります。繰り返しですが,ぜひ実際に聴診器を装着して,本物の心音と肺音を聴き比べてみましょう。

自分に合った聴診器を手に入れたら次はいよいよ聴診にチャレンジです。

Q2. 高調な音と低調な音を聴く時で,チェストピースの当て方はどう違う?

A. 高調な音を聴く時は膜型を“強く”押し当て,低調な音を聴く時はベル型を“添える”ように当てる

基本的には決まった持ち方はありません。ただし,聴診器は自分の聴きたい音に応じて当てる強さを変える必要があるので,聴診をする際はその点を意識した当て方をしてみましょう。図2にチェストピースの持ち方の例を示しています。

市販されている多くの聴診器では,ベル型は30〜100Hz程度の低調音を,膜型は100〜1000Hz程度の高調音をより聴き取りやすいように設計されています2)

① cracklesやwheezesなどの高調な音
crackles(音声1)やwheezes(音声2)は種類にもよりますが,多くは500~1000Hzを超える比較的高調な音です。そのため,これらの音を聴診しようとする際にはチェストピースをしっかり把持し,膜型を強く胸壁に押し当てるようにしましょう(図2a)。低調成分がカットされ,より高調な副雑音に集中することができます。

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音声1 crackles

音声2 wheezes

② 過剰心音などの低調な音
過剰心音,すなわちⅢ音(音声3)とⅣ音は30~50Hz前後の低調な音です。これらの音を聴く場合はベル型を用いましょう。この時チェストピースを直接把持して,ベル型を胸壁に圧迫するように当ててしまうと,ぴんと張られた皮膚が膜の役割を担ってしまい,せっかくの低調音をカットしてしまいます。ベル型を扱うときは,チェストピースではなく,聴診器のチューブを持つようにして,ベル型を皮膚に“添える”ようにすることがポイントです(図2c)。

音声3 過剰心音(Ⅲ音)

第1回図2.png
図2 聴診器(チェストピース)の持ち方
あくまでもこれは1例であり,ぜひフォーカスしたい音に合わせて自分なりの持ち方を見つけてください。

Q3. 肺音や心音の聴診はどのような体位で行うとよい?

A. 基本的には座位で行うが,聴取したい音によって適切な体位が変わる

①肺音の場合
原則として,座位での聴診が推奨されています3)。ただし,患者によって座位を保持できない場合は,側臥位が推奨されます。その際は,加重側の肺(つまり左側臥位なら左肺,右側臥位なら右肺)を聴診することで,肺炎によって発生したcracklesをより聴取しやすくなるので意識してみてください3)

②心音の場合
過剰心音や僧帽弁狭窄症(Mitral Stenosis:MS)による雑音を聴取する際は左側臥位が,大動脈弁閉鎖不全症(Aortic Regurgitation:AR)による雑音を聴取する際は座位がよいとされています。心音の聴診はセッティングに合わせてまずは座位か仰臥位で行い,聴きたい音に応じて左側臥位でも聴診してみましょう。

Q4. 聴診器で最も大切なパーツはどこ?

A. イヤーピースとイヤーピースの間

この質問と回答はサパイラの書籍1)に記されています。筆者も学生時代に指導医からこの問いを投げかけられたことがあり,その時は問いの意味を理解するのに数秒を要しました。今でもこの問いは常に自分自身の戒めとなっています。

聴診そして身体所見は,その所見を知り,理解し,そして実際にそこにあると思っていなければ絶対に見逃します。第六感ではないのです。どれほど自分にピッタリとあった聴診器があっても,聴診の時間が次にオーダーするCTや血液検査のシンキングタイムとなってしまっては,聴こえる音も聴こえなくなってしまいます。

ぜひ本連載を一助に,イヤーピースとイヤーピースの間にある「最も重要なパーツ(=頭脳)」,つまり皆さんの知識や思考力を磨いていただければと思います。

次回は,心尖拍動の診察とⅠ音・Ⅱ音の評価についてのクイズを出題します。
基本となる心臓の動きに触れ,また心周期の道標となるⅠ音・Ⅱ音を正しく同定することが何よりの診断の近道です。
引き続き,一緒に学んでいきましょう!

参考文献
1)Jane M Orient(著),須藤博,他(監訳).サパイラ──身体診察のアートとサイエンス 第2版.医学書院;2019.
2)J Acoust Soc Am. 1992[PMID:1597610]
3)Am Rev Respir Dis. 1989[PMID: 2802364]

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