医学界新聞

対談・座談会 大塚篤司,三澤将史

2026.05.12 医学界新聞:第3585号より

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 2022年のChatGPT登場以降,生成AIの普及は急速に進み,医療現場でも業務効率化への期待とハルシネーション(もっともらしい誤情報)に対する不安が混在している。この変革期において,医師は生成AIをどう使いこなし,自身の専門性や判断力を磨き続けるべきか。今年4月に『医師のための生成AI超活用術――本質を知り使いこなす』(医学書院)を上梓した三澤氏と,『医師による医師のためのChatGPT入門』(同)シリーズを手掛ける大塚氏が,思考の主導権をAIに渡さず臨床能力を高める実践的な戦略と,これからの医療現場におけるAIとの協働の在り方を探った。

三澤 私はかねて内視鏡による検査・治療を中心に臨床と研究に取り組んでおり,日本初となるAI内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN®」を2018年に開発しました。また,SNSでChatGPTをはじめとした生成AIの使い方に関する発信を行っており,これまでの知見をまとめた書籍を4月に出版しました。本日はAI時代における医師の在り方について,大塚先生とじっくりお話しできればと思います。

大塚 私も三澤先生と同様に,AIの力に魅了されている医師の一人です。ChatGPTに関する書籍を出版するほか,学会等でAIに関連した講演を行っています。また,自身の研究室では,生成AIに言葉で指示を出しながらコードを自動生成させるVibe Codingを用いて,色素性病変の診断を目的としたAIモデルの作成に挑んでいます。

三澤 私自身は内視鏡を専門としない医師も専門医と同様の鑑別ができるようにならないかとの思いから,2013年より内視鏡AIの開発を始めました。以来,日常業務へのAI活用に注力していますが,大塚先生が最初にAIと出合われたのはいつ頃でしょうか。

大塚 Deep Learningの精度が飛躍的に進化した2015年頃です。ある研究会に呼ばれた際,「Deep Learningを活用することで,空港に設置したビデオカメラの映像から爆弾を持って歩いている人を判別できる」と発表している演者がおり,非常に感銘を受けました。そこからAIをどうにか自身の研究に活用できないかと考えていましたが,当時は皮膚免疫の研究を専門に取り組んでいたので,活用まで至っていませんでした。AIの活用に本気で取り組み始めたのは,ChatGPTがリリースされた2022年の12月頃です。

三澤 やはりChatGPTの登場が契機でしたか。私もかつて内視鏡AIの研究開発を進める中で大きな壁として立ちはだかったのが,診断精度のさらなる向上でした。Deep Learningによって,学習画像を増やすことで乗り越えられる部分はあったものの,臨床医が集められるデータには限界がありました。しかしChatGPTのリリース後,その精度の高さと汎用性に衝撃を受け,まずはプログラミングの補助として使い始めてみました。GPT-3.5(2022年11月発表)の時は精度がまだ低いなと思う場面もありましたが,GPT-4(2023年3月発表)になってからは格段に正確性が上がり,本格的な活用を考えるようになりました。

大塚 GPT-3.5は間違いも多くたどたどしく,かわいらしかったですよね。GPT-4にアップデートされてからは,仕事に使えるレベルになった印象を私も持っています。リリースされたばかりの頃はChatGPTに関連した書籍を出すつもりなど全くなく,文章があっという間に書けてしまうことに「チートっぽさ」を感じて,こっそり使っていました。でも時間がたつにつれて多くの医師が仕事に使えると気づき始めましたね。

三澤 ちなみに,現在大塚先生はどのモデルをメインで使われていますか?

大塚 今はClaude Opus 4.6です。現段階の生成AIの中で一番の出力スピードと賢さを兼ね備えていると感じます。

三澤 全く一緒です。AIをしっかり仕事で使い込む先生はClaudeをメインで利用している方が多い印象です。Claude以外ですと,イラストなどの画像を生成する際にはGeminiのNano Banana Pro,詳細な検索であればChatGPT Proを使用することはあります。生成AIに慣れていない先生方に無料版で1つお薦めするとしたらChatGPTですかね。

三澤 現場でのAIの受け止められ方についてお聞きしたいです。私は「内視鏡AIの人」と思われているせいか,面と向かって批判される機会は少ないです。大塚先生の周囲でAI活用に対して反発の声を聞くことはありますか。

大塚 学会等でAIの活用について講演した後に,数回に一回は「こんなものを使っていたらどんどんバカになる」「セキュリティの問題は考えているのか」などと怒られることがあります。

三澤 AIを使うと思考力が落ちるといった批判がある中で,AIに渡すタスクと自分で考えるべきタスクの境界線をどのように引かれていますか?

大塚 明確な線引きは難しいです。今日ちょうど医学生向けの講義スライド作成を進めていて,生成AIで全部作れないか,また発疹などの臨床写真を生成AIで作成して講義で使用するのはセーフなのかと悩んでいました。自分で手を動かしてみて初めて「ここはAIに渡さないほうが良い」という線引きがわかります。頭を使わない単純作業は生成AIに任せますが,個人の好みやスタイルに関連するタスクは自分でこなしたほうが満足のいく成果が得られると思います。

三澤 私自身もその境界線には日々悩んでいますが,大塚先生と同じく単純なタスクは積極的に生成AIに任せる一方で,臨床推論や治療方針の決定など論理的な思考が必要なタスクは,まだまだ医師が担うべきだと考えます。先日病棟で急変した患者さんの対応をした時,なかなか鑑別が思い浮かばなかったので生成AIを活用してはどうかと考えが頭をよぎりましたが,結局調べている時間はなく,「意識障害の鑑別はAIUEO TIPSだったな」と思い出しながら診療を続けました。生成AIに全ての判断を委ねるようになってしまうと困る場面は必ず出てくるだろうなと感じます。一方で,AIが医師の業務を加速度的に代替していくのではないかとの意見も少なくな...

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近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

2003年信州大卒。スイス・チューリッヒ大病院客員研究員,京大医学部外胚葉性疾患創薬医学講座(皮膚科兼任)特定准教授を経て,21年より現職。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし,コラムニストとしても活躍する。『まるごとアトピー』『皮膚科手技大全』(いずれも医学書院)など著書多数。『医師による医師のためのChatGPT入門』シリーズを手掛け,このたび『医師による医師のためのChatGPT入門3――アイデアがパッと論文に変わる!AI超・時短執筆術』(医学書院)を上梓した。

X ID:@otsukaman

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昭和医科大学横浜市北部病院消化器センター 准教授

2005年新潟大卒。博士(医学)。07年より昭和医大横浜市北部病院消化器センターに勤務。世界的に高名な工藤進英センター長に師事し,大腸がんの拡大内視鏡・超拡大内視鏡の研究に携わる。開発に携わった内視鏡画像診断支援AI「EndoBRAIN®」シリーズは,日本初のAIを活用した内視鏡診断支援用プログラム医療機器として上市され,日常臨床で使用されている。著書に『医師のための生成AI超活用術――本質を知り使いこなす』(医学書院)。

Instagram ID:@masa_ai_med

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