フィジカル大全
読んで,見て,聴いて,身体診察を完全マスター

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好評を博したmedicina2022年増刊号「フィジカル大全──読んで、見て、聴いて、身体診察を完全マスター」が待望の書籍化! 書籍化にあたりオールカラー化し、さらに見やすく使いやすい1冊となった。写真やイラストに加えて、動画・音声を豊富に収載。通読することで身体診察の要諦を押さえることができる内科医・総合診療医必携のエンサイクロペディア。

編集 石井 大太 / 徳田 安春
発行 2025年06月判型:B5頁:472
ISBN 978-4-260-05731-8
定価 7,700円 (本体7,000円+税)

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  • 序文
  • 目次

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序──徴候病態生理学でフィジカルの熟練度を高める

 2023年8月に箱根で医師と医学生高学年者を対象とした勉強会を行った.私は,臨床的に重要度の高い「細菌性髄膜炎」の実臨床ケースを紹介した.そのケースの診察スキルについて13人の医療関係者に対して尋ねた結果,項部硬直の正確な診察手技については約半数の参加者が正解を示した.しかし,Kernig徴候については,正解者はゼロであった.診療の質を高めるためには,診察スキルの向上のための学習を深める必要がある.
 Semio-Pathophysiologyという用語がある.身体所見での徴候を説明する,徴候病態生理学だ.例えば,髄膜炎では,脳,脳幹,そして脊髄を守るために,これらの脳神経細胞が物理的に伸展しないよう,筋肉のスパスムが起こるのだ.項部硬直もKernig徴候も徴候病態生理学で説明すると,正確な手技を実行することができる.
 身体診察において,エビデンスの重要性はもちろん認識すべきだ.しかし,まずは熟練度を高めることが何より重要である.臨床研究におけるデータの信頼性は検査を行った医師の熟練度に左右され,再現性が低いデータの感度や特異度をそのまま採用することは不適切だからだ.Sapira先生によるショパンの法則と呼ばれている原則である.各論的フィジカル診断を高い再現性をもって正確に行うための徴候病態生理学に基づく解説書が本書である.
 medicina59巻4号(増刊号)「フィジカル大全──読んで,見て,聴いて,身体診察を完全マスター!」として誕生した本書は,書籍化でさらにパワーアップした.ポイントは以下の通りである.本文をオールカラー化した.目次構成は増刊号を踏襲するものの,掲載順を再整理し,読者がより活用しやすい形にした.
 循環器,呼吸器,消化器,感染症,膠原病,筋骨格,内分泌・代謝,脳神経などの主要な章の冒頭には総論としての「診察の仕方」を配置した.
 また,新設項目として以下を追加した.
 ・ 手・爪の疾患
 ・ 泌尿器科疾患による腹部症候
 ・ 産婦人科疾患による腹部症候
 ・ 蜂窩織炎と壊死性軟部組織感染症
 ・ 性感染症
 ・ 易出血性/出血傾向
 ・ 外傷性筋骨格系およびスポーツ関連筋骨格系疾患
 ・ Parkinson症候群
 ・ 口腔疾患

 これらの改善によって診察技術と知識がさらに充実し,幅広い臨床ニーズに応える内容となることを期待している.それが実現すれば,編集者の一人としてこれ以上の喜びはない.

 2025年4月吉日 沖縄にて
 徳田安春

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第1章 バイタルサイン
 1 血圧の異常,ショック
 2 脈拍・心拍の異常
 3 静脈圧
 4 呼吸状態・呼吸数・呼吸リズムの異常
 5 意識障害
 6 体温の異常

第2章 全身
 1 手・爪の疾患
 2 発熱と皮疹
 3 脱水
 4 浮腫
 5 黄疸
 6 肥満,低栄養
 7 外傷

第3章 循環器
 1 循環器の診察の仕方
 2 心不全
 3 大動脈弁狭窄症
 4 大動脈弁閉鎖不全症
 5 僧帽弁狭窄症
 6 僧帽弁閉鎖不全症,僧帽弁逸脱症
 7 三尖弁逆流症,肺高血圧症,肺血栓塞栓症,深部静脈血栓症
 8 急性心膜炎,心タンポナーデ,収縮性心膜炎
 9 動脈硬化症,先天性血管異常

第4章 呼吸器
 1 呼吸器の診察の仕方
 2 肺炎
 3 COPD,喘息,気胸,縦隔気腫
 4 胸水
 5 睡眠呼吸障害

第5章 消化器・腹部・骨盤
 1 消化器・腹部の診察の仕方
 2 急性腹症の診かた
 3 直腸診
 4 肝臓と脾臓の疾患,腹水
 5 胆囊・胆管・膵臓の疾患
 6 後腹膜スペース・腰背部・腹壁・胸壁の疾患
 7 泌尿器科疾患による腹部症候
 8 産婦人科疾患による腹部症候

第6章 感染症
 1 感染症の診察の仕方
 2 咽頭痛
 3 感染性心内膜炎
 4 旅行者感染症
 5 蜂窩織炎と壊死性軟部組織感染症
 6 性感染症

第7章 血液・腫瘍
 1 貧血
 2 リンパ節腫脹
 3 易出血性/出血傾向

第8章 膠原病
 1 膠原病の診察の仕方
 2 関節リウマチ
 3 全身性エリテマトーデス(SLE),強皮症(SSc),混合性結合組織病(MCTD)
 4 多発性筋炎,皮膚筋炎,抗ARS抗体症候群
 5 血管炎,リウマチ性多発筋痛症

第9章 筋骨格
 1 筋骨格の診察の仕方
 2 手根管症候群,胸郭出口症候群
 3 頸椎・腰椎疾患
 4 肩関節疾患
 5 反応性関節炎
 6 痛風・偽痛風・代謝内分泌疾患による骨関節疾患
 7 外傷性筋骨格系およびスポーツ関連筋骨格系疾患

第10章 内分泌・代謝
 1 内分泌・代謝の診察の仕方
 2 甲状腺疾患
 3 視床下部・下垂体・副腎疾患
 4 遺伝性代謝疾患
 5 糖尿病と膵内分泌疾患
 6 ビタミン・微量元素欠乏症

第11章 腎臓・電解質異常
 1 尿毒症,腎不全
 2 電解質異常

第12章 脳神経・精神
 1 脳神経の診察の仕方
 2 脳神経の診かた
 3 髄膜刺激徴候,頭蓋内圧亢進徴候
 4 協調運動障害,運動失調
 5 脊髄・馬尾障害
 6 感覚異常
 7 振戦
 8 深部腱反射,病的反射
 9 めまい
 10 けいれん
 11 筋力低下
 12 歩行の異常
 13 認知機能低下
 14 Parkinson症候群

第13章 眼・耳鼻咽喉
 1 充血,眼底疾患
 2 聴力低下,耳鳴,耳漏
 3 口腔疾患

索引