医学界新聞

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あせらないためのER呼吸管理トレーニング

連載 熊城伶己

2026.09.08 医学界新聞:第3589号より

・吸気1回分の開始と終わり
・吸気の繰り返し方を考える
・人工呼吸器の基本3波形とは

 前回はERにおける人工呼吸管理の目標を概説しました。ここからはERでの人工呼吸器設定時に困らないための,最低限の知識を学習しましょう。

 人工呼吸器は基本的に「吸気を送り込むこと」が主たる仕事です(呼気は患者さん任せ)。まずは1回の吸気を,どんなタイミングで,いつまで送り込むかを考えます。これには以下の3つの方法があります。

・「機械が決めたタイミングで,機械側で決めた条件まできっちり送る」
 =controlled ventilation:調節換気

・「患者の呼吸を感知したタイミングで,機械側で決めた条件まできっちり送る」
 =assist ventilation:補助換気

・「患者の呼吸を感知したタイミングで,患者の呼吸に合った条件まで送る」
 =support ventilation:サポート換気

 ちなみに,調節換気と補助換気を合わせてmandatory ventilation(強制換気)と呼びます。調節とか強制って何やねんと思ってしまいますが,このあたりは歴史と翻訳の問題なのでそのまま覚えてしまいましょう。ポイントは,吸い始めと吸い終わりを機械側で決めるか・患者側に依存するかの違いです。

 強制換気の2つでは「機械側で決めた条件まで」と記載しましたが,「量」を決めて送るのがvolume control ventilation(VCV:量制御式換気),「圧」を決めて送るのがPressure control ventilation(PCV:圧制御式換気)になります。

 次に,前述の1回の吸気をどうやって繰り返すかを考えます。

A/C 強制換気を続けて行う際の換気パターンをA/C(assist/control)と呼びます。「自発呼吸がなければ機械側で決めたタイミングで/自発呼吸があればそのタイミングで,決めた条件まで送る」パターンです。間のスラッシュは自発呼吸の有無でどちらにでもなりますよ,という意味です。開始のタイミングが何であれ,決めた設定まで吸気を送り込む点が重要で,吸気の止めどきを患者が選べません。そのため,患者が長い呼吸をしても短い呼吸をしても,吸気として送り込まれる時間は呼吸器の設定によって決まります。

CPAP+PS サポート換気だけを繰り返すパターンをCPAP+PSと呼びます。CPAPはcontinuous positive airway pressureの略で,気道内圧を一定に保つために持続的に気道に陽圧をかけるという意味です。呼気だけに着目するとPEEPと同じです。この状態でも患者は自発呼吸ができますが,挿管した人工呼吸器の場合にはそこから患者の吸気に合わせて圧をかけて換気のサポートをすることが通常であり,PS(pressure support)が足されていたり,CPAPの表記を消してPSV(pressure support ventilation)と呼んだりします。

SIMV A/CとCPAP+PSの間にあるのがSIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)であり,人工呼吸器で決まった回数までは強制換気,それ以上の自発呼吸に対してはサポート換気を行うというパターンです。

 さて,ここまでの内容をまとめたを見てみましょう。SIMVは「synchronized(同調)」といかにも良さそうな名前がついていますが,これも歴史の産物であり,現在の発達した人工呼吸器においては他の換気パターンよりも患者に同調しやすいわけではありません。患者からすると「さっきまできっちり吸気を送ってくれていた(強制換気)のに,突然自分次第の換気になった(サポート換気)」と感じられてしまいます。かつては呼吸器からの離脱で頻用されていましたが,現在はどんどん使われなくなっている換気パターンです。ERの呼吸管理において,SIMVでないと困る事態は無いと言って良いでしょう。

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表 A/C,SIMV,CPAP+PSの換気パターンの違い

 挿管した直後は鎮静や筋弛緩の影響で自発呼吸が無い,もしくは不十分という場合が多く,基本的にはA/Cを選択します。強制換気はサポート換気と比較すると呼吸筋疲労を改善する効果が高いとされます。また,吸気時間が安定しているため1回1回の換気を確実に確保できる点などから,ERで挿管を要するような呼吸不全の場合には,無理にCPAP+PSに変更することなくA/CのままICUへ移送しましょう1)。ただし,同調性はCPAP+PSのほうが良いとされ,人工呼吸器との非同調が頻回に起こってしまう場合にはこちらへの変更も考慮します。

 ここまでにお話した人工呼吸器の用語は,実際とてもややこしいです。人工呼吸器の種類によって異なる用語が使われており,パッと見ですぐにわからないことも多いです。それだけでなく,人工呼吸器において「モード」という言葉が何を指すかも,実は明確な定義がありません2,3)。ここまでに記載した内容を踏まえつつ,自施設で使っている人工呼吸器との対応を確認してみてください。

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 人工呼吸器には3つの波形があり,それぞれ圧波形,流量波形,換気量波形と呼びます()。単位を見てみると横軸は全てsec(秒),つまり時間であり,縦軸の単位は波形によって異なります。圧波形は縦軸の単位がcmH2Oで,時間経過によって気道・肺にどのくらいの圧力がかかっているかが表示されます。一番高い部分が最高気道内圧(Ppeak),一番低い部分がPEEPがかかっている箇所になります。縦軸の単位がL/minとなっている流量波形は3波形の中で唯一基線の上下に波があり,基線の上側が患者さん側に送っている吸気,下側が患者さんから返ってくる呼気になります。一番高い部分が最大吸気流量,一番低い部分が最大呼気流量です。最後の換気量波形は縦軸の単位がmLになっています。頂点が換気量を表しており,頂点の左側が吸気,右側が呼気を表します。

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図 人工呼吸器の基本3波形

 人工呼吸器の勉強を始める上で,まずはこの3つの波形があることを確認しましょう。設置型の人工呼吸器であれば3つとも表示できるものがほとんどですが,一部の設置型や多くの搬送型呼吸器では換気量波形が表示できなかったり,波形表示そのものが無かったりする場合もあるので,もし表示の仕方がわからなければ臨床工学技士さんに聞いてみましょう。

 さて,この3つの波形を考えた際に,重要になるのは圧倒的に圧波形と流量波形です。実際,人工呼吸器の設定変更や患者さんの状態変化は圧波形と流量波形に現れることが多く,換気量波形の出番はそこまで多くありません(換気量波形でリークがあるか判断する,という使い方が多いです)。ひとまず波形が3つあり,そのうち圧波形と流量波形が重要だ,と認識しておいてもらえれば今回はOKです。人工呼吸器の設定ごとの挙動とそれぞれの波形に関しては,次回以降で学んでいきます。

・吸気1回分の開始と終わりのパターンから,調節・補助・サポート換気に分類
・ERで使う換気パターンはA/Cがほとんど,PSVはたまに
・3波形のうち,特に圧波形と流量波形が重要


1)South Med J. 2018[PMID:30512128]
2)Respir Care. 2007[PMID:17328828]
3)Respir Care. 2014[PMID:25118309]

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横浜市立みなと赤十字病院集中治療部/呼吸療法専門医

2015年神戸大卒。救急・麻酔の研鑽を積んだ後,22年より現職。救急科専門医,麻酔科認定医,集中治療科専門医,呼吸療法専門医。急性期の気道・呼吸・循環管理,Point-of-care Ultrasound(POCUS)等を専門としている。