看護の力で患者を救う!
人工呼吸器集中レクチャー

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人工呼吸器の役割は、直接病気を治すことではなく、病気が治るまで呼吸を保つこと。
──だからこそ、合併症を起こさず、回復を支える看護・ケアが重要です。合併症予防やアラーム対応など人工呼吸器の管理とケアを、患者さんの生命予後を改善する視点から解説。略語や数字ばかりで一見難解なモードと設定も、臨床で必要な知識に絞って整理されているから、しっかり頭に入ります。SNSで人気の呼吸器ドクターひつじ、初の著書!

監修 井上 賀元
竹村 知容
発行 2025年11月判型:A5頁:176
ISBN 978-4-260-06210-7
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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はじめに

 この本を手に取ってくださり、ありがとうございます。

 人工呼吸器の書籍執筆のお話をいただいた時、まず書店で関連書籍をたくさん読んでみました。私が研修医だった15年前と比べて、本当に分かりやすい本が増えています。そうした良書の影響もあってか、私の勤務する病院の1年目、2年目の看護師さんたちも、とても優秀で知識が豊富だと感じています。

 ただ、書籍を読み進めていくうちに、あることに気付きました。それは、どの本も人工呼吸器管理において「看護師が実際にどのように手を動かすか」ということが中心であるということ。「看護が患者さんの経過にどう影響するか」について詳しく書かれたものが少ないのです。

 初心者向けの本であれば、機械の動きや基本操作が中心になるのは当然です。でも私は、人工呼吸器は「看護の質が患者さんの生命予後に影響しやすい」分野だと考えています。
 実際の手の動かし方も大切ですが、人工呼吸器の管理が「どのように患者さんの回復につながるのか」を知ると、さらに看護の質が上がります。若手のみなさんにこそ、看護のどの部分が、どのように患者さんの回復につながるのかを知ってほしい。そんな思いから、この本を執筆しました。
 本書が人工呼吸器管理に携わるみなさんの日々の実践に少しでもお役に立てば、筆者としてこれ以上の喜びはありません。

この本の5つのこだわり

① 看護師が本当に知りたい内容を厳選
 人工呼吸器関連の書籍を読み進めながら、書かれていた項目をリストアップしました。そのリストをもとに院内の看護師さんにアンケートをとり、「これは知りたい」「これは重要」と回答の多かった項目を中心に構成しています。さらに執筆後には、他病院に転職した看護師さんにも内容を確認してもらい、どの施設でも役立つ内容になっているかもチェックしました。

② 本文を全部読まなくても理解できる
 本文を全部読むのって、体力がいりますよね。なので、タイトル、太字部分、図表、各章のPoint(まとめ)だけを見ても、内容の要点は把握できるように構成しました。1周目は本文を読まずに全体像をつかみ、2周目以降で詳しい解説を読む、という使い方もできます。

③ 図表が多く、頭に入りやすい
 文字ばかりだと読む気も失せてしまいます。紙面全体の半分以上をタイトル、図表、Point(まとめ)が占めるように構成しました。

④ 初学者にも分かりやすいことを確認
 専門家が書いた本は、つい専門用語や難しい表現が多くなりがちです。それを避けるため、院内の様々な経験年数の看護師さんに協力していただき、原稿を読んでもらいました。「ちょっと考えてしまった」「この表現は分かりにくい」といった意見を全て拾い上げ、全員から「これなら分かりやすい」とのお墨付きをいただくまで、何度も修正を重ねています。

⑤ 多職種でも活用できる
 看護師さん向けに書いてはいますが、人工呼吸器に関わる全ての医療従事者にも活用いただける内容です。研修医、医師、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士のみなさんも、「他の専門書は難しすぎて……」と感じたことがあれば、ぜひこの本を手に取ってみてください。

 最後に、この本の完成までにご協力いただいた皆様に心より感謝いたします。
 医学書院の品田暁子様には編集でお世話になり、井上賀元先生にはファクトチェックをしていただき、イラストレーターのしもだまり様には可愛らしいひつじのイラストで本を彩っていただきました。
 そして、忙しい中、アンケートにご協力いただいた看護師の皆様、ありがとうございました。

 2025年9月
 竹村知容

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はじめに

Chapter 0 大前提:救命のための人工呼吸器の本質
  人工呼吸器は病気を治しているわけじゃない
  人工呼吸器管理では、看護が生命予後に直結する

Chapter 1 人工呼吸器のモード──大事そうに見えるけど、実は生命予後にそんなに影響しない
  モードは生命予後に大きく影響しない
  モードは、呼吸のタイミングと、呼吸の量の決め方の組み合わせ
  呼吸のタイミングで決めるモード① A/C
  呼吸のタイミングで決めるモード② SIMV
  呼吸のタイミングで決めるモード③ CPAP+PS
  量の決め方でのモード① VCV
  量の決め方でのモード② PCV
  量の決め方でのモード③ PRVC
  知っておくと便利! 実際によく利用されるモード

Chapter 2 人工呼吸器の設定──設定は、生命予後に大きく関わる
  設定は、モードよりも生命予後に影響する
  設定を理解するコツ① 酸素化と換気の違いを理解する
  設定を理解するコツ② 設定項目は、酸素と二酸化炭素とタイミングに分けて考える
  酸素に関わる項目──FiO2とPEEPの決め方
  二酸化炭素に関わる項目──PC、PS、TV、呼吸回数の決め方
  予後を改善する肺に優しい設定
  実際に設定をいじってみよう
  患者さんの病態に合わせた設定① COPD、気管支喘息の場合
  患者さんの病態に合わせた設定② 間質性肺炎、ARDSの場合
  患者さんの病態に合わせた設定③ 酸素化が悪い場合
  患者さんの病態に合わせた設定④ 肺自体がさほど悪くない場合

Chapter 3 人工呼吸器の管理と看護ケアのポイント──患者さんの経過に特に影響するポイントを知っておこう
  人工呼吸器のしくみを知ろう
  単なるモニターじゃない! カプノメーター
  単に寝かせておけばいいわけじゃない、鎮静の話
  患者さんの苦痛を取り除く、鎮痛の話
  うつ伏せで予後が改善!? 腹臥位療法

Chapter 4 合併症を予防する方法──実は最重要ポイント? 生命予後にダイレクトに関わる合併症
  看護で予防できる、人工呼吸器の合併症
  予後を大きく改善するVAP予防の秘策
  人工呼吸で肺が傷む!?──人工呼吸器関連肺損傷(VALI)
  肺を越えて全身に届く、PEEPのパワー
  せっかく抜管できたのに、こんなはずじゃなかった!?──集中治療後症候群(PICS)

Chapter 5 グラフィックモニターの見方──抜管に時間がかかったり、合併症リスクを上げたりしないために
  呼吸の状態がさらに分かる、3つのグラフ
  正常なグラフィック① 従量式(VCV)
  正常なグラフィック② 従圧式(PCV)
  異常なグラフィック
  グラフィックのまとめ

Chapter 6 アラームに対応する方法──急変を未然に防ぎたい
  鳴り響くアラーム、その時あなたはどうする?
  人工呼吸器のアラームは、この5つを理解しよう
  人工呼吸器のアラームを理解するコツ
  代表的なアラーム① 気道内圧上限アラーム
  代表的なアラーム② 気道内圧下限アラーム
  代表的なアラーム③ 一回換気量下限アラーム
  代表的なアラーム④ 呼吸回数上限アラーム
  代表的なアラーム⑤ 呼吸回数下限アラーム
  明らかに機械が原因のアラーム

Chapter 7 人工呼吸器からの離脱──合併症が起きる前にスムーズに抜管したい
  ようやく抜管できる!──ウィーニングとは?
  人工呼吸器の、最後の卒業試験──SATとSBT
  抜管後に窒息のリスク!?──喉頭浮腫の評価

Chapter 8 NPPV──マスクフィッティングがNPPV成功の鍵
  NPPVにできることって何だろう?
  NPPVは、マスクフィッティングが9割
  人工呼吸器よりシンプル! NPPVのモード
  人工呼吸器と意味は同じなのに言葉が違う、NPPVの設定
  NPPV装着中に気をつけること

Chapter 9 HFNC(ネーザルハイフロー)──「口が自由」かつ「高濃度の酸素」というのが一番のウリ
  HFNCにできること
  難しそうに見えて、実はHFNCの設定項目は2つだけ
  HFNCの組み立て方

Chapter 10 その他の酸素療法──9つのデバイス、どう使い分ける!?
  酸素療法は3つに分けると理解しやすくなる
  なぜ酸素マスクには、L/分で調整するものと、FiO2で調整するものがあるのか
  酸素流量(L/分)で調整するもの
  吸入酸素濃度(FiO2)で調整するもの
  9種類のデバイス、結局どれを使うの?

略語一覧
索引

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現場の声から生まれた,呼吸管理で迷わないための1冊
書評者:長尾 大志(島根大教授・地域医療教育学)

 本書は,SNSで人気の呼吸器内科医「呼吸器ドクターひつじ」先生こと竹村知容先生による,人工呼吸器装着症例の看護に役立てていただける一冊です。

 私もいくばくかの書籍を出版させていただいており,書籍を拝読するときにはいつも,この本の対象はどなたなんだろう? ということを考えますが,本書の対象読者は,人工呼吸器を扱う看護師さん,特に初心者・初学者の方を中心に想定されています(本書「はじめに」参照)。ただし,看護師さんだけでなく,呼吸管理にかかわる全ての医療従事者に活用してほしいという意図もあり,実際に有用な内容となっています。

 こちらの書籍,お薦めポイントは以下の3点です。

(1)現場で本当に必要な知識を厳選

 現場で働かれている看護師さんであれば承知されているであろう,呼吸生理などの基礎的な解説は最小限にとどめ,人工呼吸器のモードや設定,病態に応じた調整方法など,臨床で即,役立つ内容を厳選して記載されています。これまで「なんとなく」で設定していた方も,しっかり理解できる構成です。現場で働かれている看護師さんに実際読んでいただいてのご意見を参照され,全員から「わかりやすい」とのお墨付きをいただいた,とのことで,まさに現場目線のわかりやすい内容になっています。

(2)実践的なトピックを網羅

 病態に合わせた設定として,閉塞性換気障害や拘束性換気障害があるとき,低酸素が強い場合の人工呼吸器設定の考え方,それから酸素と二酸化炭素を規定する設定項目についてもきちんと記載されています。
 また,実際に人工呼吸器を取り扱う際に悩む事柄として,合併症の管理,鎮静・鎮痛,腹臥位療法,グラフィックモニターの波形解析,アラーム対応,離脱(ウィーニング),さらにはNPPVやハイフロー療法まで具体的に幅広くカバーされていて,人工呼吸器管理に必要な知識を一冊で体系的に学べます。
 さらに,低酸素の際に用いるデバイスとして,挿管人工呼吸だけではなく,NPPV,それにHFNCなど,他の酸素投与デバイスについても章を設けられていて,現状で9つ(!)もあるデバイスの使い分けも学ぶことができるようになっています。

(3)視覚的にわかりやすい工夫

 人工呼吸器管理が苦手とおっしゃる方は多いのですが,その理由として,「波形がよくわからない」「設定の仕方がよくわからない」という声があります。本書では正常・異常波形の比較や,設定の考え方を図解で示すなど,理解を助けるビジュアルが豊富ですので,初学者でも安心して読み進められます。

 本書は人工呼吸器管理の「基礎から応用まで」を効率よく学びたい方に最適です。看護師さんだけでなく,新人医師や理学療法士さんなど,呼吸管理にかかわる全ての職種に臨床現場で「迷わないための一冊」として,お薦めします。

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