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取材記事

2026.03.31

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荒尾 晴惠氏

第40回日本がん看護学会学術集会(大会長=大阪大学・荒尾晴惠氏:写真)が2月21~22日,「サイエンスとアートで紡ぐがん看護――継承と発展」をテーマに,大阪府立国際会議場(大阪市)で開催された。

『医学界新聞プラス』では,パネルディスカッション6「がん領域の専門性の高い看護師を継続的に育成するための看護管理者の戦略的な取り組み」(座長=大阪国際がんセンター・山根康子氏,兵庫県立がんセンター・小山美幸氏)の模様を報告する。

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◆組織の特性を生かした専門性の高い看護師の育成と活動支援 
初めに登壇した山根康子氏は,がん診療連携拠点病院であってもスペシャリストの育成には課題があると指摘する。山根氏が所属する大阪国際がんセンターでは,2020年度に専門・認定看護師を集約した「リソースナースセンター」を設置。各部門へのリソースナース()の配置や,がん患者サポート外来等での活動を通じて質の高い看護を展開していると紹介した。
一方で,子育てをしながら働く看護師の増加もあり,スペシャリストとしての活躍を期待する30~40代の育成の難しさを課題として挙げた。対策として山根氏は,入職時から10年先を見据えるキャリアデザイン表の活用や希望者への面談の実施,院内認定制度の拡充など,看護管理者として戦略的な育成を行っている。今後は,リソースナースセンターの在り方の再考や専門性をより発揮できる働き方の検討を進め,やりがいをもって働き続けられる環境づくりに取り組む姿勢を示した。

続いて川崎医科大学総合医療センターの新美保恵氏は,地域がん診療連携拠点病院として専門看護師や認定看護師が院内にとどまらず,周辺の医療機関を対象としたオンラインによる「がん診療連携ネットワーク研修」の講師を務めるなど,地域全体への専門性の還元に力を入れていると紹介した。次世代育成については,臨床経験3~5年の看護師を対象とした調査から,認定看護師からの直接指導が看護実践能力の向上に有意に影響していると報告。ベッドサイドでのOJT促進のため思考発話を取り入れて指導に当たっていると述べた。最後に氏は,がん診療の現場でのジェネラリスト育成に向けた認定看護師・専門看護師の活用推進や,個々の特性に応じた生涯にわたるキャリア支援など,看護管理者が意図的な仕組みづくりを進める重要性を強調した。

「キャリア形成においては,『キャリアアンカー(譲れない軸)』の確立が重要である」。スペシャリスト育成における看護管理者の戦略的キャリア支援について,こう発言したのは,国立がん研究センター東病院の栗原美穂氏だ。特にキャリアの確立期・維持期にある看護師に対して氏は,管理者として5年・10年先を見据えた期待を伝えて動機づけを図っている。さらに次世代の育成支援として,現職の認定看護師・専門看護師が研修準備や費用面の実体験を語るプレゼンテーションや,血管エコーやアピアランスケアなど各分野の技術を紹介する院内イベント「キラフェス」を定期開催しており,資格取得をめざす看護師の背中を押している。組織に貢献できるスペシャリストを育成・活用するには,スタッフが自発的に動けるような仕掛けや仕組みを看護管理者が構築することが不可欠だとまとめた。

最後に,市立豊中病院の越智比奈子氏が登壇した。氏は地域がん診療連携拠点病院である同院において,病院経営の戦略と連動しつつ,スペシャリストを計画的に育成することが必要だと述べ,入学金や授業料など資格取得にかかる諸経費を助成する手厚いバックアップ体制を整備していると紹介した。また,看護部では組織運営に求める人材像と育成のビジョンを明確に示し,院内公募制度を通じて「手を挙げやすい」仕組みづくりを進めていると説明。こうした専門性の高い看護師の育成支援が,結果として医療の質の向上と病院経営の好循環につながると結んだ。

4人の登壇者による発表後のディスカッションでは,活動時間の確保と病棟業務の両立,評価指標の策定などについて,会場を交えた活発な意見交換がなされた。

:必要な教育課程や研修を通して,熟練した看護技術と知識を修得した専門看護師・診療看護師・認定看護師や,「特定行為に係る看護師の研修制度」に基づいた研修を修了した看護師のこと。院内外において看護職員や他の医療従事者への啓発活動を行うとともに,患者さんに直接ケアを提供することで,看護ケアの質保証に貢献する。

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