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第33回総合リハビリテーション賞決定
取材記事
2025.11.10
第33回総合リハビリテーション賞贈呈式が2025年9月24日,医学書院(東京都文京区)にて行われた。本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東大を退官する際(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団へ寄付した基金を原資として発足。2024年発行の同誌に掲載された全21編の投稿論文を対象に,最も優れた論文に賞が贈られた。
◆実車運転評価における課題設定の標準化や脳損傷者の安全な自動車運転再開に向けた支援内容の提案をめざして
受賞論文は,吉原理美氏(名古屋市総合リハビリテーションセンター/作業療法士)他による「映像記録型ドライブレコーダーを用いた脳損傷者の実車運転評価」[総合リハビリテーション.2024;52(4):407-14.]である。
本論文は,脳損傷者と健常者との比較によって脳損傷者の運転行動特徴を明らかにしたもの。適性検査を受け有効な運転免許証を所持している脳損傷者26人と,年齢・性別をマッチングさせた健常者23人を対象とし,運転状況に関するアンケート調査,認知機能検査,注意機能検査,自動車学校の協力下での実車による自動車運転評価を実施した。運転評価は,教習車両で事前に決められた約15分間(約5km)の市街地走行を教習指導員が同乗して評価するとともに,映像記録型ドライブレコーダーを用いて注意挙動の検出,運転診断を行った。その結果,脳損傷者は速度を控えるという代償戦略により健常者と遜色なく運転したが,車線変更など他の車両とかかわる場面で急ブレーキ操作が多く,不安全な車両挙動となりやすい特徴が明らかとなった。本論文の結果は,実車運転評価における課題設定の標準化や,脳損傷者の安全な自動車運転再開に向けた支援内容の提案に寄与することが期待される。
『総合リハビリテーション』誌編集委員を代表して高岡徹氏(横浜市総合リハビリテーションセンター)は,脳損傷者の自動車運転に関する報告はこれまでも多く見られる中で,本論文が高い評価を得た背景には社会的な必要性の高さがあると述べ,手間を要する調査であった点も評価した上で,「日常診療においてどのような患者さんに,どこまで手をかけて慎重に判断すればよいのかには議論の余地がある。本研究の対象者の長期的な成績など,研究の継続にも期待したい」と講評した。
受賞のあいさつで吉原氏は,高次脳機能障害がある方の自動車運転について,「何をもって安全とするのか,どのような方が安全に運転できるのかについては,まだ議論が必要です。その中で,適切でより安全な交通社会と患者さんの幸せ,社会参加の両立を実現するためにどのような支援が必要かを明らかにしたいと思い,本研究に取り組みました。今後もよりよい支援の模索や研究が必要な分野である」と語り,あいさつを終えた。
『総合リハビリテーション』誌では2025年にも,同年に掲載された投稿論文から第34回総合リハビリテーション賞を選定する。同賞の詳細については同誌投稿規定を参照されたい。
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