総合リハビリテーション Vol.52 No.4
2024年 04月号

ISSN 0386-9822
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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特集 人工関節置換術後の長期成績を改善させるリハビリテーションと治療戦略

 人工関節手術の進歩に伴い,人工関節手術の適応は拡大し,術後長期的に良好な経過を得ることが求められるようになっています.一方,人工関節置換術後10年・20年・それ以上の活動性を維持するために,術後どのようなリハビリテーション治療や生活指導をするのがよいかについては,臨床場面で迷うことも多いと考えられます.そこで本特集では,特に長期成績改善にむけての術式の工夫や,急性期あるいは生活期にどのようなリハビリテーション治療や生活指導を行うことが必要とされるかについて解説していただきました.

人工関節とその長期成績──総論 津田 英一 氏
 人工関節置換術は,特に荷重関節である膝関節・股関節で需要が高く,手術件数は増加傾向にある.2019年に報告された全人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:TKA),全人工股関節置換術(total hip arthroplasty:THA)に関するシステマティックレビュー・メタアナリシスでは,TKAの15年非再置換率は96.3%,THAは85.7%と報告され,長期間にわたり関節機能が維持されていることが示されている.さらに近年では,治療成績の評価指標として,患者満足度も重要視されている.患者は除痛だけでなく,移動能力の改善を期待していることが報告されており,ロコモティブシンドロームの視点から人工関節置換術の長期成績を検討していくことも必要である.

人工股関節 河野 俊介 氏ら
 人工股関節全置換術では,機能回復と長期耐用が求められ,摺動面,表面加工,インプラントデザインの改良などにより良好な中長期成績やインプラント生存率の改善が報告されている.術後急性期のリハビリテーション治療では,姿勢・起居動作・歩行に分けてアセスメントし,アプローチする.生活期には,low-middle impact sportsは許可されるが,high impact sportsは個別に判断される.術後長期的にフォローアップすることが必要だが,通院困難となる患者もあり,オンライン診療や全国的なレジストリなどのシステム作りも必要と考える.

人工膝関節 原藤 健吾 氏ら
 TKA後には,術後半年までに機能は大きく改善するとされるが,術後1年を過ぎたころから,約7%の症例で機能や疼痛が徐々に悪化するという報告がある.術後および長期的に効果的なリハビリテーション治療を行うことで悪化例が減らせると期待される.術後早期・疼痛や腫脹の改善後・退院直前(術後約2週間)・退院後で,関節可動域訓練・筋力訓練の方法や負荷量を変えてリハビリテーション治療を進めていく.Enhanced recovery after surgery(ERAS)の概念がTKAでもトピックになっているが,入院期間を短くすることだけを促すのではなく,個々のゴール設定をして必要なリハビリテーション治療を行うことが必要である.

人工肩関節 山門 浩太郎 氏
 人工肩関節手術には,人工骨頭置換術(humeral head replacement:HHR),アナトミック型肩関節全置換術(anatomical total shoulder arthroplasty:TSA),2014年から認可されたリバース型人工肩関節置換術(reverse shoulder arthroplasty:RSA)がある.広範囲腱板断裂などにより腱板機能不全である場合には,主にRSAが用いられている.RSAは,その構造や術式の改良が進められ,10年生存率は90%前後とされている.人工肩関節置換術後の固定期間やリハビリテーション治療に関するエビデンスは少なく,明確なコンセンサスは得られていない.術後4~6週固定し,その後自動介助運動や肩甲骨のモビライゼーションや筋力訓練を行うことが多いが,術前の腱板機能などによっても異なり個別に対応されている.

リウマチ性疾患における注意点 山本 直弥 氏
 関節リウマチでは,薬物療法の進歩により構造的寛解が得られるようになり,大関節の人工関節置換術の件数は減少傾向とされるが,手指や足趾の形成術などは増加傾向である.肩関節・肘関節・手関節・手指・股関節・膝関節・足関節について,それぞれ長期成績や後療法とそのポイントを解説した.人工関節置換術後,機能が向上していても,誤用・過用により罹患関節や隣接関節への負担が生じることもあり,長期的な生活の質維持のため,患者一人一人の生活動作を評価・分析し,それに合わせて指導することが重要である.

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 人工関節置換術後の長期成績を改善させるリハビリテーションと治療戦略

人工関節とその長期成績──総論
津田 英一

人工股関節
河野 俊介,他

人工膝関節
原藤 健吾,他

人工肩関節
山門 浩太郎

リウマチ性疾患における注意点
山本 直弥


●巻頭言
感覚入力と教育
福井 勉

●入門講座
てんかんとリハビリテーション④
てんかんと就労支援
藤川 真由

●実践講座
パラスポーツの魅力を伝えるには?②
公認パラスポーツ指導者の立場から──一緒にスポーツを楽しむということ
和田 恵美子

●研究と報告
高齢者の社会参加と生きがい──JAGES2013-2016-2019縦断研究
山田 彩恵,他

映像記録型ドライブレコーダーを用いた脳損傷者の実車運転評価
吉原 理美,他


●認知症者・家族をさまざまな観点や立場から支えるコミュニケーションスキル⑧
動機づけ面接の観点から
須藤 昌寛

●リハビリテーション診療に役立つ関節MRIの診かた①
関節MRIの撮影・読影依頼のポイント
坂本 圭太

●公募連載
勉強会どうしてますか?④
メタバースでの医療教育の可能性と課題──仮想現実がもたらす学びの変革
中山 直樹,他

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『運命』と『新世界より』──障害受容過程を表現した兄弟曲
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「キューポラのある街」──戦後民主主義的人格として造形されたジュン
二通 諭

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