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[第6回]クリエイティブ・コモンズ・ライセンスって何ですか?
研究者・医療者としてのマナーを身につけよう 知的財産Q&A
連載 小林只
2025.07.25
Q. クリエイティブ・コモンズ・ライセンスって何ですか?
A. クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは,著作物を「共有」し,新たな創造の連鎖を生み出すための有効なツールです。その種類や条件,探し方,付与の方法にはいくつかのポイントがあります。特に非営利(NC)の条件については,営利利用と非営利利用を正しく理解した上で利用することが大切です。
これまでの連載では,著作権の基本的な考え方(第3回参照)や,誰に許諾を得るべきか(第4回参照),そして著作権侵害の実態と判断(第5回参照)について学んできました。著作権は創作者の権利を守るために重要である一方で,「もっと自分の作品を多くの人に,自由に活用してもらいたい」と考える創作者もいます。また,「この素敵な作品を使いたいけれど,利用する際の手続きが複雑で……」と,ためらいを感じる利用者もいることでしょう。
このような背景から生まれたのが,今回ご紹介する「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(Creative Commons License: CCライセンス)」です。CCライセンスは,著作権者が自らの意思で,一定のルールの下,作品の自由な利用を許可するための世界的に普及している仕組みです。最近では学術論文においても,オープンジャーナルを中心にCCライセンスの表記が増えました。またYouTube®に動画をアップロードする場合,その動画の権利範囲をCCライセンスにするか,YouTube規定のライセンスにするかを選択できるようになっています。
今回は,CCライセンスの基本的な考え方と種類,そしてその活用方法について,添付資料の内容を踏まえながらわかりやすく解説していきます。特に,誤解が生じやすい非営利(NC)の条件についても触れていきます。
クリエイティブ・コモンズ(CC)とは?
まず,「クリエイティブ・コモンズ」とは,CCライセンスという仕組みを普及・推進している非営利団体の名称です。彼らは著作権法を尊重しつつも,作品がよりオープンに共有され,新たな創造へとつながる文化(コモンズ=共有地)を育むことをめざしており,そのための具体的なツールとしてCCライセンスを提供しています。
基本的なとらえ方としては,「この条件を守ってくれるなら私の作品を自由に使っていいですよ」という意思表示を著作権者がするための利用許諾契約のテンプレートです。以下が概要になります。
著作権は放棄しない
「CCライセンスの付与=著作権の放棄」ではありません。著作権は依然として創作者(または権利者)が保持したまま,特定の条件下での利用を他者に「許可」するものです。Copyright(著作権)のマーク「All rights reserved」とは異なり,一部の権利を予め許諾する意思表示です。
意思表示のツール
自分の作品にCCライセンスのマークを付与することで,利用者がどのような条件でその作品を使えるのかを明確に示せます。
利用者側のメリット
利用者は,作品に付与されたCCライセンスの条件を確認し,それを守ることで,権利者に許諾を改めて得ることなく,作品を複製,配布,リミックス(改変)などを行えます。
権利者側のメリット
権利者は,自分の作品がより多くの人に届き,活用される機会が増えます。新たな創作のきっかけとなったり,自身の認知度向上につながったりする可能性もあります。
CCライセンスを構成する4つの基本条件|BY,NC,ND,SA
CCライセンスは,BY,NC,ND...
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小林 只(こばやし・ただし)氏 株式会社アカデミア研究開発支援 代表取締役社長/医師・一級知的財産管理技能士
2008年島根大医学部卒。臨床医として研鑽に励み14年より弘前大総合診療部。16年博士(医学)。23年大学認定ベンチャー・株式会社アカデミア研究開発支援を創業。24年より弘前大総合地域医療推進学講座・講師,島根大オープンイノベーション推進本部・准教授を兼任。綜合者・総合医として研究開発×知財法務×安全保障×事業で,多分野の横断支援を担う。資格:1級知的財産管理技能士(特許・コンテンツ),AIPE認定知的財産アナリスト(特許・コンテンツ),Security Trade control Advanced(CISTEC)ほか。
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