伝わる!同意書説明の4ステップ
[第3回] 血漿分画製剤・成分製剤に関する同意書の読み合わせ
連載 前野 恭平,三谷 雄己
2026.02.10 医学界新聞:第3582号より
上級医 先ほど搬送されてきたバイク事故後の20歳男性ですが,診察の結果,左側胸部の痛みは脾損傷で間違いでしょう。CTを見ると,臓器損傷分類1)のGradeⅢで重症に当たりますね。TAEの準備に加えて,出血量が多くて大量に輸血が必要だろうから,輸血の同意書をとりましょう。
研修医 以前消化管出血の患者さんに同意書の説明をした経験があるので,任せてください!
上級医 ありがとう。今回は大量輸血になるだろうから,この前勉強した赤血球輸血(連載第2回)だけでなく血小板やFFP(新鮮凍結血漿)のことも説明しておきましょう。また場合によっては輸血の代用でアルブミン製剤を用いる可能性もあるので,そこも含めて説明しましょう。
研修医 輸血用血液製剤だけでなく血漿分画製剤の同意書も今回は必要なんですね。あやうく取らないで済ませてしまうところでした(この病院では輸血用血液製剤と血漿分画製剤の同意書が別なんだ……。上級医の助言がなければ気づけなかった)。
重症外傷で活躍する血液製剤
前回は輸血用血液製剤の中でも使用頻度の高い赤血球輸血をメインに解説しました。今回は成分製剤である血小板製剤や血漿製剤,またアルブミンなどの血漿分画製剤も含めて説明します。今回の症例のような外傷による出血では,赤血球製剤,血漿製剤,血小板製剤を1:1:1の比率を目安に輸血することがよくあります。特に止血を得られるまでの超急性期では適切でかつ速やかな輸血が必要です。重症な出血にもかかわらず輸血が足りない場合には,第一選択として使う細胞外液ではなくアルブミン製剤で代用することがあります。これは細胞外液だけでは大量に投与が必要になり,血液成分が希釈されて血が止まりにくくなるためです。アルブミン製剤のほうが膠質浸透圧の改善により血管内容量を維持しやすく,少量の投与で済むことが多いため,同意取得の際にはアルブミン製剤を含めた血漿分画製剤の説明もしておくとよいでしょう。
併せて,院内に血液製剤の在庫がどれだけあるのか事前に把握しておくことも重要です。救命センター以外の病院では,赤血球製剤が数単位しかない,もしくは血漿製剤や血小板製剤の在庫がないケースもあります。その場合には急いで近隣の血液センターから届けてもらったり,場合によっては転院搬送を行ったりする必要があるので,早期の判断が求められます。常に時間との勝負です。
説明を受ける本人やご家族は,急な出来事で焦っていたり落ち着かなかったりすることがしばしばあります。時間に迫られる外傷診療ではわれわれ医療従事者も焦りがちですが,まずは不安に共感しましょう。不安の多くは「どうなるかわからない」ことに起因します。今の病状や,これから必要となる対応を示すことが大事です。
“伝わる”ための4ステップ
ステップ1. 相手の立場に立つ
突然のことで驚かれるのも無理はありません。今の状態や,これから必要となる治療について心配されているかと思います。順を追って説明させてください。
ステップ2. 専門用語をかみ砕く
・血漿製剤2) → 血液の大半を占める液体の部分。
・血小板製剤 → 血を止める働きをもつもの。いわゆる“かさぶた”のもと。
・アルブミン製剤 → 血液に含まれるタンパクを集めたもの。出血時に輸血の代わりに使うことがある。
・肝炎ウイルス3)→ 血液を介して感染し,肝炎発症の原因となるウイルス
・TAE4) → お腹は切らずに,点滴からカテーテルという管を入れて行う治療。今回は脾臓という臓器の動脈が損傷しているので,その出血箇所をふさぐ物質をカテーテルを通して入れて止血する。
ステップ3. 視覚情報で補う
血液は血漿という少し黄色い液体と,赤血球や血小板を含む血球という成分の大きく2つに分かれています。今から点滴のチューブを通って体に入るのは,この液体成分の中に含まれる蛋白です。
ステップ4. よくある質問に備える
・製剤ごとの違いや副作用などについて患者さんから問われることが多いです(表)。
CASEのその後
上級医の的確な指示により,ご家族の十分な病状理解のもと血漿分画製剤と成分製剤,両方の同意をスムーズに取得することができました。その後血漿製剤が届くまで時間がかかり,一時的にアルブミン製剤を使用することになりましたが,血漿分画製剤の同意があったおかげでタイムロスなく治療を進められました。
病状説明はスキル,積極的に上級医から盗む
病状説明は学生のうちに習うことってないですよね? 研修医になっても,なかなか教わる機会はありません。特に昨今は働き方改革で勤務時間も限られるため,経験する時間も減っています。筆者(前野)も研修医時代にうまく説明できなかったり,長々と話してしまったりすることがあり,苦手意識を持っていました。このままではいけないと思い,合間を縫っていろんな先生方の病状説明を後ろで聞くように心がけました。すると,話している内容自体は同じであっても伝え方一つで受け手の反応が大きく違うことがわかりました。
その中でも説得力がある伝え方だと感じて私が手本にしたのは,過去・現在・未来と時間軸で分けて説明する方法です。ある上級医は多発性外傷の症例に対して,過去(どのような経緯で受傷した),現在(今どのような損傷や疾患があり,どのような状況にあるか),未来(病態に対してこれから何をして,どのような経過を見込んでいるか)の3つに分けて紙に記しながら説明していました。これは今でも私の説明スタイルの基礎となっています。
逆に順序立てずに一方的に説明して,「緊急なので早くサインを!」と言われても,納得できないでしょう。そうした状況を防ぐためにも,相手の理解度を適宜確認しながら説明してみましょう。時間は多少かかるものの,患者さんに納得していただきやすいです。むしろ,丁寧に説明したほうが,後でトラブルになりにくい印象を持っています。
病状説明はスキルです。ぜひ若いうちから上級医のよいところを盗んでいきましょう。
参考文献・URL
1)日本外傷学会.日本外傷学会臓器損傷分類2008.2008
2)日本赤十字社.献血について.2021.
3)日本赤十字社.Haemovigilance by JRCS 2023. 2025.
4)一般社団法人日本血栓止血学会.経カテーテル動脈塞栓術(TAE).2015.
5)一般社団法人日本輸血・細胞治療学会.輸血製剤副反応動向2022. 2024.
前野 恭平 秋田大学医学部附属病院救急・集中治療学講座
三谷 雄己 広島大学救急集中治療医学
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