標準的医療説明
インフォームド・コンセントの最前線

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本書は、特に説明が難しいとされる疾病や病態、検査、治療について、説明すべきポイントを外さずに、わかりやすく、要領よく患者に説明するための手順を示した1冊である。内科系疾患や悪性腫瘍のみならず精神疾患、小児疾患、産婦人科疾患に至るまで取り上げ、各領域の専門家が説き起こした。最新の医療知識と手技を反映するとともに、担当医療者が患者にわかりやすく説明できるよう統一した形の説明手順を用いて示している。

編集 一般社団法人 内科系学会社会保険連合
発行 2021年08月判型:A4頁:368
ISBN 978-4-260-04738-8
定価 5,940円 (本体5,400円+税)

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推薦の序

 本書は,診療行為「患者さんや家族に対する医療説明」がどの程度内科医師への仕事上の負荷になっているのかについて,一般社団法人内科系学会社会保険連合(内保連)が行った調査の結果を踏まえて編まれた“医療説明の便覧(マニュアル)”ともいえる書物である.

 本書の大部分を占める各論では,内科分野の主要な検査・治療81項目について,現場での説明時に用いることができるよう,統一されたフォーマット(病状,目的,検査や治療の方法,主な合併症・副作用,利益と不利益,代替法,費用)に則って,全体的に要点が簡潔に記述されている.多くの内科医にとって,自分自身が専門としている診療分野以外の検査や治療についての説明は,実際上,自分自身が病気になったときか家族が病気になったときにしか関わる機会がないことから,本書は医療の最前線で幅広く行われている検査・治療について,知識を最新化するうえでも有用である.いわんや,医師以外で患者さんに直接接する医療職,特に医師の説明に立ち会うことの多い看護師には,本書を座右に備え各論部分を参照されるよう強く勧めたい.

 総論では,主としてインフォームド・コンセントについて,その歴史や法律,医療経済,倫理学との関係が記述され,続いて,がんの診断・治療にかかるインフォームド・コンセントの考え方と具体的な手順が示されている.過去四半世紀の間にすべての医師に求められるようになった,現代医療を主導する基本理念である「根拠に基づいた医療」を実践するうえで,インフォームド・コンセントは,ほとんどの診療場面で不可欠な手順である.本書は,その意義と正しい手順を理解・確認できる優れた情報源となっている.

 以上から,本書が診療現場で有用な医療説明のマニュアルであることに疑いをはさむ余地はないが,並行して,医療説明がわが国の現今の保険制度の中では必ずしも正当に評価されてはおらず,早急に,保険収載される内科系技術として,現在よりもいっそう高く評価されるべきである・評価してほしいという強い期待が本書に込められていることも重要な事実である.内科系の技術は,外科系のそれらに比較するとアピール力に劣るとみなされるきらいはあるが,現場で求められる認知面および行動面での専門性は著しく高い.この点を強調するためにも,あくまでも私見ではあるが,「インフォームド・コンセントと医療経済」の項で,執筆者の田倉智之先生が紹介されている論文(医療説明が患者さんの満足度や効用値の向上に繋がったことを示している)のような研究が,今後,わが国でも多数行われ発表される必要があろう.

 京都大学名誉教授 福井次矢


推薦の序

 患者が納得して治療を選択するためには,医師による懇切丁寧な説明が不可欠です.保険医療機関及び保険医療養担当規則第十三条には,「保険医は,診療に当つては,懇切丁寧を旨とし,療養上必要な事項は理解し易いように指導しなければならない」と表現されています.この本の編者である蝶名林直彦先生は,医療行為に至る前の医師と患者の間で繰り広げられる対話の重要性にこだわり続けている内科系の医師です.
 患者が治療に対して納得した意思決定をするためには,医師による専門性の高い説明が必要で,その価値を人々に理解してほしいと考えておられるのだと思います.
 臨床現場では看護師などが「ICする」という動詞をよく使います.医師に「ICした?」と尋ねるときは,患者へ説明がなされて,サイン済みの同意書がある状態を期待しています.つまり,「ICする」のはこの場合医師となります.ですが,私はこの言葉の使い方は間違っていると思います.本書の総論でも解説されていますが,インフォームド・コンセントが意味するのは,治療を受ける患者自身が,自分の体調を理解し,その改善に向けた治療の選択肢を十分に理解している状態がインフォームドなのであり,その状態に対して行われようとしている治療を納得した状態がコンセントなのです.つまり,「ICする」の主語は患者です.
 この本は,内科系の医師が取り扱う治療や処置などのそれぞれについて,膨大な医学的エビデンスのなかから,患者にとってわかりやすい説明内容をコンパクトに例示しています.説明内容は,治療や処置の目的,効果,副作用,合併症,そしてその治療や処置を行わなかった場合にどうなるのか,ほかの治療の選択肢はあるかといったことに及びます.文体は「ですます調」で一貫しているので,冒頭に示した「懇切丁寧」らしさが醸し出され,読みやすいと感じられるかもしれません.
 ただ,ICの成立要素には,相手の同意能力に合わせた説明が必要であると「総論」に述べられているように,本書の説明内容がすべての患者に有益であるわけではないことを示しています.専門用語が多用されているので,非医療者が納得するには,遠慮なく質問できる環境を整えたり,平易な言葉で言い換えたり,その人の同意能力に合わせた医療者の努力が欠かせません.
 内科系の部署に勤務する看護師には,本書に整理されたような医療情報が,患者皆に届くよう配慮してほしいと思います.また患者自身が,説明を受けた項目を本書で紐解き,調べ,医療者に質問できるようになることも,自分でICするには必要なことです.病棟や外来で,本書がさまざまに活用されることを期待したいと思います.

 聖路加国際大学大学院看護学研究科・教授/看護系学会等社会保険連合・代表理事 山田雅子


 すべての検査や治療を行う前に患者さんやその家族に行う医療説明は,特別な場合を除いて不可欠である.それは,「医療」という名のもとに,患者さんの身体に外部からなんらかの行為が加えられる以上,倫理的に必須だからである.
 そして医療説明を受けた患者さんの判断によって,検査・治療を行うかどうかが決まってくるわけで,その検査・治療の医学的適応以上に,医療説明の「良し悪し」が,医療行為の実施の是非を最終決定するといっても過言ではない.
 さらに医療説明の内容や技術はもちろんのこと,患者さんの立場や環境を考慮しつつ提案したかどうかといったことも大切な要素となる.

 わが国においては,このような医療説明に関する具体的な方法を,客観的に評価した仕事は少なく,その部分はむしろ歴史的に空白に近い状況であった.しかし一般社団法人内科系学会社会保険連合(内保連)では,医療行為決定に際して医療説明の重要性を認識し,なかでも1回の説明に30分以上を要する医療説明の存在など,看過できない医療者の負荷となっていることに早くから気づき,それを実証してきた.
 また時代とともに医療が複雑化すればするほど説明の難易度も上昇し,患者さんにはその医療行為の目的や方法が理解しにくくなり,うまく説明さえすれば避けることのできた医療訴訟が増加してきている.加えて医療説明が医師のみで行われるのは約1/3で,多くは看護師をはじめ,技師や,療法士・薬剤師などのコメディカルが医師と同席しており,チーム医療で行われていることが内保連の調査で明らかとなった.

 そこで今回,まず総論として,医療説明すなわち「インフォームド・コンセント(IC)」について俯瞰的立場から,その歴史・法律・経済・倫理学的にその意義を解説していただいた.
 またそれとともに,説明の際に患者さんの側により近い立ち位置をとる看護師やコメディカルの重要性や,ICと近い関係にある「協働意思決定」の概念にも触れてもらった.
 次に各論として先の内保連の調査で比較的難しいとされた,がんを含む多種の医療説明について,内科系疾患のみならず小児疾患や産婦人科疾患に至るまでを対象として標準的な医療説明のモデル版を作成し1冊の手引書に仕上げた.各説明の内容は,最新の医療知識と手技を反映しているとともに,担当医療者が患者さんにわかりやすく説明できるよう,ある程度統一した形の説明手順を用いて各専門分野の医師に記載していただいた(「本書の編集方針」→vi頁).
 本書の医療説明の内容はあくまでも標準的かつ最低限必要な説明内容になっており,読者の皆さまがこれから実際に医療説明を行う場合,参考にされ,患者さんとの協働作業として各チームで責任をもって行っていただきたい.
 すべての医療者が必要十分な医療説明ができ,患者が迷いなくその医療を選択し受療することができるように.

 2021年8月
 編者を代表して 蝶名林直彦

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推薦の序

本書の編集方針
責任編集者,執筆者,査読協力者

総論
  医療説明に関する内保連の実態調査
  「インフォームド・コンセント」「説明と同意」の歴史的俯瞰
  協働意思決定(shared decision making:SDM)の考え方
  インフォームド・コンセントと法律
  インフォームド・コンセントと医療経済
  インフォームド・コンセントと倫理学
  インフォームド・コンセントと看護師
  がんの診断・治療に関するインフォームド・コンセント

各論
 呼吸器疾患
  人工呼吸器装着(神経・筋疾患以外の場合)
  在宅酸素療法
  胸腔ドレナージ
  肺がんの治療方針決定
  睡眠時無呼吸症候群に対する治療(CPAPを含む)
  気管支鏡生検
  局所麻酔下胸腔鏡生検
 循環器疾患
  重症心不全
  カテーテルアブレーション治療
  非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法(DOAC治療)
  デバイス植込み術(心臓ペースメーカ,植込み型除細動器,心室再同期療法)
  経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)
  心臓カテーテル検査,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
  経食道心エコー検査
 消化器疾患
  食道がんの治療〔内視鏡,レーザー治療(PDT)を含む〕
  早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剝離術(初診時もしくは治療直前)
  大腸がん
  消化管ステント挿入
  内視鏡的胃瘻造設術
  胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)による治療
  潰瘍性大腸炎の治療
  肝がんの局所治療選択とラジオ波焼灼療法
  膵囊胞ドレナージ
 内分泌・代謝疾患
  糖尿病ケトアシドーシス
  低血糖昏睡
  妊娠糖尿病
  フラッシュグルコースモニタリング(FGM),持続血糖測定(CGM)
  甲状腺クリーゼ
  副腎クリーゼ
  甲状腺穿刺吸引細胞診
  副腎静脈サンプリング
 血液疾患
  同種造血幹細胞移植
  播種性血管内凝固(DIC)
  急性骨髄性白血病に対する治療
  骨髄異形成症候群に対する治療
  再生不良性貧血に対する治療
  濾胞性リンパ腫に対する治療
  びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療
  小児造血器腫瘍に対する化学療法
 腎臓疾患
  透析開始時の治療選択
  血漿交換療法
  腎生検
 神経疾患
  人工呼吸器装着(神経・筋疾患の場合)
  神経免疫療法
  難治性の頭痛性疾患の治療
  多系統萎縮症の呼吸管理
  筋生検
  神経生検
 膠原病・リウマチ性疾患
  関節リウマチの生物学的製剤による治療
  ループス腎炎に対する治療
  ANCA関連血管炎に対する生物学的製剤療法(リツキシマブ)
 精神疾患
  認知行動療法
  電気けいれん療法
  クロザピン療法
  認知症
  依存症(アルコール依存症を中心に)
  摂食障害(精神科を窓口に受診する場合)
 小児疾患
  重症先天性疾患の診療(早産児を中心に)
  小児ネフローゼ症候群に対する免疫抑制薬(シクロスポリン)の使用
  成長ホルモン分泌不全性低身長症の成長ホルモン治療
  遺伝性疾患が疑われる場合の遺伝学的検査
  先天性心疾患の心臓カテーテル検査
 産婦人科疾患
  婦人科がん化学療法 子宮体がんに対するパクリタキセル・カルボプラチン(TC療法)
  排卵誘発
  分娩誘発・陣痛促進
 放射線治療関連
  甲状腺腫瘍に伴うRI内用療法
  残存甲状腺に行うアブレーション
  前立腺がんに対する強度変調放射線療法
  去勢抵抗性前立腺がん骨転移に対するゾーフィゴⓇ内用療法
 心療内科疾患
  摂食障害(内科,プライマリ・ケアを窓口に受診する場合)
  摂食障害〔心療内科(内科)を窓口に受診する場合〕
  慢性疼痛に対する認知行動療法
  重症の過敏性腸症候群
 感染症関連
  生物学的製剤と感染症
  結核の隔離入院について
  HIV感染症の検査
 アレルギー性疾患
  気管支喘息発作の治療
  食物アレルギー
 悪性腫瘍関連
  乳がん
  がん治療による心血管障害
  がん遺伝子パネル検査
  成人に対する同意書モデル
  未成年(20歳未満)に対する同意書モデル

索引

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