医学界新聞

書評

2026.01.13 医学界新聞:第3581号より

《評者》 島根大 教授・地域医療教育学

 本書は,SNSで人気の呼吸器内科医「呼吸器ドクターひつじ」先生こと竹村知容先生による,人工呼吸器装着症例の看護に役立てていただける一冊です。

 私もいくばくかの書籍を出版させていただいており,書籍を拝読するときにはいつも,この本の対象はどなたなんだろう? ということを考えますが,本書の対象読者は,人工呼吸器を扱う看護師さん,特に初心者・初学者の方を中心に想定されています(本書「はじめに」参照)。ただし,看護師さんだけでなく,呼吸管理にかかわる全ての医療従事者に活用してほしいという意図もあり,実際に有用な内容となっています。

 こちらの書籍,お薦めポイントは以下の3点です。

①現場で本当に必要な知識を厳選

 現場で働かれている看護師さんであれば承知されているであろう,呼吸生理などの基礎的な解説は最小限にとどめ,人工呼吸器のモードや設定,病態に応じた調整方法など,臨床で即,役立つ内容を厳選して記載されています。これまで「なんとなく」で設定していた方も,しっかり理解できる構成です。現場で働かれている看護師さんに実際読んでいただいてのご意見を参照され,全員から「わかりやすい」とのお墨付きをいただいたとのことで,まさに現場目線のわかりやすい内容になっています。

②実践的なトピックを網羅

 病態に合わせた設定として,閉塞性換気障害や拘束性換気障害があるとき,低酸素が強い場合の人工呼吸器設定の考え方,それから酸素と二酸化炭素を規定する設定項目についてもきちんと記載されています。

 また,実際に人工呼吸器を取り扱う際に悩む事柄として,合併症の管理,鎮静・鎮痛,腹臥位療法,グラフィックモニターの波形解析,アラーム対応,離脱(ウィーニング),さらにはNPPVやハイフロー療法まで具体的に幅広くカバーされていて,人工呼吸器管理に必要な知識を一冊で体系的に学べます。

 さらに,低酸素の際に用いるデバイスとして,挿管人工呼吸だけではなく,NPPV,それにHFNCなど,他の酸素投与デバイスについても章を設けられていて,現状で9つ(!)もあるデバイスの使い分けも学ぶことができるようになっています。

③視覚的にわかりやすい工夫

 人工呼吸器管理が苦手とおっしゃる方は多いのですが,その理由として,「波形がよくわからない」「設定の仕方がよくわからない」という声があります。本書では正常・異常波形の比較や,設定の考え方を図解で示すなど,理解を助けるビジュアルが豊富ですので,初学者でも安心して読み進められます。

 本書は人工呼吸器管理の「基礎から応用まで」を効率よく学びたい方に最適です。看護師さんだけでなく,新人医師や理学療法士さんなど,呼吸管理にかかわる全ての職種に臨床現場で「迷わないための一冊」として,お薦めします。


《評者》 東海大 教授

 『見る×読むで納得! 消化器外科レジデントが知っておきたい108 topics』は,消化器外科を志す若手医師に向けて,「今すぐ臨床で役に立つ知識」を凝縮した実践的なガイドブックである。研修医や専攻医,さらには消化器外科に関心を持つ医学部学生まで幅広い読者を想定しながらも,決して机上の理論にとどまらない“ベッドサイドで開いてこそ価値がある一冊”として位置づけられている点が,本書の最大の特徴といえる。

 取り上げられている108のトピックはいずれも外科レジデントが臨床で直面しやすく,かつ理解の浅さが致命的となり得るテーマばかりである。これらを「見開き2ページ」でまとめ,最初に要点を簡潔に整理した上で,本文は基本的に3つのポイントに絞って解説する構成は秀逸だ。臨床現場では限られた時間の中で“本当に知るべきこと”に素早くアクセスする必要があるが,本書はそのニーズに正面から応えている。特に,結論から先に示し,続く本文で理解を深めるという流れは,忙しい現場で読者の思考を整理し,必要な判断へと直結させる力を持っている。

 さらに,図表を大胆に活用したレイアウトは,視覚的理解を徹底して追求したものだ。文章を読む負荷を軽減しつつ,重要なポイントを一目で把握できるよう丁寧に工夫されている。複雑な病態や手術手技,周術期管理のプロセスも,図示されることで読者の理解を確実にサポートする。単に「読む」のではなく,「見るだけで理解できる」構造が随所に散りばめられている点は,従来の教科書にはない大きな魅力だ。

 また,本書が108という数字を採用した背景には,編集者の遊び心と外科医への深い理解が込められている。108は人間の煩悩の数であると同時に,“外科医が日々四苦八苦する項目の数(4×9+8×9=108)”であるという解釈には,臨床の厳しさを知る者なら思わずニヤリとしてしまう。こうしたユニークな発想が,本書全体の柔らかさと親しみやすさにつながっている。

 巻末の文献一覧が極めて厳選されている点も見逃せない。大量の文献を羅列するのではなく,「本当に読んでほしいもの」だけを提示する編集方針は,読者の学習効率を最大限に考えたものだ。本書を通じて興味を深めた読者が,次にどの文献へ進めばよいかが一目でわかる構成は,教育的観点からも高く評価できる。

 本書は消化器外科の“基礎と臨床の橋渡し”をも考えた教科書であり,知識を詰め込むのではなく,「必要なときに必要な知識へ到達できる」ことを徹底的に意識して設計されている。108という数に象徴されるように,外科医が直面する悩みや疑問を,見開き2ページの中に的確にまとめ上げた本書は,まさにベッドサイドで最も頼りになる相棒となるだろう。

 大阪大学消化器外科の皆さんが総力を結集して作製した渾身こんしんの本書を,消化器外科医をめざす若い医師や学生に確信を持って薦める。臨床の現場で折に触れて何度も手に取り,その都度理解を深めていく――そんな使い方ができる,実践力を養うための最良の一冊だ。