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『フィジカルアセスメントに活かす 看護のためのはじめてのエコー』より

連載 酒井 一由 / 刑部 恵介

2024.04.05

 超音波(エコー:echo)検査は看護師にとって身近な存在となりつつあります。外から観察しただけでは分からない身体内の状況・状態を視覚的に確認してアセスメントするために,非常に有効なツールです。しかし,エコーに興味があっても,経験や手技に対する不安を感じている人も多いのではないでしょうか。書籍『フィジカルアセスメントに活かす 看護のためのはじめてのエコー』はこれから超音波検査を始めようとしている看護師の皆さんが必要とする情報を,ポイントを絞って分かりやすく解説した一冊です。

 「医学界新聞プラス」では本書のうち,「第1章 まず,超音波検査を行う前に」,「第2章 基本のき」,「第4章 いよいよ,超音波機器を使ってみよう」,「第5章 事例とエコー画像から病態を考えてみよう」の中から内容を一部抜粋し,全5回でご紹介します。

 

 膀胱の超音波検査により尿量を可視化して確認することができるので,排尿機能の把握が容易にできます。また,それだけではなく,膀胱内の結石の有無,尿道カテーテルの観察により,患者の病態把握やケアに大いに役立ちます。本項では,膀胱の位置確認,尿量測定を中心に解説します。

どのようなときに使う?

 膀胱の検査は,尿失禁や血尿などの症状があった場合に行います。また,残尿も観察できます。
下部尿路の症状や機能の把握
症状の原因(病態)確認
病態に応じたケア評価

超音波機器の設定:画像条件設定と使用するプローブ

プローブ:膀胱の観察には身体の深部まで観察するため周波数帯域が3.5~5.0 MHzで,広い視野が確保できるコンベックス型プローブを用います。
画像調節
・ゲイン(反射波の増幅度)→画像全体が明るく見えるように調整します。膀胱内に白いノイズが現れないように調整します。
・STC(sensitivity time control,深さに応じた増幅度)→深部ほど暗くなるので,全体が同じ明るさになるように補正します。
・フォーカス→画像が鮮明に見えるように調整します。

患者体位

通常は仰臥位で行います。
プローブを恥骨のすぐ上に置くため(図4-1),個室で検査を実施する,観察部位以外にはバスタオルを掛けるなど,患者のプライバシーには十分配慮します。

図4-1②.png

検査者の位置

 検査者は患者の下腹部の横に座ります。超音波機器は患者の横に置くか,または手に持って検査します。

プローブの位置と操作

[検査前の注意事項]
ゼリーはプローブに付け,患者の身体には付けないようにします(患者の衣服が汚れないように注意し,タオルを用意しておきます。検査終了後はゼリーを拭き取ります。プローブに付いたゼリーもしっかり拭き取ります)。
膀胱の検査には,膀胱自体を評価する検査と膀胱の容積(尿量)を見る検査があります。
膀胱自体の検査は,必ず排尿前に行います(膀胱充満法)。排尿前であれば膀胱内に尿が充満していることで膀胱が拡張し,膀胱がんや結石などを見つけることができます。しかし,排尿後では膀胱が収縮することで,周囲の消化管が邪魔するようになり評価できなくなります。
排尿前後で膀胱容積(尿量)を見ることで,前立腺肥大などによる排尿障害を評価することができます。
[プローブの位置(超音波を当てる位置)]
 膀胱は恥骨のすぐ背側にあり,頭側には消化管,男性では足側に前立腺,女性では背側に子宮が位置しています(図4-2)。左右の尿管口と内尿道口を3つの頂点とする部位を膀胱三角部と呼びます。
 膀胱を検査する際は,下腹部正中にプローブを当て,膀胱と周囲の臓器(前立腺や子宮)を観察します。
 排尿前の膀胱であれば,膀胱内は超音波を通しやすい尿が貯留していますので,膀胱壁に囲まれた無エコー域(黒色)として観察されます(図4-3)。

図4-2②.png
図4-3②.png
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実はそこまで難しくない! エコーへの苦手意識を克服できる本

<内容紹介>ポケットエコーの登場で、病棟や在宅で看護師の超音波機器(エコー)の活用場面が広がる兆しはあるが、まだ十分ではない。触れる機会の少なさや、技術への自信のなさなどが理由だ。しかし、意外と簡単に画像を描出し、根拠のあるケアが提供できる部位も多く、業務の効率化を図ることができる。そこで、初めて超音波機器に触れる看護師に向けて、分かりやすい表現を心掛けた。本書によって、超音波機器の活用場面と可能性が広がる。

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