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フィジカルアセスメントに活かす
看護のためのはじめてのエコー

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ポケットエコーの登場で、病棟や在宅で看護師の超音波機器(エコー)の活用場面が広がる兆しはあるが、まだ十分ではない。触れる機会の少なさや、技術への自信のなさなどが理由だ。しかし、意外と簡単に画像を描出し、根拠のあるケアが提供できる部位も多く、業務の効率化を図ることができる。そこで、初めて超音波機器に触れる看護師に向けて、分かりやすい表現を心掛けた。本書によって、超音波機器の活用場面と可能性が広がる。

編集 藤井 徹也 / 野々山 孝志
発行 2023年03月判型:B5頁:164
ISBN 978-4-260-05011-1
定価 3,300円 (本体3,000円+税)

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はじめにのはじめに(藤井徹也,野々山孝志)/はじめに(藤井徹也)
 

はじめにのはじめに
──だれでもマスターできる! 初心者の看護師が理解しやすくなるための工夫


 本書は,超音波検査をあまり身近に感じていない看護師が,まずは興味を持ち,必要性も感じるための1冊(書籍)にしたいと考えて企画しました。大きな工夫を挙げてみます。
 とにかく超音波検査を身近に感じてもらうために,第1章では,超音波機器への苦手意識を強くさせないように,専門的な用語や図は用いず,山びこやボールを例にとり,画像が映るしくみを解説しています。また,本書全体にわたっていることですが,「ですます調」を用いて,読者に語り掛けるよう意識をして書きました。
 それから第2章では,超音波検査や超音波画像の特徴について丁寧に解説しています。また,本文中の言葉の説明も工夫しました。例えば,超音波検査に特有な言葉については,1つひとつ用語の説明を加え,初めて超音波機器に触れる看護師でも理解しやすいようにしました。本書では,看護師が持ち運びできる小型超音波機器を中心に解説しているため,「超音波装置(一部記載あり)」ではなく,あえて「超音波機器」と表現しています。さらに「超音波検査」「エコー」の言葉についても,見出しや文章の内容から,使い分けをしています。
 そして,超音波検査では経皮的に体内の状態を把握するので,撮影や画像の読み取りには体内の臓器の位置関係を理解することがとても重要です。そのため,解剖が苦手と思っている看護師でも理解しやすいよう,第3章では超音波検査で観察する部位の臓器や血管などについて,多くのイラストを示すことでそれらの位置関係が把握できるようにしました。また,他の章でも文章を補足するためのイラスト(シェーマ)を多く採用して,初心者でも理解しやすいように工夫しています。特に超音波画像は白黒画像のため,読み取りが難しく感じられがちですが,超音波画像の隣にシェーマを示しているため,比較することで超音波画像の理解が深まると思います。
 第4章では,利用したい看護場面を紹介しました。例えば,「膀胱の検査」や「便秘の観察」などは,初心者でもベッドサイドで活用できます。
 超音波検査の基本的な知識や手技を解説した後に,第5章では具体的に活用できる「事例」を示しています。事例を学ぶことで,どのような場面で超音波検査が役立つのか理解でき,実践でのアセスメント力の向上につながると考えます。
 本書全体を通して,臨床の看護師が実践ですぐに役立てられる内容にしたいと考え,日頃から超音波検査を行っている臨床検査技師,理学療法士も執筆陣に加わり,ノウハウを提示してもらっています。しかし,それだけでは初心者の看護師にとって理解が難しく,実践で応用しにくい可能性があります。そのため,これまで超音波検査が未経験の看護師に本書の記述を確認してもらう作業を行いながら進めました。また,文章ではどうしても理解しにくい点については,実際の動画(一部静止画)を付録にすることで,スキルをより深めてもらえるように工夫しています。
 このように,本書は超音波検査を始めようとしている看護師の皆さんが必要とする情報を,ポイントを絞って分かりやすく解説する工夫を重ねています。また,すでに超音波検査を実践している看護師の皆さんにとっては,撮影の手技のポイントや超音波画像の読み取りのポイントが再認識できます。看護技術の技術教育に関わっている教員の皆さんにも理解しやすい書籍であると考えています。
 多くの看護師の皆さんに,気軽に目を通し理解を深めていただくことを,心より願ってやみません。

 2023年3月
 編集 藤井徹也,野々山孝志


はじめに

 看護師自身が超音波機器を手にする時代に
 看護師にとって超音波(エコー:echo)検査は身近な存在であり,その画像や動画も必要なデータとしてさまざまな臨床現場で活用されていると思います。ただ,それは医師や検査技師など他の医療職が実施した検査の画像や動画データを活用するものです。しかし,現在の医療現場では,看護師自らが超音波検査を実施し,そこで得られたデータを活用する時代が到来しつつあります。
 そこで,まずは看護師自身が超音波検査を行う必要性について紹介します。看護師が患者にケアを行う場合には,そのときの状態を把握する必要があります。そのためには,本人からの訴え,バイタルサインの測定,血液検査や画像検査のデータなど,さまざまな情報から身体の中で何が起こっているのかを把握していると思います。これらの中で,画像検査は,外から観察しただけでは分からない身体内の状況・状態を視覚的に確認することができる重要なデータです。身体の中の状態を視覚的に確認できれば,適切なアセスメントにつながります。しかし,X線検査,CT(computed tomography)検査,MRI(magnetic resonance imaging)検査などは,医師の指示の下で放射線技師により行われます。そのため,看護師が必要なときに自ら必要な画像を得ることはできません。一方,超音波検査は,看護師にも活用できる検査なのです(第1章)。
 超音波は,人が聞くことのできないレベルの高い周波数の音波のことです。音波は,何かに当たると跳ね返ってきます。つまり,超音波の出るプローブという器具を皮膚に当てて超音波を体内へ伝えることで臓器などから跳ね返ってくる音を得ることができます。この跳ね返ってきた音を電気信号に変換することで画像を作ります(第2章)。また,超音波は体内への影響が少なく,従来から妊婦と胎児の観察などにも活用されています。

 看護師にとって有効な手段である超音波機器
 看護師は,患者の体内の状態を把握するために,経皮的に視診,聴診,触診,打診などの手技を実践しています。しかし,体内の深部や,音が得られないものの状況を把握することは困難です。それを補う方法としては,超音波検査は非常に有効です。実際には,以下のような場面で活用ができます。
 ・膀胱内の尿量測定
 ・直腸内の便の観察
 ・褥瘡の観察
 ・関節の観察
 ・甲状腺の観察,など
 また,聴診などと関連させながら,アセスメントに活用できる場面としては,心臓の状態の観察,嚥下の評価などが考えられます。
 看護師の皆さんが,このような場面で超音波検査を活用することで,アセスメントするための情報が増え,適切な援助実践につながると考えます。

 看護師にとってなくてならないアイテムになるポケットエコー
 超音波検査を行うためには,超音波を体内へ伝えるためのプローブと画像を確認するための本体が一式必要となります。病院では,プローブと本体が一体型になっている大きな超音波機器を思い浮かべるかと思います。しかし,最近は,ポケット型のワイヤレスプローブとスマートフォン大の本体の超音波機器(ポケットエコー)も開発されています。このポケット型の登場により持ち運びも便利になり,病院のみでなく,在宅でも訪問看護でも活用が可能な状況になっています。また,価格についても以前よりも安価になる傾向があり,一部機器ではリースも可能です(iViz air,富士フイルムメディカル製,約3万5,000円/月額,2023年2月現在)。さらに,超音波検査を活用することで,バイタルサインの値などと同様に必要な視覚的情報として,看護師間,多職種との連携で共有することも可能です1)
 ポケットエコーの具体的な活用方法としては,次の①~④などが考えられます。①便秘について,実際にどのくらい便が貯留しているか把握することができます。画像で示すことで,患者や利用者,家族にも分かりやすく説明でき,不必要なグリセリン浣腸や摘便の実施を減らしたり,食事量との関連を確認したりすることにもつながります。②残尿測定にも活用できます。残尿測定については,看護師が以前から超音波検査を活用し,画像による膀胱径を測定することで残尿量を算出していました。しかし,前述したiViz aiでは,AI技術により膀胱のエコー画像から膀胱内の尿量を数値で示してくれるため,簡単に残尿量を把握することができ,短時間に適切な量を把握することにつながります2)。③褥瘡では,状態の把握と経時的変化を画像データで把握することができます(第4章)。また,皮膚表面の観察だけでなく,表面からの観察では分からない深部組織損傷(deep tissue injury, DTI)の評価に有効だと思います。そして,皮下組織の状態を把握することできます。褥瘡の観察については,トレーニング用のモデル(M193,坂本モデル)3)も開発されており,各自のトレーニングに役立ちます。④急変時にでもその場で看護師が状況を確認し,適切な判断につなげることもできます。黒沢1)は,在宅での使用で救急搬送に頼らずに在宅で過ごすことを選択するための一助となり,同時に救急搬送を減らすことにつながるメリットを述べています。
 さらに,超音波の特徴から,これまで空気を含む肺についての観察は,胸腔内の胸水などの液体貯留以外にあまり行われていませんでしたが,超音波機器の解像度の改善とアーチファクト画像の分析により,“肺をエコーで診る”時代になってきています4)。このように超音波機器の進化により,今後はより多くの場面での活用が期待されます。

 本書は,看護師に超音波検査の実施がより必要になることを見据えて,これから超音波検査を始めようとしている看護師や基礎教育課程の学生が理解しやすいように超音波機器の特徴や使用方法,読み取りから判断までを分かりやすく紹介しています。

 2023年2月
 編集 藤井徹也

 

参考文献
 1) 黒沢勝彦:アセスメントの精度・速度を高め,不要な医療を減らす.訪問看護と介護25(4):272-277,2020.
 2) FUJIFILM,超音波診断装置・ポータブルエコー iViz air Ver.5 コンベックス.
   https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/ultrasound/iviz-air/iviz-air-convex[2023.02.01 アクセス]
 3) 坂本モデル,M193組織損傷超音波観察トレーニングファントム 株式会社坂本モデル.
   https://www.sakamoto-model.co.jp/echo/m193/[2023.02.01 アクセス]
 4) 野村岳志:Point-of-care lung ultrasound.日本集中治療医学会誌23(2):123-132,2016.

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第1章 まず,超音波検査を行う前に
 実はそこまで難しくない!
  超音波機器の活用は看護師のスキルの1つ
  超音波機器を扱うのは難しくない
  解剖の知識が足りないけど,うまく撮影できる?
  画像に何が写っているかよく分からない
 看護師と超音波検査と法律
  看護師の業務内容
  看護師が超音波機器を使うことに法的な問題はないか
  在宅での超音波機器の使用と特定行為に係る看護師の研修制度

第2章 基本のき
 これだけ分かれば大丈夫
  超音波検査の特徴
 テクニックの基本
  超音波機器の原理
  超音波機器の構成
  検査の実際・留意点
 データの読み取りの基本(操作)
  観察方法
  プローブの位置と読み取り画像
   頸部①
   頸部②
   頸部③
   胸部①
   胸部②
   腹部①
   腹部②
   腹部③
   腹部④
   腹部⑤
   下腹部
   下肢①
   下肢②
   下肢③
   下肢の動脈・静脈①
   下肢の動脈・静脈②

第3章 体表と臓器の関係をはっきりさせよう
 外から臓器の位置を確認しよう
  頸部
  胸部
  腹部
  下肢

第4章 いよいよ,超音波機器を使ってみよう
 幅広い看護場面で──看護の目的別活用方法
  膀胱の検査
  前立腺の検査
  便秘の観察(直腸・結腸)
  褥瘡の観察
  嚥下の評価
  経鼻胃管の観察
  関節拘縮の観察
 ちょっと限られた看護場面
  DVTの観察
  心臓の読み取り
  頸動脈の観察
  甲状腺の観察

第5章 事例とエコー画像から病態を考えてみよう
  胸部
  腹部
  下肢①
  下肢②

コラム
 長軸法・短軸法を使い分けて,バスキュラーアクセスへの穿刺を成功させよう
 筋肉内注射にも使いたい超音波
 胎児の成長を見守る周産期超音波検査
 骨盤腔の臓器(膀胱,子宮,卵巣)はどう見える?
 リンパ浮腫の観察にも有効な超音波検査
 血管確保はセンス?

おわりに
索引

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在宅での活用方法や利点が分かった!
書評者:野崎 加世子(これからの在宅医療・看護・介護を考える会代表)

 訪問看護師として30年余り在宅医療に携わってきました。2006年には熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる訪問看護師を目指して認定看護資格を取得しました。
 2018年に県全体での研修会を開催することになり、講師として来ていただいたのが、『看護のためのはじめてのエコー』を編集された藤井先生方でした。

 研修中に訪問看護師たちの興味を引いたのが、超音波機器を用いた褥瘡の管理や内臓・血管の異常についての状態把握と、経時的変化が画像データで残せることでした。今まで超音波検査は、医師や検査技師が行うものと理解していた私たちは、皮膚表面からの観察だけでは分からない深部組織損傷(DTI)のチェックなどを経験し、正しい評価項目が自分でできたことに感激し、衝撃の研修となりました。その他、尿量測定や便の貯留、脱水における観察などにも適応できることを教えていただき、在宅での医療・看護における活用方法が広がることを知りました。

 今回、本書を読んで思ったのは「難しくない、分かりやすい」ということです。未知の分野の超音波機器を用いた看護が自分にできるだろうかと不安を持つ多くの看護師が、まずは学んでみようと、初心者でもその気持ちにさせてくれると実感しました。
 第1章では、超音波検査の原理と看護師がどのように活用するのか等、超音波機器の予備知識を教えてくれる内容です。
 第2章は、超音波機器の名称や付属機器の使い方・原理などの基本の説明があります。データの読み取りの解説では、今まで単に画像としてしか見ていませんでしたが、そこに実践に生かせる情報が網羅されていたことを知りました。
 第3~4章は、人間の各臓器を超音波機器で見た場合の画像上の位置や見方について学ぶことができるようになっています。最終章で、実際の疾患と画像検査によるアセスメント方法などが解説してあります。また、各章に臓器ごとの画像の見方などの観察時のWeb動画も付いており、より学びを深められるようになっています。
 私たち訪問看護師が単独で看護ケアする場合、超音波機器を使うと、膀胱内の尿量測定や直腸内の便の観察、褥瘡の管理などを日々行え、異常の早期発見にもつながり、大変有効です。また、観察した箇所を画像化して客観的にアセスメントすることで、利用者や家族、医師、多職種が今後の生活支援を考えるための情報を共有できます。ベッドサイドで簡便に行えてリアルタイムに評価でき、豊富で有用な情報を得られるなど、在宅においても利点が多い検査方法だと分かりました。
 超音波検査を用いてフィジカルアセスメントを適切に行い、看護ケアにつなげることは、利用者に地域で安心して療養していただくだけでなく、地域包括ケアシステムの進化を後押しするものになると考えます。ぜひ多くの訪問看護師の仲間にも読んでいただきたい本です。

(「訪問看護と介護」Vol.29 No.1 掲載)


超音波機器を用いて看護の役割拡大の実現へ
書評者:眞野 惠子(藤田医大病院副院長・統括看護部長)

 看護技術が看て,覚え,経験に基づき実践されていた時代から,エビデンスに基づき実践する時代へと移り変わってきています。

 『フィジカルアセスメントに活かす 看護のためのはじめてのエコー』,この書籍を手に取ったとき,肝切除術後の効果的な離床について,超音波機器(エコー)を用いて肝血流量を視ながら検討をする看護研究に取り組んでいた時のことを思い出しました。当時,看護のための超音波機器に関する書籍は皆無に等しく,医師と共に大きな超音波機器をその都度,病室に運んで行った記憶がよみがえってきました。今はポケットエコーも登場し,本書を読みながら時代の変遷を感じるとともに,社会のニーズに応じた看護の役割拡大の「時」,チャンスが来ていることを実感しました。本書はイラストや写真,そしてわかりやすい言葉で説明され,初心者でも超音波を身近に感じることができる内容です。

 第1章では,基礎教育課程からフィジカルアセスメントがカリキュラムに組み込まれる中,超音波機器の活用もフィジカルイグザミネーションのスキルの一つととらえる時代になったことや,看護師が超音波機器を使用することに法的な問題はなく,「特定行為に係る看護師の研修制度」の施行にあわせ業務の幅は広がり,今後は在宅医療においても看護師が超音波機器を使用する場面が広がっていくことが説明されています。第2章では,超音波検査の安全性と使い方が具体的に示されています。第3章は解剖の解説です。解剖を知らずしてプローブを当てることはできません。体表と臓器の関係について,最も基本的な臓器の位置関係がイラストで示されています。第4章の実践編では,排尿困難な患者への残尿の観察,腹部膨満感を訴える患者への便秘の観察,褥瘡の観察,むせこむ患者への嚥下状態の観察など,看護師がベッドサイドで判断に迷う状況に遭遇したときに,エコー画像を活用してアセスメントをする手技が具体的に示され,幅広い看護場面で活用できることが説明されています。本書の目的でもある,医師は診断・治療のために超音波機器を使い,看護師は日常生活援助のために超音波機器を使うことを再認識させる章となります。最終章では,患者さんの訴えや症状から病態を予測して超音波機器を使用する事例を用いた応用編でまとめられています。また,付録のWeb動画ではプローブを当てる場所や画像の見方が実際の動画で確認もできます。本書に添った無料セミナーは,CLoCMiP®レベルIII認証申請の選択研修としても開催されました(2023年10月18日実施)。

 身体の中を看て看護判断することで,フィジカルアセスメント力は向上します。超音波機器を使用することにちゅうちょせず,まずは本書を読んでプローブを手に取り体表に当ててみることから始めてみましょう。看護師の誰もが超音波機器による観察や,画像を読み解く力を身につける時代がすぐそこに来ています。


いよいよ私たち看護師の世界にエコーという新しい風が吹き始めたことを感じる1冊
書評者:筑井 菜々子(地域医療振興協会JADECOMアカデミーセンター NP・NDC研修センター教育・指導課 課長/診療看護師)

 診療看護師(NP)となり10年の月日が過ぎました。この10年間,超音波(エコー)検査装置を使わない日はないといっても過言ではないほど,毎日何らかの評価でエコーを行っています。患者さんのフィジカルアセスメントをする際,救急の場でのFAST,ベッドサイドでのPOCUS(point-of-care ultrasonography),PICC(末梢挿入式中心静脈カテーテル)や動脈カテーテル挿入などの手技においても,いつでもどこでもエコーは必須です。

●エコーは医師や臨床検査技師が使用するもの?
 私がエコーを使い始めた当初,看護師のために書かれた教材はなく,医師や臨床検査技師の方々から技術を教えてもらい,医学書を読んで理解を深めました。特定行為研修が始まり,多くの看護師が研修を受ける今,非侵襲的かつ簡易的でありながら,必要な情報を的確に得ることができるエコーを使う看護師は今後ますます増えていくと考えます。
 一方で,まだ多くの看護師が「エコーは医師や臨床検査技師が使用するもの」と考えているのではないでしょうか。残尿測定に看護師が使用することは一般的であっても,ほかのフィジカルアセスメントや看護技術の1つとしてエコーを行う文化はまだ根付いていません。
 しかし,本書のタイトルは「看護のためのはじめてのエコー」です。まさに看護師のためにつくられたエコーのテキストであり,私たち看護師の世界にエコーという新しい風が吹き始めたことを感じる,待ちに待った1冊ではないでしょうか。
 約160ページの内容は,実に多彩です。超音波(エコー)検査の基本である原理や特徴から始まり,各種プローブの位置と画像の読み取りを非常に丁寧に教えてくれます。その上でいよいよ,幅広い看護実践の場での目標別の描出方法の提示があり,その内容は便秘や褥瘡,膀胱や経鼻胃管の留置確認など,全てが臨床に徹した実用的な内容です。さらにはDVT(深部静脈血栓症)の確認や心臓の収縮能,胸水,腹水や心嚢液の評価までが提示されています。

●看護師だからこそ気が付くことがある
 毎日,保清行為を行う看護師だからこそ,患者さんの体幹のむくみや両下肢の左右差に誰よりも早くに気が付くことができます。そこでDVTを疑い,エコーを素早く当てて,血栓評価ができれば肺血栓塞栓症を未然に防ぐことができるかもしれません。
 昨晩から酸素需要が増した心不全の患者さんがいたらVolume評価をエコーで行い,下大静脈や胸水,腹水,Bラインの確認をし,その所見をもって医師に心不全の悪化を報告できるでしょう。
 また,静脈血管確保が難しくて何回も血管穿刺をされている患者さんがいたら,エコーで血管描出をして1回で穿刺を成功させることができ,苦痛な思いを減らすことができるでしょう。
 これからの看護師は,身体所見をしっかりと取り,フィジカルアセスメントを行い,今何が患者さんに起こっているのかをきちんと評価する能力が求められます。遠くない未来に,臨床の場でエコーが,いつも持ち歩く聴診器のように当たり前に使われている姿が容易に想像できます。本書が看護の世界に新たな一石を投じる1冊になることを確信しています。

(「看護管理」Vol.33 No.10 掲載)


患者さんにもチーム医療にもなくてはならないツールに
書評者:藤井 晃子(名大病院看護部長)

 『フィジカルアセスメントに活かす 看護のためのはじめてのエコー』というタイトルをご覧になって,「えっ,看護師がエコーを実施してもいいの?」と思う方が多いかもしれません。ところが実は,看護師が超音波検査を実施してもよいのです。なぜならば,超音波検査はある特定の医療職の独占業務ではないからです。

 「超音波検査を行うなんて,看護業務が増えてしまう」と思っている方,2040年までに生産年齢人口の減少が指摘されている中で,今後,医療界においてもタスクシェアリング,タスクシフトが進み,看護師の役割はさらに拡大していきますよ。これにより,看護師自身が日常的に超音波機器を手にする時代が到来するのではないでしょうか。その時まで,待っていてよいのでしょうか。いいえ,看護職能集団は常に先見の明を持ち,患者さんにとって良い看護サービスを実践していく必要があります。

 この本の「はじめに」には,看護師自身が超音波検査を実施していくに当たり,皆さんの心配を解消できるよう,法的に問題がないこと,超音波検査自体は難しくないということが書かれています。

 次に,基本を押さえるための知識,超音波機器の使用方法が解説されています。こちらは,画像・イラストが入っているので,非常に読みやすく,わかりやすくなっています。また,QRコードから動画(一部静止画)の閲覧も可能です。ここまで読んでいただければ,「私でもできそう」と思っていただけるのではないでしょうか。

 最終章は,実際の事例を用い,超音波検査画像や背景から病態を考えることができます。具体的には,それぞれの症状から胸部,腹部,下肢の超音波検査を実施する際の目的と手技の説明があり,最終的にどのような病態であるかが説明されています。そのため,フィジカルアセスメント力の向上につながることが期待できます。

 このように,この本は,看護師が超音波検査を初めて実施する際に必要な知識が,わかりやすく説明されています。

 先にも述べたように,今後医療界の人口は減少していき,チーム医療の必要性はさらに高まります。その時に,看護師が超音波検査の実施が可能となれば,患者さんにとっても医療者にとってもメリットがあり,また看護師自身のスキルアップにもなるでしょう。

 ぜひとも本書を活用していただければと思います。

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付録Web動画のご案内

身体の各部位を超音波機器で観察している動画を付録としてWeb上に収載しました。
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