過量服薬による致死性の高い精神科治療薬(引地和歌子)
寄稿
2016.03.07
【視点】
過量服薬による致死性の高い精神科治療薬
引地 和歌子(東京都監察医務院・監察医)
国内外において,過量服薬は公衆衛生上の重要な問題であると認識されている。過量服薬とは,急性に身体・精神的な害を及ぼすほど,医薬品を過剰に摂取することである。過量服薬の主要な原因薬剤は,抗不安・睡眠薬や抗うつ薬等の精神科治療薬であることがさまざまな分野から報告されているものの,どの精神科治療薬の致死性が高いかは明らかでなかった。今回われわれは過量服薬による致死性の高い薬剤を同定することを目的に,研究を行った1)。
方法としては,2009年から2010年に,東京都23区において過量服薬によって死亡した335人と,東京都内において処方を受けた3350人を比較対象とし,症例対照研究を実施し,致死性の高い精神科治療薬の同定を試みた。症例群は東京都監察医務院における取扱事例,対照群は日本調剤株式会社における調剤事例とした。対照群は,症例群と背景要因(性別,年齢,死亡年月/調剤年月,診療科)が類似するよう,マッチングを行った。
その結果,対照群と比較し,症例群の処方割合の高い薬剤,すなわち過量服薬による致死性の高い薬剤は,ペントバルビタールカルシウム[ラボナ®](0.1% vs. 14%;オッズ比104),クロルプロマジン・プロメタジン・フェノバルビタール[ベゲタミン®](1% vs. 30%;オッズ比43),レボメプロマジン[レボトミン®/ヒルナミン
この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
ピットフォールにハマらないER診療の勘どころ
[第22回] 高カリウム血症を制するための4つのMission連載 2024.03.11
-
対談・座談会 2025.02.04
-
医学界新聞プラス
[第3回]冠動脈造影でLADとLCX の区別がつきません……
『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.05.10
-
医学界新聞プラス
[第1回]ビタミンB1は救急外来でいつ,誰に,どれだけ投与するのか?
『救急外来,ここだけの話』より連載 2021.06.25
最新の記事
-
2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する カラー解説
創薬における日本の現状と国際動向寄稿 2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する
国民に最新の医薬品を届けるために対談・座談会 2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する
医薬品開発の未来を担うスタートアップ・エコシステム/米国バイオテク市場の近況寄稿 2025.01.14
-
新年号特集 医薬品開発の未来を展望する
患者当事者に聞く,薬のことインタビュー 2025.01.14
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。