医学界新聞

連載

2014.05.12

モヤモヤよさらば!
臨床倫理4分割カンファレンス

生活背景も考え方も異なる,さまざまな人の意向が交錯する臨床現場。患者・家族・医療者が足並みをそろえて治療を進められず“なんとなくモヤモヤする”こともしばしばです。そんなとき役立つのが,「臨床倫理」の考え方。この連載では初期研修1年目の「モヤ先生」,総合診療科の指導医「大徳先生」とともに「臨床倫理4分割法」というツールを活用し,モヤモヤ解消のヒントを学びます。

■第5回 患者は家に帰りたいけれど,家族の負担は限界…?

川口 篤也(勤医協中央病院 総合診療センター副センター長)


前回からつづく

大徳 モヤ先生,いよいよ総合診療科のローテだけど,どう?

モヤ 実は退院後の療養先についてちょっと迷っている患者がいて。来週家族,ケアマネジャー,訪問看護師など,今まで在宅でかかわってきたメンバーが集まって話し合うことになってるんです。僕は家に帰してあげたいんですけど……あ,そこで4分割カンファレンスをするわけにはいかないですよね。

大徳 今後の方針を目的とした話し合いであれば,家族や本人が4分割カンファレンスに参加するのも実は“アリ”なんだよ。今回は療養先をどうするかという話し合いだし,問題ないと思うな。


(1)医学的適応

大徳 (参加者全員の自己紹介後)今日のカンファレンスは,Fさんと同居しているご家族にも参加していただいて,Fさんの今後の療養先をどうするか,話し合いたいと思います。

モヤ Fさんは,今年3回目の肺炎で入院となりました。肺炎治療は終了しましたが,喀痰の量が多く,自力で排痰できないこともあり吸痰が必要な状況です。前回退院時から喀痰量は多いので,家で吸痰できないと,またすぐ肺炎を起こす可能性が高いと思います。

看護師 現在,1日3回は吸痰しています。

大徳 家では吸痰は可能なんですか?

看護師 ご家族に吸痰の練習をしてもらっているところです。

次男 なんとかできると思います。

次男妻 ……はい。

モヤ (ん? お嫁さんはなにか言いたそうだぞ……)

(2)患者の意向

モヤ Fさんは家に帰りたいと話しています。お孫さんのピアノ発表会を毎年楽しみにしていると言ってました。

デイサービス職員 もう少しでデイサービス通所1000回なので,入院前は,なんとか1000回をめざしたいとお話されていました。

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