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『予後予測って結局どう勉強するのが正解なんですか?』より

連載 竹林崇

2026.01.19

限られた時間の中で最適なリハビリテーションを対象者に届けるために,「予後予測」の視点はセラピストにとって欠かすことのできない実践知です。『予後予測って結局どう勉強するのが正解なんですか?』では,漫画や会話形式による導入から,臨床現場のエピソードも織り交ぜながらの解説が展開されることで,初学者でもスムーズに予後予測を学ぶことができます。予後予測について学んでみたいものの難しそうでなかなか食指が伸びない……という方におすすめできる一冊です。

「医学界新聞プラス」では,本書の3つのChapter「予後を予測する意味ってなんだろう?」「予後予測に関する統計用語が難しい」「予後予測を行うために文献の検索や使いかたに慣れておこう」より内容を一部ご紹介します。



 

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Lesson 1 四の五の言わず、まずは予後予測をやってみよう

Example Image(三隈)大学の同期とこの前飲みにいったんですよね。その際に予後予測の話になって…。すると、そんなのやっても意味ないでしょ? と、予後予測を一度もやったことない子に言われちゃったんですよね。
Example Image(竹林)なるほど。専門職は、自分自身の信念や正義を多かれ少なかれ持っているものだと思うよ。だから、それと異なるものは「異物」と認識して、実際にやってみることもなく「意味ない」とか「間違ってる」などと拒絶してしまうってことはあるかもしれないね。
Example Image やってみないと、良い点も悪い点も見えてこないと思うんですが…。
Example Image そうだね。だからこそ、一度やってみるというのはとても重要なことだと思うよ。やってみて、良い点があれば継続すればいいし、悪い点があれば修正する、もしくは実施しないという選択をすることも大事だからね。
Example Image (桐島)やったことのない人たちに、まずはどのような手順で予後予測を進めればよいのかを説明するにはどうしたらよいでしょう?
Example Image じゃあ、実際の予後予測の手順について解説していこうか。まずは、図1の流れに沿って説明していくね。
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図1│予後予測の具体的な手順
評価の際に対象者の目標が変更になった場合は、最初の項目からもう一度予後予測を実施し直すことが必要になる。
Example ImageExample Image はい!
Example Image 最初に何に対して予後予測を行うかを決めないといけないね。脳卒中発症後の対象者さんなら、上肢機能、日常生活活動(ADL)の能力、在宅復帰、職場復帰などがその対象になると思う。
Example Image 特に、脳卒中発症後の対象者さんだと、上肢機能、ADLの予後予測は必須ですよね。
Example Image 確かに、対象者さんにとって必要なリハビリテーションプログラムを選択・構築するうえで必須と考える障がいの回復に関する予後予測を行うのが王道だよね。
Example Image それ以外にも何か考えないといけないことがありますか?
Example Image 僕ら療法士は対象者さんのリハビリテーションに関わるわけだから、彼らがどうなりたいかに寄り添った予後予測ができるとなおよいと思うよ。
Example Image というと、目標設定と関係があるということですか?
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Example Image さすが、勘がいいね。対象者さんと一緒に目標設定をした際に出てきた項目に関連する検査を利用した予後予測法を選択するのは重要だよね。
Example Image なるほど。
Example Image たとえば、対象者さんが「家族に迷惑をかけたくない。家庭内では、自分のことは自分でやりたいの」とおっしゃって、トイレ動作や移動・移乗の自立を求められたら、介助量を測定するFunctional Independence Measure(FIM)を使った予後予測法を選択し、その結果から方針を決めていくことになるよね。
Example Image つまり、対象者の自己実現に関連する予後予測を漏らしてはいけないということですね。
Example Image そのとおり。つまり、医療従事者側が考えた予後予測だけでは、リハビリテーションにおいてとても重要な「対象者の意向」というものが抜け落ちている可能性があるんだ。だからこそ、目標設定とリンクさせて、予後予測を選び、実施していく必要がある。これは予後予測に限らず、すべての基本だと思う。
Example Image 目標とリンクさせる。当たり前のことですけど、はっと気づかされました。
Example Image 次に大切なのは、たとえば、脳卒中発症後の対象者さんが「両手で何か活動をしたい」とおっしゃった場合、麻痺手の機能予後を予測すると思うんだ。三隈くんは、手の評価をするためにどんな検査を使う?
Example Image 脳卒中発症後の対象者さんの手の麻痺に関する検査だと、養成校や実習中ではブルンストローム(Brunnstrom Recovery Stage;BRS)とステフ(Simple Test for Evaluating Hand Function;STEF)をとるように言われましたが、いまは、Fugl-Meyer Assessment(FMA)の上肢項目やAction Research Arm Test(ARAT)などもとるようにしています。
Example Image いいね! じゃあ、FMAやARATといった検査をなぜ追加して評価しているの?
Example Imageこれらの検査を定期的にとるようにと指導してもらいました!
(Lesson1の続きは書籍をご覧ください)

解説 目標設定とEBPについて知っておこう

1 目標設定

 予後予測は「将来どの程度回復し得るか」を見立てる作業ですが、それは単に回復の可能性を示すだけでは不十分です。予測を具体的な目標に落とし込むことで、はじめて臨床の実践に活かすことができます。
 目標を伴わない予測は抽象的な数値でしかなく、その数値からは患者・家族や医療チームが求める、患者の幸福につながるような情報にはなり得ません。また、目標が明らかでなければ、患者にとって意味のある予後予測を行うために、どのような評価を取得するかも不明確になり、大切な評価を取り忘れることもあるかもしれません。

 たとえば、ある患者が、「友人に会うために一人で外出がしたい」「行きつけの喫茶店に行くためには、1分間で信号が青から赤に変わる30mの横断歩道を渡らないといけない」といった具体的な目標があるならば、歩行を予測するために必要な評価を取得したうえで、実際に予後予測を行い、リハビリテーションの計画に活かすことになるでしょう。

 このように、予後予測を行ううえで、目標設定は切っても切り離せないものです。では、目標設定を行うことが対象者にどのような影響を及ぼすか理解を深めていきましょう。

1──リハビリテーションにおける目標設定とは

 まず、リハビリテーションにおける目標設定とはどういったものなのでしょうか。Lockeら 1) は「目標は人の価値が状況に特化した状況」と述べています。ここでいう「価値」とは、単なる金銭的価値や抽象的な善悪の価値ではなく、その人が人生や生活において「大事だ」と感じていること、優先していることを指します。

 したがって、「健康を維持したい」「よい仕事をしたい」「競技が上手くなりたい」といったものが価値となります。ただし、そういった価値そのものは抽象的ですが、それが各個人の具体的な状況や場面、すなわち「いつ」「誰が」「どこで」「何を」「なぜ」「どのように」といった要素に合わせ、解像度を上げていくことで、その価値は「目標」へと変わっていきます。

2──目標設定が及ぼす影響

 では、リハビリテーションにおいて、目標設定を実施することで対象者自身、あるいはその周りにどういった影響があるのでしょうか。Crawfordら 2) は、スコーピングレビューにおいて、目標設定は対象者のモチベーション(動機づけ)とアドヒアランス(リハビリテーションに関わるルールの遵守率、セッションへの参加率や自主練習の履行率など)に影響を及ぼすと述べています。さらに、Levackら 3) は、システマティックレビューとメタアナリシスにおいて、目標設定は、患者自己報告型の質問紙によるQOL、活動におけるパフォーマンス、アドヒアランス、自己効力感に影響を及ぼすことを示しています(表1)。これらの研究結果のように、目標設定はリハビリテーションを行う対象者に良好な影響を与えるといわれています。

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表1│目標設定が評価に与える影響
エビデンスGRADEの「低い」は「今後行われる研究が重要な影響を与える可能性が非常に高く、将来結果が変更する可能性がある」ことを意味し、「とても低い」は「この結果について非常に不確かな要素が多い」ことを意味する。なお、*は有意な差があったものを記載している。

(解説の続きは書籍をご覧ください)

 

「予後予測」を通して学びを深める。臨床への自信につながる。

<内容紹介>
限られた時間の中で、最適なリハビリテーションを対象者に届けるために──療法士にとって「予後予測」の視点は、欠かすことのできない実践知といえる。本書は、漫画や会話形式による導入から、臨床現場のエピソードも織り交ぜつつ解説を施すことで、初学者もスムーズに学びが深まる構成に。著者の前著『 臨床5年目までに知っておきたい予後予測の考えかた』と併せて読むことで、予後予測の理解と活用の幅を広げることができる。

目次はこちらから

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