医学界新聞プラス

  • 医学
医学界新聞プラス 

『誰も教えてくれなかった皮膚科治療薬の選びかた・使いかた』より

連載 松田 光弘

2026.10.01

本書は好評を博した『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』の待望の続編! 今回は皮膚科治療をテーマに皮疹の背景にある病態から治療薬選択のコツと使いかたを徹底解説した一冊です。外用薬だけでなく,経口薬・注射薬・ドレッシング材まで網羅。前作同様指導医と研修医の対話形式で,実際の症例をもとに学ぶことができます。

「医学界新聞プラス」では、本書から皮膚潰瘍治療薬に関する項目をピックアップし,4週にわたりご紹介します。

3_図1問題.png
図1 A:水分量が適正な浅い傷, B:水分が過剰な傷, C:乾燥した傷
外用薬を基剤で分類
1_icon02.png 次は,もう少し詳しく外用薬の選びかたを解説するよ.前回説明した3つの創傷をもう一度見てみよう 図1 .Aは水分量が適正な浅い傷,Bは水分が過剰な傷,Cは乾燥した傷だね.
1_icon01.png Aは油脂性基剤,Bは水溶性基剤,Cは乳剤性基剤を使えばいいということでしたね.具体的にはどれを選べばいいんですか?
1_icon02.png 明確な指標はないんだけど,個人的な考えを解説しよう.


 剤形の選択がわかったところで,次にどの薬剤を使用するのかを考えていきましょう.とはいえ,皮膚潰瘍治療薬は盲検化のランダム化比較試験が難しいこともあり,明確なエビデンスが乏しいのが現状です.そのため,薬剤の選択は個々の好みによるところが大きいのですが,私見も含めて解説していきます.

①油脂性基剤(水分を保つ薬剤)


 油脂性基剤の製剤は大きく3つに分類することができます.1)薬効成分を含まない白色ワセリン,2)抗菌薬が配合されたゲンタマイシン硫酸塩軟膏,3)創傷治癒を促進させる成分が配合された亜鉛華軟膏,ジメチルイソプロピルアズレン軟膏,アルプロスタジルアルファデクス軟膏です(表1).それぞれについて見ていきましょう.

3_表1.png
表1 主な油脂性基剤の一覧

1)白色ワセリン
 油脂性基剤の外用薬には様々な薬効成分が含有された製剤があります.とはいえ,創面の保護と保湿効果を期待して使用するなら,薬効成分を含まない白色ワセリンで十分と個人的には考えています.

Point 1
油脂性基剤は薬効成分を含まない白色ワセリンでよい


2)抗菌薬
 油脂性基剤の中で最も使用されているのは抗菌薬のゲンタマイシン硫酸塩軟膏で,一番なじみがある外用薬なのではないでしょうか.もちろん創面の保護と保湿の効果はありますが,抗菌薬による創感染の予防効果を期待したいところです.
 ところが,1,249か所(922例)の手術創を対象としたランダム化比較試験1)によると,ワセリンと抗菌薬の術後感染率に有意な差はなく,感染予防効果のエビデンスは乏しいようです.
 また,長期間の使用によって耐性菌が出現するリスクもあるため,日本皮膚科学会の『創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)』2)には,治療に時間がかかる深い創傷に対しては「外用抗菌薬を用いないほうがよい」と記載されています.
 外来に常備してあるのがゲンタマイシン硫酸塩軟膏だけというとき(そんな状況も少なくありませんが)は使用せざるをえませんが,なるべく短期間にとどめる必要があるでしょう.
 

3)創傷治癒促進薬
 創傷治癒を促進させる成分が配合された製剤は,ワセリンよりも治療効果は高そうに思われますが,ワセリンと比較したエビデンスレベルの高い研究はなさそうです.そのため,どこまで有効なのかわからない点には留意しておく必要があるでしょう.
 ちなみに,亜鉛華軟膏には添加物としてソルビタンセスキオレイン酸エステルが含有されていて,若干の吸水作用を持ちます.また,ジメチルイソプロピルアズレン軟膏の添加物であるラノリンには若干の補水作用があり,この2剤は細かい水分量の調整を目的に使用することがあります3).

②水溶性基剤(水分を減らす薬剤)


 水溶性基剤の外用薬は大きく,1)ヨウ素を含有した製剤3種と,2)ヨウ素を含有しない製剤2種に分類することができます(表1).

広告
3_表2.png
表2 水溶性基剤の一覧

 これらの中で吸水能が高いのは精製白糖・ポビドンヨード軟膏,抗菌能が高いのはカデキソマー・ヨウ素軟膏となっています(図2).

3_図2.png
図2 吸水能と抗菌能の比較
〔Noda Y, Fujii S:Critical role of water diffusion into matrix in external use iodine preparations. Int J Pharm 394:85-91, 2010 をもとに作成〕


1)ヨウ素製剤
 水溶性基剤で代表的なのはヨウ素を含有した3つの製剤です.これらの製剤は基剤が吸水作用を持つのと同時に,ヨウ素による抗菌作用が期待できます.加えて,添加物としてそれぞれ白糖,ポリマービーズ,吸水性ポリマーが含まれており,これらの添加物自体にも吸水作用があります.
 抗菌能と吸水能のどちらを重視するかは意見が分かれますが,抗菌能を重視するならカデキソマー・ヨウ素軟膏です.持続的にヨウ素を放出するため,長時間抗菌能が維持されるのも特徴です4).
 とはいえ,筆者が水溶性基剤を選択する際は,吸水能を重視して精製白糖・ポビドンヨード軟膏を使用することが多いです.添加されている白糖がコラーゲン産生を促して創傷治癒を促進するというデータ5)もあるのが個人的に気に入っています.
 

Point 2
水溶性基剤で吸水能が高いのは精製白糖・ポビドンヨード軟膏


2)ヨウ素を含まない製剤
 ヨウ素を含まない製剤として,水溶性基剤にポリマービーズを含有したのみのデキストラノマーペーストと創傷治癒促進作用をもつブクラデシンナトリウム軟膏があります.
 ヨウ素は肉芽組織を障害するとの意見もあり2),肉芽組織が盛り上がった段階ではヨウ素を含まないこれらの製剤のほうがよいかもしれません.


今回は油脂性基剤や水溶性基剤の薬剤を解説しました。引き続き同じ症例を用いて,次週は乳剤性基剤について学んでいきます。


参考文献

1) Smack DP, Harrington AC, Dunn C, et al:Infection and allergy incidence in ambulatory surgery patients using white petrolatum vs bacitracin ointment. A randomized controlled trial. JAMA 276:972-977, 1996[PMID: 8805732]

2) 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン策定委員会(褥瘡グループ),藤原浩,入澤亮吉,他:日本皮膚科学会ガイドライン 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―2 褥瘡診療ガイドライン(第3版).日本皮膚科学会雑誌 133:2735-2797, 2023. CRID 1390298200989295488

3) 端本宇志,奥野聡:軟膏処置.Monthly Book Derma. 311:39-48, 2021[NAID:40022661118]

4) 高木誠司,牧野太郎,小坂正明,他:慢性創傷におけるヨウ素製剤の細菌制御効果―精製白糖・ポピドンヨードとカデキソマー・ヨウ素製剤との比較.日本褥瘡学会誌 11:528-532, 2009

5) 中尾裕史,坪井良治,小川秀興:白糖・ポビドンヨード混合製剤の創傷治癒促進メカニズム―培養細胞および動物モデルを用いた解析.Therapeutic Research 23:1625-1629, 2002

 

皮疹の背景にある病態、治療薬選択のコツと使い方を徹底解説!

好評を博した『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』の続編。今回は皮膚科治療をテーマに皮疹の背景にある病態から治療薬選択のコツと使いかたを徹底解説。外用薬だけでなく、経口薬・注射薬・ドレッシング材まで網羅。前作同様指導医と研修医の対話形式で、実際の症例をもとにわかりやすく解説した。

目次はこちらから

タグキーワード

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook