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『誰も教えてくれなかった皮膚科治療薬の選びかた・使いかた』より

連載 松田 光弘

2026.09.17

本書は好評を博した『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』の待望の続編! 今回は皮膚科治療をテーマに皮疹の背景にある病態から治療薬選択のコツと使いかたを徹底解説した一冊です。外用薬だけでなく,経口薬・注射薬・ドレッシング材まで網羅。前作同様指導医と研修医の対話形式で,実際の症例をもとに学ぶことができます。

「医学界新聞プラス」では、本書から皮膚潰瘍治療薬に関する項目をピックアップし,4週にわたりご紹介します。

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図1 乾燥した皮膚潰瘍
傷は乾燥させるべきなのか?
1_icon01.png 先生,皮膚科医は傷の治療のとき,外用薬とドレッシング材を使い分けているようなんですが,どう選べばいいんですか?
1_icon02.png 使い分けの前に,まず創傷治療の基本となる外用療法について理解しておくのがいいと思うよ. 図1 の皮膚潰瘍に使用する外用薬はどれがいいかわかるかな?
1_icon03.png うーん…….とりあえず抗菌薬が入ったゲンタマイシン硫酸塩軟膏でしょうか?
1_icon04.png まず創傷治療の原則について勉強する必要がありそうだね.
1_icon05.png お願いします.
1_icon04.png 傷は乾燥させたほうがいいか,湿らせたほうがいいかは知ってるかな?
1_icon01.png 乾燥させずに湿らせたほうがいいんですよね.
1_icon04.png そうだね.昔は,傷は乾燥させて治すと言われていたんだけど,最近は変わってきたんだ.
1_icon01.png じゃあ,乾かないように十分に水分を与えないといけないですね.
1_icon02.png でも,湿潤させすぎもよくないんだよ.重要なのは「適度な」湿潤環境なんだ.


 ここからは外傷や褥瘡などの創傷の治療について解説します.創傷の局所療法に用いるものには,大きく分けて外用薬と医療材料(ドレッシング材)があります.使い分けについては後で解説するとして,まず外用薬(皮膚潰瘍治療薬)を見ていきたいと思います.
 はじめに創傷治療の考えかたを理解しておきましょう.従来,「傷は乾燥させて治すもの」と考えられてきました.ところが最近は,「乾燥が創傷治癒を遅延させる」という考え方が一般化してきています.その理由は滲出液です.
 皮膚に傷ができると,傷口から滲出液が出てきます.近年,この滲出液の中には,治癒を促進する細胞増殖因子やサイトカインなどが多く含まれていることがわかってきました.つまり,滲出液を乾燥させると傷の再生には不利になるわけです.そのため傷を湿潤させるのが推奨されるようになってきたのです.
 ですが,何が何でも湿潤がいいというわけではありません.機器を用いて創面の水分量を測定すると,治癒傾向にある創面の水分含有率は70~80%でした1).これを超えるような過剰な滲出液は,組織の浮腫を引き起こして創傷治癒を阻害してしまいます.また創周囲の皮膚の浸軟も,創傷の上皮化が遅延する原因となるのです(図2

1_図2.png
図2 適切な適切な浸潤環境

 というわけで,滲出液が多くても,少なくても,創傷治癒は阻害されてしまいます.したがって創傷治癒促進のためには,ただ湿潤させればいいというわけではなく,滲出液を適度にコントロールする必要があるわけですね.

Point 1
滲出液は多すぎても少なすぎてもダメ

 

なぜ剤形が重要なのか?
1_icon01.png 水分量をコントロールするのが創傷治療のポイントなんですね.でも,外用薬でどうやってコントロールすればいいんですか?
1_icon04.png 重要なのは外用薬の剤形なんだ
1_icon06.png 剤形って,軟膏とかクリームとかのことですよね.ステロイド外用薬のときは,とりあえず軟膏を使っておけばいいと聞きましたけど…….
1_icon02.png ステロイドを塗るような湿疹病変と違って,潰瘍病変は表皮が欠損しているから剤形の影響を大きく受けるんだ.そのあたりを詳しく説明しよう.
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 ステロイド外用薬の解説で外用薬の剤形を紹介しました(本書24頁「ステロイド外用薬の選びかた②」参照).主に軟膏,クリーム,ローションの3つの剤形があり,とりあえず刺激の少ない軟膏を使用しておけばよいということでしたね.ですが,創傷治療では創部の状態に応じて剤形を細かく使い分ける必要があります.それはなぜなのでしょうか.図3を見ながら解説していきます.
 皮膚には水分調節などのバリア機能を持つ表皮が存在するため,水分量は一定に保たれています.そのため表皮が保たれている湿疹病変では,剤形の違いが皮膚の表面に大きく影響することはありませんでした.ところが創は表皮を欠いた組織であり,バリア機能が欠損しています.つまり創傷治療においては,外用薬の剤形が創面の状態を大きく変化させるのです2)

1_図3.png
図3 バリア機能と剤形の影響

 さて,ここから剤形について詳しく説明していきますが,ステロイド外用薬とは少し分類法を変える必要があります.図4を見てください.まず創傷にはローションは使わないので,基本的に軟膏とクリームの2種類になります.さらに軟膏は,水分への影響から油脂性軟膏と水溶性軟膏の2種類に分けます.つまり,①油脂性基剤(油脂性軟膏),②水溶性基剤(水溶性軟膏),③乳剤性基剤(クリーム)の3つに分類するということですね.

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図4 剤形の分類法の違い
Point 2
外用薬を3つに分けて考える


 それぞれの基剤の見た目の違いは以下の通りです(図5).外用薬を使用する際に確認してみてください.

1_図5.png
図5 3種類の基剤(A:油脂性基剤,  B: 水溶性基剤, C:乳剤性基剤)

 それでは,それぞれの基剤の特徴を見ていきましょう.

1)油脂性基剤
 油脂性基剤は創面を外部刺激から保護し,水分の蒸発を防ぐ保湿作用も持ちます.そのため,浅い傷や創面の水分量が適切な創では油脂性基剤が適しています.

2)水溶性基剤
 水溶性基剤の成分であるマクロゴールは,水に溶けて浸透圧を生じさせます.この浸透圧の作用で創面の水分を吸水し滲出液を除去することができるのです.したがって,創面の水分量が多いときに適しています.

3)乳剤性基剤
 乳剤性基剤は水分を多く含むため,補水を目的として使用します.つまり創面の水分量が少ないときに適した基剤です.


今回はそれぞれの剤形の特徴を学びました。引き続き同じ症例を用いて,次週は剤形の選択方法について検討していきます。

 

参考文献

1) 古田勝経:褥瘡創面の水分含有率測定に基づく保存的治療.治療 79:2345-2352, 1997. [NAID:50004732961]

2) 磯貝善蔵: 皮膚科医主導型褥瘡診療. 臨床皮膚科 67:142-146, 2013.[NAID:40019685256]

 

皮疹の背景にある病態、治療薬選択のコツと使い方を徹底解説!

好評を博した『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』の続編。今回は皮膚科治療をテーマに皮疹の背景にある病態から治療薬選択のコツと使いかたを徹底解説。外用薬だけでなく、経口薬・注射薬・ドレッシング材まで網羅。前作同様指導医と研修医の対話形式で、実際の症例をもとにわかりやすく解説した。

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