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第23回日本臨床腫瘍学会学術集会の話題より

取材記事

2026.04.07

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●写真 座長を務めた学術集会長 田村 研治氏

第23回日本臨床腫瘍学会学術集会が3月26~28日,田村研治会長(島根大学病院)のもと,「Medical Oncologists for Cancer Patients」をテーマにパシフィコ横浜(横浜市)で開催された。

『医学界新聞プラス』では,会長企画シンポジウム「<新専門医制度承認記念企画>がん薬物療法専門医――現状と未来」(座長=田村氏,名古屋大学病院・安藤雄一氏)の模様を報告する。


◆がん薬物療法専門医制度の歩み 
初めに登壇した座長の田村氏は,がん薬物療法専門医制度の沿革を紹介するとともに,今後育成すべき専門医像について発表を行った。2002年に同制度が設立されて以降,認定者数は着実に増加しており,現在では約1800人の専門医が誕生しているという。 2025年,がん薬物療法専門医は日本専門医機構よりサブスペシャリティ領域での承認を受け,新専門医制度の下で運用されることとなった。現在は従来の学会認定の専門医と同機構認定の専門医が併存する移行期にある。 がん薬物療法専門医に求められる役割として田村氏は,「臓器横断的にがん薬物療法を理解し,患者の病態や社会的背景を踏まえて最適な治療を提案できる能力」を挙げた。臨床試験から得られるエビデンスを理解するだけでなく,高齢者や併存疾患を抱える患者など臨床試験の対象外となるケースも多い実地臨床において,EBMを実践しつつも個々の患者に適した治療を提案する応用力の重要性を強調した。

◆制度創設の背景 
続いて福岡正博氏(和泉市立総合医療センター)は,日本臨床腫瘍学会 専門医制度委員会の初代委員長として制度設計に尽力した立場から,日本臨床腫瘍学会の創設および,がん薬物療法専門医制度の立ち上げに至った経緯を振り返った。
日本では長らく外科医が中心となってがん治療を担ってきた歴史があり,がんの薬物療法を専門とする医師の育成体制は十分とは言えなかったと氏は当時を振り返る。こうした状況の中,がん薬物療法専門医制度の検討が開始され,制度創設に至った。
氏は制度創設当初に掲げた理念として,がん薬物療法専門医が「がん医療の司令塔」としてチーム医療を主導し,臨床試験の推進や緩和ケアの実践,患者・家族への支援などを担う存在であることを紹介した。
さらに現在の専門医配置についても触れ,がん診療連携拠点病院の約40%で専門医が不在であるなど,地域や施設間での偏在が課題であると指摘。急速に進歩するがん薬物療法に対応するためにも,がん薬物療法専門医の育成と配置の充実が重要であるとの認識を示した。

◆がん治療認定医との関係 
がん薬物療法専門医と「がん治療認定医」との関係について説明したのは,日本がん治療認定医機構理事長の大江裕一郎氏(野村病院)だ。2002年のがん薬物療法専門医制度の開始以降,がん領域の専門資格の在り方をめぐる議論を受け, 2005年に日本医学会はがん診療の基盤的知識を担うがん治療認定医を土台とし,その上に各領域の高度な専門性を有する専門医を積み上げるという二段階の制度を提案した。
現在,がん治療認定医は約1万8000人に達している。氏は,がん治療認定医ががん診療にかかわる医師全体を対象とする基盤的資格であるのに対し,がん薬物療法専門医は薬物療法を専門とする医師を対象とした専門資格であり,両資格の取得に制度上の必須関係はないと説明。
今後の制度の在り方については,現行制度を維持する案のほか,がん薬物療法専門医資格にがん治療認定医の取得を必須とする案なども示し,さらなる検討の必要性を指摘した。

◆大学の役割と人材育成 
「専門医養成の中核として大学の腫瘍内科部門の役割は大きい」。こう発言するのは,石岡千加史氏(JR仙台病院)である。がん薬物療法の進歩に伴い,全身性疾患としてのがんに対する内科的治療の重要性が高まっており,大学に腫瘍内科部門が設置される例は増えているものの,腫瘍内科を有する大学は依然として約6割にとどまるという。また,がん薬物療法専門医の数には地域差があり,人口当たりの専門医数は岡山や石川,島根などで多い一方,北海道や東北,九州の県では不足が目立つと指摘。
さらに大学では若手医師の研究時間の不足や待遇面の課題もあり,研究・教育・臨床を両立できる環境整備の必要性を訴えた。

◆患者のための専門医制度 
続いて,南博信氏(神戸大)が日本臨床腫瘍学会 の求めるがん薬物療法専門医像について,安藤氏が「がんプロフェッショナル養成事業」とがん薬物療法専門医の現状と展望について紹介した。がん薬物療法専門医制度創設から20年以上が経過した現在,がん医療を取り巻く環境は大きく変化している。本シンポジウムでは,専門医制度は医師のための資格制度ではなく,「患者のための制度」であることが改めて強調された。
がん薬物療法の高度化とともに,腫瘍内科医に求められる役割は今後さらに広がると考えられる。質の高いがん医療を持続的に提供していくためにも,専門医の育成体制や制度の在り方について,継続的な議論が必要であることが示された。

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