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[第1回]★1を見た夜――評価社会を生きる医療者のために
★1の向こう側
連載 寺田哲
2026.05.18
医療者であれば,一度は経験があるかもしれない。診療を終え,ふと口コミを開いた夜に,自身について綴られた★1の文章を見つけてしまうことが。
その瞬間,頭の中でいろいろなことが止まる。
何がそんなに悪かったのか。あの診療は本当にまずかったのか。説明が足りなかったのか。態度が悪かったのか。あるいは,自分が気づいていない何かを,相手は気がついていたのか。
低評価の口コミは,単なる感想以上の力を持つ。特に医療者にとって低評価は,自分の仕事の意味や誠実さに触れてくる言葉として届きやすい。だからこそ,必要以上に深く刺さる。
この連載は,そうした★1を見た夜に起きていることを,少しずつ言葉にしていくためのものである。
口コミをどう受け止めるか。なぜあれほど傷つくのか。どこまで耳を傾け,どこから距離を取ればよいのか。そもそも★1を生みにくくする診療とは何か。そうしたことを,医療者の側から考えてみたい。
ただ,最初に1つ言っておきたい。
この連載は,「口コミは無視すべきだ」と言いたいわけではない。また,「患者の声は当てにならない」と言いたいわけでもない。むしろ逆だ。口コミには,患者体験の一端が確かに表れている。だからこそ医療者は,そこに振り回されもするし,学びもする。問題は,全ての★1を同じように受け取ってしまうことなのだと思う。実際,★1の口コミを読み続けていると,そこにはいくつかの型があることに気づく。全てがクレームに分類されるわけではない。
たとえば,患者が思い描いていた診療と現実のあいだにズレが生じた期待ズレ型。
「良くなると思ったのに良くならなかった」「むしろ悪化した」という失望が中心になる結果失望型。
体験の記述よりも印象の毀損が前面に出る攻撃・操作型。
そして,診療科や職種の役割理解の違いから不信が生まれる専門性誤認型である。
もちろん,実際の口コミはもっと複雑で,きれいに分かれるわけではない。それでも,「★1にも構造がある」と見えてくるだけで,受け止め方は少し変わる。ただ怖いもの,ただ傷つくものだった口コミが,少しだけ読めるものになる。この連載では,その構造を1つずつ言葉にしていきたい。
なぜ口コミは平均を語らないのか。なぜ★1と★5ばかりが目立つのか。★1は本当に怒りから生まれるのか。そこに患者は本当にいたのか。攻撃的な口コミにはどう向き合えばよいのか。そして最後に,★1を生みにくくする診察室の設計へと話を進めたい。
★1を見た夜,私たちはつい,その一文を自身への全体評価のようにとらえてしまう。けれども本当は,そうではない。そこには,強く動いた感情の断片がある。期待,失望,不信,安心,自己正当化,注意喚起。そうしたものが,星の数と文章に圧縮されている。この連載は,その圧縮された言葉を,もう一度ゆっくりほどいていく試みである。
次回はまず,口コミとはそもそも何なのか,そしてなぜ「普通の診療」に対する経験が口コミとしてほとんど書かれないのかというところから始めたい。★1の意味を考えるには,まず口コミという場の偏りを知っておく必要があるからである。

寺田 哲(てらだ・さとし)氏 みしま痛み&リハビリクリニック 院長/医療社団法人PARC 理事長
2008年獨協医大卒。同大越谷病院(現・同大埼玉医療センター)で初期研修,麻酔科後期研修を修了。NTT東日本関東病院を経て,17年静岡リウマチ整形リハビリ病院麻酔科ペインクリニック科長。19年JCHO三島総合病院麻酔科(ペインクリニック)科長に就任する。臨床と並行して20年には株式会社OCD(22年より株式会社mediverse OCD)設立。23年にみしま痛み&リハビリクリニックを開設し現職。ペインクリニック領域を中心に臨床を行い,患者と向き合う日常の中で評価や満足度が医療者の思考に与える影響について継続的に考察している。
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