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胃がん検診のための胃X線検査マニュアル2025改訂第3版

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わが国では、胃がん検診は半世紀以上にわたりバリウムを用いた間接X線撮影法を主なスクリーニング手段として用いてきたが、その胃X線撮影法は必ずしも全国均一であるとは言えず、地域、施設、技師間の格差があることが指摘されていた。本書は検査の質をあげるための撮影法や機器の保守管理について標準的な方法を示すべく、日本消化器がん検診学会によって編纂されてきた。このたび最新の2025年版が刊行された。

編集 日本消化器がん検診学会 胃X線検診のための撮影法マニュアル編集委員会
発行 2025年06月判型:A4変頁:88
ISBN 978-4-260-05691-5
定価 3,850円 (本体3,500円+税)

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改訂第3版 序

 わが国では,バリウムを用いた胃X線検査が,胃がん検診のスクリーニング検査方法として長期にわたって実施されてきました.2016年に対策型胃がん検診として胃内視鏡検査の実施が認められてからは,胃内視鏡検診を導入する地域が年々増加しています.しかし,現在の胃内視鏡検診の多くは,受診者が個々に直接医療機関を受診する個別検診方式で提供されており,医療資源の偏在や交通手段の制約,自治体の財源などが問題になっています.一方,検診車による集団検診方式で提供可能な胃X線検診は,時間あたりの処理能力が高く,低コストで機動性にも優れており,高齢者が多く医療資源に乏しい地域などを中心に、今後も胃がん検診の重要な選択肢のひとつであり続けることと思います.
 全国で行われている胃X線検診の精度を担保するには,検査品質の全国的な均てん化が重要であり,そのためには撮影手技の標準化が必要です.古くは,本学会の前身である日本消化器集団検診学会において1974年に「間接撮影の標準方式」が発表され,1984年には「胃集検間接撮影の基準」が発表されています.さらに,高濃度・低粘性バリウムの登場や二重造影法の改良が進み,2005年には充盈法による撮影像を含む『新・胃X線撮影法(間接・直接)ガイドライン』が刊行されました.その後,NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構(以下,NPO精管構)により基準撮影法が提唱され,2011年には日本消化器がん検診学会から二重造影法単独で構成された『新・胃X線撮影法ガイドライン改訂版(2011年)』が上梓されております.本学会が策定した新・胃X線撮影法ガイドラインは,厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」や「事業評価のためのチェックリスト」などにおいて,対策型胃X線検診の標準的撮影法として位置づけられてきました.これまで,ガイドラインの策定に携わった先生方には深い敬意を表します.
 今般上梓された『胃がん検診のための胃X線検査マニュアル2025改訂第3版』は,新・胃X線撮影法の改訂版としては第3版にあたります.本改訂版では,胃X線撮影手技の解説や機器管理に加え,胃X線検査による偶発症や医療被ばく管理,さらには,胃がん検診の基本的考え方や実施手順,安全管理対策,精度管理など,従来のガイドラインでは言及されていなかった項目も取り上げております.本改訂版は,胃X線検診全般をカバーする内容となっており,こうした技術手順書はガイドラインとはせずにマニュアルとすべきなので,本改訂版は『胃がん検診のための胃X線検査マニュアル2025改訂第3版』として発刊する運びとなりました.
 本マニュアルで提示した基準撮影法I・IIでは,撮影法において2011年版ガイドラインとNPO精管構の基準撮影法との間にあった若干の相違が解消され,検診現場の実情に応じた使いやすい撮影法になっていると思います.
 胃X線検査による医療被ばくは避けがたい不利益ですが,本マニュアルでは,本学会が行った被ばく線量の全国多施設アンケート調査を基に,「基準撮影法I・IIにおける被ばく総線量のDRL値と管理目標」を提示しました.本マニュアルで提示した管理目標を参考にして,検診機関ごとに胃X線検査の被ばく線量の最適化をはかり,受診者の不利益の低減に努めていただきたいと思います.
 胃X線検診が成果を上げるには,実施主体や検診機関による厳正な精度管理が重要です.本マニュアルの第3部では,新たに胃X線検診の実施手順や精度管理について取り上げました.ここに書かれた内容は,市区町村用や検診機関用のチェックリストのベースになっていますので,実施主体の検診担当者や検診現場のスタッフ全般にもよく理解していただき,本マニュアルを参考に,厳正な精度管理の下で,質の高い胃X線検診の実施にあたっていただきたいと思います.
 本マニュアルがわが国の胃X線検診の精度向上に少しでも役立つことを期待しています.
 最後に,本マニュアルの作成に携わった編集委員各位には深謝いたします.

 2025年5月
 一般社団法人日本消化器がん検診学会
 理事長 大西 洋英

 胃X線検診のための撮影法マニュアル編集委員会
 委員長 加藤 勝章

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第1部 胃がん検診のための胃X線検査の撮影法と機器管理
 I 本マニュアルの位置づけと改訂のポイント
 II 胃X線検査の基準撮影法
  1 基準撮影法の基本的な考えかた
  2 基準撮影法で用いる体位の定義
  3 基準撮影法で用いる薬剤
   1 高濃度低粘性バリウム懸濁液
    1) バリウム懸濁液の濃度
    2) バリウム懸濁液の飲用量
   2 発泡剤
   3 鎮痙剤
  4 基準撮影法の撮影手技
   1 撮影体位と手順の基本構成
   2 基準撮影法の撮影体位と標的部位
   3 基準撮影法の撮影手順
  5 前壁撮影のコツと注意点
   1 圧迫用フトンの仕様
   2 圧迫用フトン挿入のコツ
   3 前壁撮影における良好な描出範囲
   4 前壁撮影の順序について
   5 非鉤状胃の前壁撮影の工夫
    1) 牛角胃(横胃)の場合
    2) 瀑状胃の場合
  6 透視観察と追加撮影
   1 胃X線検診における透視観察
    1) 透視観察のタイミング
    2) 透視観察と被ばく
   2 胃X線検診における追加撮影の目的
    1) 死角領域(ブラインドエリア)の補完のための追加撮影
    2) 再現性の確認と質的診断のための追加撮影
  [解説] 再撮影,追加撮影,任意撮影
 III 胃X線検診に使用する機器の管理
  1 胃X線撮影装置の保守管理
   1 受け入れ時の試験
   2 日常点検(検診車・施設)
   3 定期点検(検診車・施設)
  2 撮影装置の画像特性と読影に用いる医用ディスプレイの品質管理
   1 I.I.-DRとFPD撮影装置の画像特性
   2 胃X線画像の画質と線量最適化について
   3 胃X線読影に求められる医用ディスプレイの品質
   4 胃X線検査における医用ディスプレイの品質管理

第2部 胃X線検査における医療被ばくと偶発症
 I 胃X線検査における医療被ばく線量管理
  1 胃X線検診の診断参考レベル(DRL)策定の背景
  2 胃X線検診におけるDRL策定のための多施設アンケート調査
  3 胃X線検診における医療被ばく線量最適化のための管理目標
  [解説] 放射線被ばくの身体への影響
  [解説] 胃X線検査従事者の防護
 II 胃X線検査の偶発症
  1 胃X線検査の偶発症と発生頻度
  2 過敏症
  3 バリウム誤嚥
  4 腸閉塞・腸穿孔
  [解説] バリウムによる腸閉塞・腸穿孔

第3部 胃X線検診の実施手順と精度管理~対策型胃がん検診を中心に~
 I 胃X線検診の科学的根拠
  1 胃がん検診の基本的な考えかた
  2 対策型検診と任意型検診の違い
  [解説] がん検診でよく使われる分類の説明
  3 胃がん検診としての胃X線検査の科学的根拠
  4 胃X線検診の検査精度
  5 胃X線検診の不利益
    1) 偽陰性
    2) 偽陽性
    3) 過剰診断
    4) 偶発症
  6 検診実施体制
 II 胃X線検診の実際:対策型検診を中心に
  1 胃X線検診の対象者
  2 胃X線検診の禁忌・対象除外の要件
  3 検診対象者への説明(がん検診を受診する前の一般的な内容)
  4 問診
  5 胃X線検査の実施と安全対策
  6 検査後の注意事項
  7 偶発症発生時の対応
 III 胃X線画像の読影と検診結果の判定
  1 対策型胃X線検診の読影判定
  2 胃X線画像の二重読影(ダブルチェック)
  3 モニタ診断について
  4 胃X線検診の従事者を対象とした研修会の開催
  [解説] 胃X線検診のための読影判定区分(カテゴリー分類)
 IV 受診者への検診結果の通知と精密検査の実施
  1 受診者への結果通知
  2 精密検査の項目
  3 精密検査結果・治療結果の把握
  4 精密検査未受診者への対応
 V 胃X線検診の事業評価(精度管理評価)
 VI 参考資料:帳票の例

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