医学界新聞

連載

2011.01.24

看護のアジェンダ
 看護・医療界の"いま"を見つめ直し,読み解き,
 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。
〈第73回〉
「Professional Writing」再び

井部俊子
聖路加看護大学学長


前回よりつづく

 ヴァージニア・ヘンダーソンは,1977年11月,エジンバラ大学看護学部で,「Professional Writing」(邦題「専門職業人として"書く"ことについて」)と題した講演をしている(小玉香津子訳.ヴァージニア・ヘンダーソン論文集 増補版.日本看護協会出版会,1989年,19-25頁)。ヴァージニア・ヘンダーソンの名は,『看護の基本となるもの』や『看護論』(ともに日本看護協会出版会)といった著作を通して,わが国の看護職で知らない人はいないであろう。

専門的著述

 ヘンダーソンは,専門的著述の概念を次のように示している。(1)内容が論理的かつ明快に組み立てられている――見出しおよび副見出しは主題の範囲と展開の領域を示すものであること。(2)内容が,関連文献についての知識,主要な出版物,特に適切な研究論文を選択する能力,また正しい引用方法を正確に用いる能力を反映していること。(3)内容が他の専門家のものとともに著者自身の経験,判断,意見を反映していること。(4)表現様式は明快で,直接的であり,専門用語や虚飾,"混乱"などがないこと。(5)本文をわかりやすくする,あるいは説明するのに役立つような表・グラフ・図・写真が使われており,また場合によっては,これと同じ目的で視聴覚教材や追加文献の提示がなされていること。

 とりわけ,「著述のわざを学びとるにつれて,私たちはごたごたや余分やくり返しに気づくので文体は向上します。(中略)大きな声を出して文章を読んでみると――これはぜひおすすめしたい練習法です――特によくわかるでしょう」という記述が参考になる。さらに,「動詞を能動態で使うことを,長い言葉よりは短い言葉を使うことを,明確で,かつ首尾一貫していることを,また形容詞や副詞を省くこと」を強調している。

 私が,ヘンダーソンの「Professional Writing」を思い起こしたのは,第5回医療の質・安全学会学術集会(2010年11月27-28日,会長=小泉俊三氏)のシンポジウム「日々の医療の質・安全活動を研究・報告につなげていくにはどうすればよいか?」にシンポジストとして参加したことがきっかけである。

 私はしばらくの間,前述の学会誌に「看護師のための文章...

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