医学界新聞

医学界新聞プラス

『フィジカルアセスメントに活かす 看護のためのはじめてのエコー』より

連載 藤井 徹也

2024.03.15

 超音波(エコー:echo)検査は看護師にとって身近な存在となりつつあります。外から観察しただけでは分からない身体内の状況・状態を視覚的に確認してアセスメントするために,非常に有効なツールです。しかし,エコーに興味があっても,経験や手技に対する不安を感じている人も多いのではないでしょうか。書籍『フィジカルアセスメントに活かす 看護のためのはじめてのエコー』はこれから超音波検査を始めようとしている看護師の皆さんが必要とする情報を,ポイントを絞って分かりやすく解説した一冊です。

 「医学界新聞プラス」では本書のうち,「第1章 まず,超音波検査を行う前に」,「第2章 基本のき」,「第4章 いよいよ,超音波機器を使ってみよう」,「第5章 事例とエコー画像から病態を考えてみよう」の中から内容を一部抜粋し,全5回でご紹介します。

超音波機器の活用は看護師のスキルの1つ

 「はじめに」で紹介したように,もはや超音波機器の活用は,看護師が日頃から実践しているフィジカルイグザミネーションのスキルの1つと捉える時代です。2000年代になり,看護師にフィジカルアセスメント能力が求められ,イグザミネーションのスキルを修得する必要性が出た際に「え~~?!」と困惑した人もいると思います。しかし,現状はどうでしょうか。基礎教育課程からフィジカルアセスメント(ヘルスアセスメント)がカリキュラムに組み込まれ,抵抗なく実践されていると思います。それと同じように超音波の活用も近い将来,フィジカルアセスメントのためのスキルの一部となり,得られる情報が増えることでアセスメントもさらに適切に実践できると考えます。また,看護職の中でも助産師は,胎児の確認などで既に超音波を活用しています。
 時流に乗って超音波を活用できるようになりましょう!!
 「でも……」「難しそう!」などと思うかもしれませんが,看護師として必要な超音波機器の活用は,そこまで難しくありません。その理由を紹介します。

超音波機器を扱うのは難しくない

超音波機器の種類と構成

 超音波機器には大型のものから,ノートパソコン型,超小型(ポケット型,ポケットエコー)といろいろな種類があります。共通することは,画像は基本的には白黒であることです。検査室で見るような大型の装置では,操作パネルが複雑に感じますが,画像は白黒であるため,コントラストの調整,拡大機能,焦点機能の操作を理解すればそれほど難しくはありません。もちろん,分かりやすい画像を得るためには,トレーニングと経験が必要になります。一方,超小型のものは,スマートフォンのような感覚で操作ができます。超小型は用途が特化している機器もありますが,操作はそれほど難しくありません。軽量であり,持ち運びができることもメリットです。

まずは慣れること

 まずは,操作に慣れることが大切です。皆さんが,初めて聴診器と血圧計を使ったときのことを思い出してください。除圧が一定でなく,収縮期血圧や拡張期血圧の値を正確に確認することができなかったのではないでしょうか。そのことで,血圧測定に苦手意識を覚えた人も多いと思います。しかし,現在はいかがでしょうか。抵抗なく,自信を持って実践しているのではないでしょうか。さらに,超音波機器の操作は,血圧計でのつまみ操作と異なり,画像を確認しながら調整を行えます。そのため,落ち着いて行えばよいのです。

解剖の知識が足りないけど,うまく撮影できる?

プローブを当てる位置

 看護師は,常に患者や利用者の状態観察を行っているため,身体の構造を理解しているのは当然のことですが,「解剖学は苦手!」と感じていないでしょうか。
 まずは,苦手意識をなくすことが大切です。では,どのように克服すればよいでしょうか。皆さん(患者も)の身体は,外部からの何らかの刺激(手術時の切開,外傷など)がない限り,皮膚で覆われています。健康であれば,その皮膚の内にいろいろな臓器が定位置に収まっています。そのため,まずは皮膚の下にどのような臓器があるか,「のぞいて,見てみよう!」と興味を持つとよいと思います。しかし,想像だけでは正しく判断できません。そのため,解剖学のテキストなど臓器の位置を示すものを活用して確認をします。本書では,第3章(54頁)で体表から各臓器の位置を理解できるように解剖図を掲載しています。また,画像の紹介でもプローブを当てた位置からの臓器を示すように工夫しています。イラスト(シェーマ)も参考にしてください。

確認できる臓器とできない臓器

 また,超音波の性質を理解して,「確認できない臓器は何?」についても考えるとよいと思います。超音波は,高い周波数の音波であることは紹介しました。皆さんも一度は体験したことのある「山びこ」を思い出してください。そびえ立つ山に向かって「ヤッホー!」と叫べば,「ヤッホー!」と反響します。この反響がエコー(echo)なのです。反響は,硬い山に自分の声が当たって発生します。同様に,表面が硬い骨で覆われている部位は,超音波が跳ね返ってしまうため内側に入ることはできません。すなわち,頭蓋骨で覆われている頭蓋内は超音波の確認には適していません。
 つまり,頭蓋内以外の部位には超音波を活用できます。いろいろな臓器を三次元で確認することもできます。まずは,本書と共に,同僚とお互いに,または自分に超音波のプローブを当てて,身体をのぞいてみましょう!

81vHj2DD3PL._SY466_.jpg
 

実はそこまで難しくない! エコーへの苦手意識を克服できる本

<内容紹介>ポケットエコーの登場で、病棟や在宅で看護師の超音波機器(エコー)の活用場面が広がる兆しはあるが、まだ十分ではない。触れる機会の少なさや、技術への自信のなさなどが理由だ。しかし、意外と簡単に画像を描出し、根拠のあるケアが提供できる部位も多く、業務の効率化を図ることができる。そこで、初めて超音波機器に触れる看護師に向けて、分かりやすい表現を心掛けた。本書によって、超音波機器の活用場面と可能性が広がる。

目次はこちらから

タグキーワード

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook