レジデントのための患者安全エッセンス
[第7回] 患者に無理な治療をお願いされた時はどうすればいいの?
連載 栗原健
2024.10.08 医学界新聞(通常号):第3566号より
医療の現場では,患者の希望を尊重することが求められているものの,その希望が必ずしも医学的に妥当であるとは限りません。患者の望む治療が無理難題であったり,かえって患者の健康に害を及ぼしたりする可能性もあります。または他の医療者が提案した内容の妥当性が乏しいことを目にすることもあるでしょう。こうした状況に直面した時,医療従事者はどう対応すべきでしょうか。本稿では,このような場合の適切な対応方法について概説します。
困難な要求の背景には何があるのか
冒頭の会話にあるような対応が困難な患者は,医療現場において約15%の頻度で存在することが報告されています1)。患者が困難な要求を行う背景には下記に示したさまざまな要因があるとされ,医療者自身の問題も含まれる点には注意が必要です。
●感情および行動要因
社会的背景,疾病など
●コミュニケーションの障壁
言語や文化の違い,またはコミュニケーションの不和など
●システム上の問題
待ち時間の長さ,医療機関内の人員不足など
●医療者自身の問題
医療者の態度など
また,医師がこのような患者と遭遇した場合,注意を散漫にし,提供する医療の質の低下や患者安全上の問題につながる可能性が指摘されています2)。近年の研究では,患者の問題行動と患者安全性の間に必ずしも相関関係があるわけではないことが示唆されていますが,患者の不当な要求にそのまま従うと,リスクの吟味がなされないままに治療が進むため,患者にとっても最適解とは言えません。本来,患者の希望は,その人の人生観や価値観に基づくものであり,尊重されるべきです。一方で,必ずしも患者の希望の全てに従うことを意味してはいません。要求がなされる過程で患者の感情がエスカレートし,「負のループ」に陥る危険性もあります。場合によっては他の患者に対して悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。すなわち,このような患者に対しては,毅然とした対応で組織的に対応することが肝要です。
レジデントが個々人でできる患者安全対策
●冒頭の会話を分析する
冒頭の会話では,研修医は患者の要求を聴取した上で,結論を付けずに指導医へ相談しています。この対応は正解と言えます。このような状況では,その場で結論付けをしないことが求められます。「上級医と相談する」「診療科内(または院内)で相談する」ことを明確に患者へ伝えるとよいでしょう。
●患者の社会的背景等を確認しながら信頼関係
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