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『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』より

連載 松田 光弘

2022.02.04

誰も教えてくれなかった 皮疹の診かた・考えかた

 臨床現場において,皮疹をみた際にどう診断をつければ良いかがわからず,途方に暮れてしまう人も多いのではないでしょうか? では,皮疹をみたときに皮膚科医は何を考え診断をしているのでしょうか。「研修医のときに欲しかった教科書」をコンセプトに書かれた『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』では,診断に至る思考過程をフローチャートでわかりやすく解説します。

 「医学界新聞プラス」では本書のうち,皮疹の鑑別を始める前に注目すべき皮膚の性状について,症例を交えて4回にわたり紹介します。第3回には,本書付録のWeb動画を公開します。

症例2-1.jpg

解答と解説

  • 指導医 それでは実際の症例を見ながら皮膚科診断を勉強していこう.この写真を見て何を考えるかな?

    研修医 手に紅斑があるから湿疹でしょうか?

    指導医 湿疹の他にはどんな疾患を鑑別する必要があるだろうか?

    研修医 うーん…….

  • 指導医 もっと順序だてて皮疹を見る訓練をする必要があるね.直観的な診断ばかりしていると,皮膚科の診断力は上がらないんだ.まず赤い斑だから紅斑というのは正しい.次に見るべきポイントは何かな?

    研修医 そうか.表面の性状に注目するんでしたね.

    指導医 そのとおり.表面の性状はどうだろうか?

    研修医 表面に鱗屑がついてザラザラしています.

    指導医 表面がザラザラしているので,病変は表皮に存在するということだね.それじゃあ鑑別診断は?

    研修医 表面の変化がある紅斑の鑑別診断は湿疹,真菌症,悪性腫瘍です.

    指導医 そうだね.まず頻度の高い疾患から考えていこうか.

    研修医 頻度が高いのは,確か湿疹と真菌症です.でもあまり真菌症のようには見えませんね.

    指導医 見た目で湿疹と真菌症の鑑別はできないんだ.フローチャートに沿って考えてみよう(図2-46).
    まず顕微鏡で真菌がいるかどうかを確認する必要があるね.真菌の検査については後で説明しよう.

研修医 わかりました.

指導医 さて,真菌検査は陰性だった.それでは診断は?

研修医 診断は湿疹です.

指導医 湿疹で間違いないんだけど,湿疹にもいろいろな種類がある.どんな湿疹になるだろうか.

研修医 手にあるから手湿疹でしょうか.

指導医 湿疹には様々な分類法があるんだ.1 つは部位による分類法で,この場合は手湿疹の診断でいいだろうね.他にも何か原因物質がないかどうかを確認しておく必要もある.明らかな原因物質があれば,接触皮膚炎という診断になるかもしれない.

研修医 湿疹と診断した後も,分類が大切なんですね.

指導医 ステロイド外用薬で治癒するはずだけど,もし何か原因がある場合は,一時的に改善するだけで繰り返してしまう.湿疹は軽く見られがちだけど,実は難しい疾患なんだ.

A1:皮疹の表面の性状
A2:湿疹,真菌症,悪性腫瘍
A3:真菌検査(直接鏡検)
A4:手湿疹

解説動画はこちら

https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/3316/3997/7370/108969.jpg
 

皮膚科×診断推論!

<内容紹介>皮膚科初学者にまず手に取っていただきたい「皮疹の診かた」の入門書。皮疹をみたときに皮膚科医は何を考えているのか―その思考過程を惜しみなく披露します。
本書では,皮疹の表面性状に注目し,病変の存在部位から皮疹が生じた原因を推測して鑑別診断を考えます。
診断のプロセスはフローチャートでわかりやすく示しました。各章末には症例問題を掲載し,実際の症例で診断のプロセスをおさらいできる構成となっています。
付録として症例問題を解説したWeb動画を収載!

目次はこちらから

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