Abstraction=抽象化(水野篤)
連載
2016.10.10
臨床医ならCASE REPORTを書きなさい
臨床医として勤務しながらfirst authorとして年10本以上の論文を執筆する筆者が,Case reportに焦点を当て,論文作成のコツを紹介します。
水野 篤(聖路加国際病院 循環器内科)
■第7回 Abstraction=抽象化――断捨離しよう! まとめよう!
(前回よりつづく)
カリスマ先生「ついにImagingが掲載されましたね。おめでとう! 次はいよいよCase reportのスタイルも勉強してみよう!」
レジデント「本当にうれしいです! 次も頑張ってみます。大体同じ感じで書けますか?」
カリスマ先生「そうですね。大きくは違いません。ただ,抽象化能力が必要です」
レジデント「抽象化? アバウトにしろってことですか?」
カリスマ先生「いやいや,抽象化っていうのは必要なものを残すことで……」
連載も折り返し地点なので,ここで一度Case reportの意義を確認します。臨床家としてCase reportに向ける私の思いは第1回(第3170号)を参照していただくとして,今回は読者の皆さんがどのような思いでCase reportを書くかです。
読み手として考えると,Case reportで重要なのは,
●珍しい
●新しい(これまでにない)
という部分です。
だからこそ執筆の際には,そこを強調して書きます。そして,この論文が読者の参考になり,医療の発展に役立ってほしいという強い思いを乗せましょう! これはテクニックではありません。実臨床で患者を診て感じた素晴らしさや苦労を書くのです!
この点を理解いただいた上で,今回の話に入っていきたいと思います。
ImagingとCase reportの違い
さぁ,ついにCase reportの書き方です。基本はImagingと同じです。
ただし,
●文章が長くなる
●適切な情報のAbstraction
●もう少し深いDiscussion(考察)
の3つが新たな課題になります。
特に文章の長さは日本人にとっては非常に厳しい部分です。Imagingのように150~250 words程度ならよいですが,Case reportは2000~3000 wordsです。この長さの英語はキツイ……。日本人には正直キツいです!
では,どのようにするか? はっきり言って慣れるしかないのですが,私なりにまとめたところを解説しましょう。
まず定石を知るべし!
まずは敵を知る,つまり第4回(第3182号)と同様に“定石”を学びます。
多少の差はありますが,フォーマットは,
❶Abstract:抄録
❷Introduction:はじめに
❸Case presentation:症例提示
❹Management & Outcome:経過
❺Discussion:考察
❻Conclusion:結論
という流れでよいでしょう。
一般的な論文はIMRAD形式[序論(Introduction),方法(Method),結果(Result),結論(Discussion)]で記載されることが多いですよね。Case reportでは(このような言い方はしないのですが,あえて言うなら)❷~❺の頭文字を取って,ICMDです。CARE(CAse REport)ガイドラインのチェックリスト1)も参考にしてください。
それぞれの分量は
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