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現場で迷わない!心肺蘇生ガイド

連載 髙橋 毅史

2026.09.30

早速,第2回から各論に入ります。

心肺蘇生では「何よりも質の高い胸骨圧迫が大事」と,皆さんは耳にタコができるくらい聞いたことがあるかもしれません。今回は,その中でも重要な「深さ」と「速さ」について考えてみます。

まずは胸骨圧迫を始めること

胸骨圧迫の深さや速さを考える前に,もっと大事なことがあります。それは,必要だと思ったらまず胸骨圧迫を始めることです。心肺停止の直後はしゃくりあげるような不規則な呼吸を認めることがあります。その際,自分の目の前で心肺停止が起こっていると認めたくない気持ちも相まって,「呼吸があるから胸骨圧迫をしなくても問題ない」と誤った判断を下してしまうことがあるかもしれません。ですが,これは死戦期呼吸といって胸骨圧迫の適応です(JRC2025,25頁)1)。呼吸がない状態だけではなく,「正常な呼吸がない」ことが胸骨圧迫を始める基準になるのです。

私自身,「なんで胸骨圧迫をしたんだ!」と怒られたことは一度もありません。一方で,自分が迷っているうちに,目の前で別の人が胸骨圧迫を始めていたことは何度かあります。事実,心肺停止でない人に胸骨圧迫を行っても,重大な害が生じることはまれであることがわかっています(JRC2025 ,53頁)。心停止が疑われる場面において,判断に時間をかけすぎて開始が遅れることのほうが問題です。迷ったら,まず胸骨圧迫を始める――これは何度でも繰り返し伝えたい,大切な原則です。

「深さ」と「速さ」はどのように決められているの?

100〜120回/分,5〜6 cmは絶対的な境界ではない
では,どのくらいの「深さ」と「速さ」で行えばよいのでしょうか。

成人の場合,6cm を超える過剰な圧迫を避けつつ,約5 cmの深さで,速さは100〜120回/分が推奨されています(JRC2025,34頁)。ガイドラインで繰り返し示されてきた数字であれば強固な科学的根拠がありそうですが,実際にはそう単純ではありません。心停止患者を80回/分,120回/分,160回/分などランダムに割り付けて比較することは倫理的に困難だからです。そのためエビデンスの多くは,実際の胸骨圧迫と患者転帰との関連を調べた観察研究に基づいています。

ある研究では,ROSC(自己心拍再開)が最も多かった速さは約125回/分で,それより速くなるとROSCは減少しました​​​​​2)。「では125回/分を目標にするのがいいのでは?」と思うかもしれませんが,これは観察研究でROSCとの関連を示した値であり,全ての患者に共通する最適値ではありません。事実,速さと生存退院率との間には明確な関連は示されていません。また速すぎれば,圧迫の深さや胸郭の戻り(リコイル)が不十分になる可能性もあります2)。
その後のより大規模な解析において,圧迫の深さや中断時間の影響を考慮すると,100〜119回/分で生存退院率が最も高いことが示されました3)。ただし,この100〜119回/分という範囲は事前に設定されたものであり,上限を125回/分にすると生存退院率が下がるということを示しているわけではありません。ただ120〜139回/分の患者群では明らかに胸骨圧迫の質が落ち,生存率退院も低下することが確認されています3)。

深さに関しては,大規模な観察研究では約4.0〜5.5 cmで生存退院率が高く,4.6 cm付近...

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大阪精神医療センター精神科

2018年三重大医学部卒業。天理よろづ相談所病院で初期臨床研修を修了後,20年より神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター,23年より奈良県総合医療センター集中治療部で勤務。25年に精神科後期研修を開始し,2026年4月より現職。日本救急医学会救急科専門医,日本集中治療医学会集中治療専門医。

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