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[第22回]商標権侵害について記された警告状が見知らぬ企業から届きました。どう対応したらよいでしょうか?
研究者・医療者としてのマナーを身につけよう 知的財産Q&A
連載 小林只
2026.08.17
Q.商標権侵害について記された警告状が見知らぬ企業から届きました。どう対応したらよいでしょうか?
A.「あなたが使っている名称は当社の商標権を侵害している。直ちに使用を中止せよ」という警告状が見知らぬ企業から届いたとしても,慌てて名前を変える必要はありません。まずは,J-PlatPatやブランドテラスなど無料の調査ツールを使って,相手の商標〔名称や区分(権利範囲)〕を確認しましょう。実は権利が及ばないのに脅しをかけてくる商標トロールの可能性もあります。適切な専門家に相談し,冷静に対処することが重要です。
前回は,商標権が文字や図形などのマークと45の区分(商品・サービス)の組み合わせで成り立っていることを解説しました。今回は,このルールを悪用したトラブル事例と,自衛のための商標調査の方法について解説します。
ある洋菓子店の悲劇と商標トロール
地方で長年愛されている有名な洋菓子店「X」がありました。先日オンラインショップ(ECサイト)での販売を開始したところ,東京にある同名の店舗「X'」から,次の要求を記した内容証明郵便(配達証明付き)が届きました。
貴店が使用している「X」という名称は,当社が商標登録しています。商標権侵害に当たるため,商標権利用料◯万円を毎月支払う,もしくは直ちにオンライン販売を停止し,店舗の看板も下ろしてください。●月末日までに対応していただけない場合は,損害賠償請求または提訴に移ります。
法律の知識がなく,身近に相談できる専門家もいなかった洋菓子店「X」の店主はパニックになり,長年親しんできた店名や商品パッケージを,多額の費用をかけて全て別の名称・デザインに変更してしまいました。結果として,経費は増え,名称変更によるブランド力も低下し,売上も激減してしまったのです。
しかし,後になって専門家が調べてみると,驚くべき事実が判明しました。
東京の店舗「X'」が取得していた商標は図形商標であり,店舗「X」の図形とは異なることがわかりました(読み方や文字列は同じでしたが,フォントデザインが大きく異なっていました)。また,その分類も「第16類(文房具・包装紙)」に限定されたものであり,洋菓子そのもの(第30類)や,オンラインでの小売業(第35類)の区分では,「X'」は権利を持っていなかったのです。
判例から見る「類似性」の判断――文字商標と図形商標の違い
なぜこのようなことが起こったのでしょうか。それを理解するには,商標の「類似性」がどう判断されるかを知る必要があります。
氷山印事件(註)として有名な過去の最高裁判例で確立された基準によれば,商標が似ているかどうか(類似性)は,「外観(見た目)」「称呼(読み方)」「観念(意味合い)」の3つの要素を総合的に比較し,消費者が「同じお店の商品だ」と誤認・混同するかどうかで判断されます。重要になるのが文字商標と図形商標(ロゴ等)の違いです。
●文字商標:特定の文字列(読み方や意味)そのものを保護します。フォントや色を変えても「読み方(称呼)」が同じであれば,侵害(類似)とみなされやすい強力な権利です。
●図形商標:ロゴなどの「見た目(外観)」を保護します。デザイン性が高い分,「読み方は同じだが,全く違うデザインのロゴ」を使っている場合,「見た目(外観)」が大きく異なるため,全体として「消費者は混同しない(非類似=侵害ではない)」と判断されることがよくあります。
有名な判例として,スイスの高級時計「フランク・ミュラー」と,日本のパロディ時計「フランク三浦」の商標を巡る訴訟1)があります。この裁判でも「呼び方は似ているが,ロゴの見た目(外観)や,高級時計と低価格パロディというイメージ(...
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小林 只(こばやし・ただし)氏 株式会社アカデミア研究開発支援 代表取締役社長/医師・一級知的財産管理技能士
2008年島根大医学部卒。臨床医として研鑽に励み14年より弘前大総合診療部。16年博士(医学)。23年大学認定ベンチャー・株式会社アカデミア研究開発支援を創業。24年より弘前大総合地域医療推進学講座・講師,島根大オープンイノベーション推進本部・准教授を兼任。綜合者・総合医として研究開発×知財法務×安全保障×事業で,多分野の横断支援を担う。資格:1級知的財産管理技能士(特許・コンテンツ),AIPE認定知的財産アナリスト(特許・コンテンツ),Security Trade control Advanced(CISTEC)ほか。2024年度 知的財産アナリスト 奨励賞,2025年度 知的財産管理技能士会表彰 奨励賞 受賞。
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