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書評の森

連載

2026.10.20

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 私が理学療法士として臨床で患者さんを診させていただく中で大切にしていることは,解剖学です。それは単に筋の起始・停止を知っているということではなく,軟部組織の構造と隣接組織との関係や付着部の構造を理解しておくということです。
 私たち理学療法士は当然のことながら,解剖学的構造破綻を改善することはできません。しかしながら,理学療法により症状を改善させることは可能な場合が少なくありません。「いったい私たちは臨床で何とどう闘っている」のでしょうか?

 整形外科疾患をはじめとする患者さんの多くは,「疼痛」と「可動域制限」を主訴として病院やクリニックに来院されます。何が痛いのか? そして,なぜ動かないのか? この疑問を解決するためには,ヒトの身体の構造である解剖の理解が欠かせないわけです。

 これまでの解剖学書の多くは,解剖図や写真などが載せられているものの,この解剖の知識をどのように臨床で活用できるのかについては全く記述されていません。それは本書の中でも書かれているように,「解剖学」とは解剖をありのままに研究する「学問」だからに他なりません。
 本書を読み進めていくことで,「臨床でどのように解剖学的知識を反映させることができるのか」について考えながら,臨床的解剖学思考を身につけることが可能です。

 前述した通り,私は臨床で病態を解釈する上で,解剖学的知識が必須であると考えています。それは,長年の臨床経験に積み重ねや臨床研究を通して,少しずつ身につけてきた思考プロセスです。もし,本書が私の臨床1年目に存在していたら,もっと短い期間で現在の考え方に到達できたに違いないと感じます。

 本書は単に解剖図や写真が載せられているのではなく,工藤慎太郎先生をはじめとするスペシャリストの先生方とのディスカッションを通して,「解剖」をどのように「臨床」に反映することができるのかについて考えることが可能となっています。
 私個人としては,巻末の「第5章 臨床に活かせる解剖学とは?」に共感する部分が多かったです。臨床において本質的に大切なことがわかりやすく記載されています。「いったい私たちは臨床で何とどう闘うべきなのか?」という疑問を解き明かしてくれます。初学者はもちろん,臨床で活動している全ての療法士に読んでいただきたい一冊です。

 日進月歩の医療において,標準治療やガイドラインの改訂,新規モダリティの登場などその変化は劇的であり,医療の安全と質保証がこれまで以上に問われる中,最新のエビデンスを携えた『薬剤師レジデントマニュアル』第4版が発刊されました。

 本書を手に取ってまず驚かされるのは,白衣のポケットに収まるコンパクトなサイズからは想像もつかない圧倒的な情報量と網羅性です。第1~9章では,調剤,注射,DIといった基本業務から,薬物動態,相互作用,さらにはスペシャルポピュレーションへの対応やフィジカルアセスメントに至るまで,実務の土台となる情報が凝縮され,第10章以降の疾患解説では,16領域54疾患の代表的な薬物治療がカバーされています。特筆すべきは,2013年の初版から一貫している「疫学・病態」「状態把握」「治療」「薬学的ケア」「処方提案のポイント」という5つのステップによる解説です。若手薬剤師や学生は単に知識を検索するだけでなく,臨床における薬剤師の「思考プロセス」を自然に習得できることも「教育書」としての本書の特徴でしょう。

 本書の行間からは,監修・編集・執筆に携わった先生方の「薬剤師のアイデンティティ」に対する深い洞察が伝わってきます。薬剤師には,薬の本質的理解を基盤とする「科学者」としての力が不可欠ですが,その力は,あらゆる診療科を俯瞰しカバーする「ジェネラリスト」としての役割においてさらに一層発揮されるのではないでしょうか。以前,ある患者さんが私に「薬剤師さんはすべての科の薬をわかっていなければならないから大変ね。すごいわね」と語り,米国のあるpharmacy schoolの教員は本学学生に「専門性はもちろん重要だが,多様な場面で活躍できるジェネラリストであることもとても重要である」と話しました。あらゆる領域を俯瞰でき科学的思考を持つ薬剤師こそ,チーム医療における唯一無二の最強の存在ではないでしょうか。圧倒的な情報量と網羅性を有する本書は,レジデントや若手薬剤師のみならず多くの薬剤師がジェネラリストとしての力をアップデートする強力な支えともなるでしょう。

 常に「今の先」を見据えてきた本書にさらなる期待を込め,次期改訂に向けて一つお願いしたいのは「医療面接」項目の新設です。不確実で複雑化する現代医療において,専門性を効果的に発揮するためにはその伝達手段であるコミュニケーションも必須のコンピテンシーです。現行版でもアセスメント時のマナーに関する記述はありますが,信頼関係を築きながら効果的に情報を収集し,適切な医療へとつなげる「体系的なコミュニケーション手法」は,対人・対職種間の連携が求められる現場において,若手からベテランまで全ての薬剤師を助ける大きな武器になるはずです。

 若手薬剤師や薬学生にとっては日々の拠り所となる「指南書」,ベテランや薬局薬剤師にとっては専門外を効率的にアップデートする「辞書」として,本書がさまざまな現場で活用され,医療安全の向上と患者貢献につながることを願ってやみません。