医学界新聞

連載

2007.07.23

 

看護のアジェンダ
 看護・医療界の“いま”を見つめ直し,読み解き,
 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。
〈第31回〉
拝啓 朝ズバッ! みのもんた様

井部俊子
聖路加看護大学学長


前回よりつづく

 日曜日を除く毎朝5時台から,キャスターとして心身を整えてカメラの前に立つ,そのことに敬意を表しています。その日のニュースの最初に,みのさんが何をとりあげるのか,どんな口調で語るのかを見て,次に一般紙とスポーツ紙の一面記事の紹介を聴いてチャンネルを変えるのが,私の朝の通常コースです。

 6月中旬に頻回にとりあげられた「コムスン」はもうまったく触れられなくなり,6月下旬のニュースは,年金問題とミートホープ社が中心となっていますね。

 少しさかのぼって,私は6月11日と12日の朝のコムスン問題,正確に言うと介護サービス事業に関するみのさんの認識のありようについて意見を述べたいと思います。相手は“みのさん”としていますが,“マスコミ”と置きかえてもよいと思います。

 6月11日朝,グッドウィルグループの折口会長が「朝ズバッ!」に生出演しました。その際みのさんは声をはりあげて,「もうけてはいかん」「お客さまなどと言うのはけしからん」というようなことを何度か言いました。

 その翌日,火曜日のコメンテーターとして出演している浅野史郎さんが,「みのさん,もうけてはいけないということはないのです。株式会社を入れることを2000年に決めているのですから」「チェック機能は大切です」「お客さまの選択なのです」などとコメントされました。

 

 ここで,二つのことが論点として浮上します。まず,介護サービス事業はもうけてはいけないのかということです(この場合,「もうける」とはどういうことを指しているのかがはっきりしていませんが,事業として存続していくには一定の収益が必要であることは明白です)。二つ目は,介護サービスの利用者は「お客さま」ではないのかということです(介護をサービスという財と考えると,クライエント“顧客”という視点が出てくるものと考えます)。介護サービス事業がビジネスとして成立しなければ,介護保険制度が持続可能な制度にならないと考えます。

 私が,折口会長のか細い応答の中で,みのさんに注目してほしかったことがあります。彼は,おむつ交換の際に陰部洗浄と記載したり,ヘルパーが送迎の際,病院の玄関先で迎える人がいないため外来診療科まで高齢者を送り届けたりすると不正請求だと指摘されると言いました。私は折口会長が,具体的なサービスメニューに言及したことと,「陰部洗浄」という用語を使ったことが大変印象的でした。自分でトイレに行けない方や寝たきりの方がおむつを使用し,おむつを換える時に,おしもをきれいに洗うことを看護職や介護職は手際よく行い,わがことのようにさっぱりした気持ちになるのです。しかし,みのさんはこれらのことにまったく関心を払うことなく折口会長を糾弾していました。介護サービスを具体的に知っていただくチャンスを逃してしまったと,私は残念に思いました。

 「送迎」に関する費用は,「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス及び居宅療養管理指導に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成12年老企第36号)という長い標題の規則に定められています(私も知らなかったので調べました)。これから引用する箇所は「2.訪問介護費」の「(6)通院等のための乗車又は降車の介助の単位を算定する場合」の,「(5)サービス行為について」以下(6),(7)を含みます。

 

(5)サービス行為について,「自らの運転する車両への乗車又は降車の介助」,「乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助」及び「通院先若しくは外出先での受診等の手続き,移動等の介助」とは,それぞれ具体的に介助する行為を要することとする。例えば,利用者の日常生活動作能力などの向上のために,移動時,転倒しないように側について歩き,介護は必要時だけで,事故がないように常に見守る場合は算定対象となるが,乗降時に車両内から見守るのみでは算定対象とならない。

 また,「自らの運転する車両への乗車又は降車の介助」に加えて,「乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助」を行うか,又は,「通院先若しくは外出先での受診等の手続き,移動等の介助」を行う場合に算定対象となるものであり,これらの移動等の介助又は受診等の手続きを行わない場合には算定対象とならない。

(6)「通院等のための乗車又は降車の介助」は,「自らの運転する車両への乗車又は降車の介助」,「乗車前若しくは降車後の屋内外における移動等の介助」及び「通院先若しくは外出先での受診等の手続き,移動等の介助」を一連のサービス行為として含むものであり,それぞれの行為によって細かく区分し,「通院等のための乗車又は降車の介助」又は「身体介護中心型」として算定できない。例えば,通院等に伴いこれに関連して行われる,居室内での「声かけ・説明」・「目的地(通院等)に行くための準備」や通院先での「院内の移動等の介助」は,「通院等のための乗車又は降車の介助」に含まれるものであり,別に「身体介護中心型」として算定できない。

 なお,一人の利用者に対して複数の訪問介護員等が交代して「通院等のための乗車又は降車の介助」を行った場合も,1回の「通院等のための乗車又は降車の介助」として算定し,訪問介護員等ごとに細かく区分して算定できない。

(7)「通院等のための乗車又は降車の介助」の単位を算定するに当たっては,適切なアセスメントを通じて,生活全般の解決すべき課題に対応した様々なサービス内容の1つとして,総合的な援助の一環としてあらかじめ居宅サービス計画に位置付けられている必要があり,居宅サービス計画において,

 ア 通院等に必要であることその他車両への乗降が必要な理由

 イ 利用者の心身の状況から乗降時の介助行為を要すると判断した旨

 ウ 総合的な援助の一環として,解決すべき議題に応じた他の援助と均衡していること

 を明確に記載する必要がある。

 

 ちなみに,コムスンの2007年6月期の中間事業報告によると,売上高407億41百万円,営業損失が12億26百万円となっています。

 だからといって,コムスンの不正を正当化するものではないことを申し添えます。

 「朝ズバッ!」とみのさんの活躍を期待しています。

つづく

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook