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『医学界新聞プラス 循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より

連載 上原 拓樹

2024.05.10

X(旧・Twitter)やYouTubeなどのSNSで循環器領域の情報発信を続ける「うし先生」の書籍『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』がこのたび刊行されました。本書は,研修医の先生方が循環器内科をローテートする時に悩みがちな100個の疑問を取り上げ,「うし先生」が簡潔に解説していくものです。

循環器内科医をこれからめざす方は知識の基礎固めとして,今のところ循環器に進む予定がない方でも,ローテート時の最低限の知識のインプットとしてご活用いただけること間違いなしです。医学界新聞プラスでは,本書より4項目をピックアップし,ご紹介していきます。

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今回は,循環器内科のカテーテル検査の骨格となる冠動脈造影について,実際に清潔野介助に入ったときに検査についていけることを目標に見方をお話しします.

冠動脈の走行ってどうなってるんだっけ?

まずは解剖の復習です.心臓自身を栄養する冠動脈は左冠動脈(left coronary artery;LCA)右冠動脈(right coronary artery;RCA)に分かれます.LCAは#5の主幹部(left main coronary trunk;LMT)から前下行枝(left anterior descending artery;LAD)回旋枝(left circumflex artery;LCX)に分かれます.RCAは#1から#4(AV, PD)まで,LCAはLMTが#5,LADが#6から#10,LCXが#11から#15まで番号付けされています(キリがいいので覚えやすいですよね).それ以外は,LADの#9と#10が対角枝(diagonal branch;Dg)で,その対側にあるヒゲのような血管が中隔枝(septal branch;SEP)になります.図1は重要な血管のみ記載したシェーマです.

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図1 冠動脈のシェーマ(重要な血管のみ記載)

シングルプレーンでの撮影の場合,RAO像(右側から)からCaudal像(足側から),LAO像(左側から)に移行してCranial像(頭側から)を経由してRAO側に戻ってくるのが一般的です.APはanterior-posterior(前後)の略で,「正面」という意味です.教科書には撮影する像ごとに注目するポイントがよく記載されていますが,なかなか覚えられないですよね.ポイントは,Caudal像はLCXが中央に写り,Cranial像はLADが中央に写ります図2).そのため,この順に撮像しているのであれば,前半は中央のLCXに注目し,後半は中央のLADに注目することで,大きな見逃しがなくなります.

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図2 実際の冠動脈造影

もし冠動脈ステント留置後や高度な石灰化があれば,それを目印にどちらがLADかLCXか追うことができます.最初のうちはそれも難しいと思うので,LAO-●●は左側にLAD,RAO-●●は右側にLADが位置するということを覚えておくだけでも,冠動脈が同定できます(もちろん例外はありますが).

狭窄評価の目安

狭窄の程度については,視覚的に25%,50%,75%,90%,99%,100%(完全閉塞)と記録するのが一般的です.25〜50%の狭窄の程度についてはあまりこだわらなくて問題ありません.注意したいのは,直径(見た目)が1/2程度の狭窄の場合,断面積的には二乗をするため1/4(75%)狭窄となる点です.99%狭窄は血流そのものが遅くなっている(delay)場合を指します.75%より狭いけど血流速度は問題ない場合は90%と表現する,と理解しておくとわかりやすいです.

  • うし先生からのAnswer
  • 冠動脈造影でのLADとLCXは,見る方向と中隔枝などで同定が可能!
  • Caudal像はLCX,Cranial像はLADを中心に観察しよう!
 

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