心研印 心電図判読ドリル

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ベストセラー「国循・天理よろづ印 心エコー読影ドリル」の心電図版がついに登場!心臓血管研究所・不整脈チームの精鋭が執筆し、編集は心電図界のレジェンド・山下武志先生。単純に診断名を当てさせるのではなく、心電図の細かい所見や、本質に迫る問題、その先の診療方針を問う問題など、この一冊で心電図を通して循環器診療を深く学べます。不整脈や虚血性心疾患だけでなく、弁膜症や先天性心疾患など、幅広い疾患を収載。

編集 山下 武志
発行 2022年09月判型:B5頁:208
ISBN 978-4-260-05012-8
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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  • 序文
  • 目次
  • 書評
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「独学で心電図をきちんと読解できるようになれますか?」

 こんな質問を受けた記憶はありません.おそらく,多くの方がほぼ独学で心電図を読んでいるのが現実だからでしょう.心電図の教科書が数多く出版されているのも,独学で勉強することを前提にしているからだと思います.

「もちろんできます.ただ,限界があるかもしれません」

 これが私の偽らざる答えです.私自身は,研修医時代,独学で心電図を勉強していました.しかし,なかなか心電図が読めるという実感まで得ることはできませんでした.その後,自分の書いた心電図所見を先輩から逐一修正され,先輩の書いた心電図所見を見習い,わからないところは教えてもらい,心電図の奥深さと限界を数多くの心電図で経験して,いつの間にか読めるようになった,というのが実際です.心電図の読解は,独学で達成できるレベル,そして人に習ってはじめて達成できるレベルの2つの段階があると思っています.前者に関しては,さまざまな教科書が出版され,私自身も心電図入門書を幾冊か著してきました.そして,残念ながら,後者は,誰に習うかに依存しています.これを形にして標準的なものを作りたいと思ったことが何度もありましたが,自分ひとりの力で達成することは難しく,実現することはありませんでした.

「このテキストは,この難しい2段階目の読解を目指しています」

 ドリルと題していますが,読者それぞれがさまざまな心電図を読解し,それを指導者に見てもらう,つまり先輩に習うという体裁をとっています.さまざまな先輩に習ったほうがよいでしょう.その意味で,執筆者陣は,私が心臓血管研究所付属病院で心電図を教え,いまやすっかり成長した不整脈グループの面々としています.おそらく,私がこれまで教えてきた多種多様な知識が伝えられるはずです.自分ひとりではできないと思ったことも,後輩たちが力を合わせ,このテキストを結実させたことを大変うれしく思っています.心電図の読解には,かなり奥深いところがある……これを感じ,学んでもらう機会となればと,心から願ってやみません.

 2022年7月
 山下 武志
 

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執筆者一覧
本書の構成

第1章 [基礎編]小手調べの7Cases!

第2章 [実践編]いよいよ本番の43Cases!

付録
 逆引き疾患目次
 Learning Point まとめ(カルテ記載例つき)

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山下塾で心電図判読スキルアップ!
書評者:井上 博(富山大名誉教授)

 「心電図が読めるようになるにはどうしたらよいですか?」という質問はいつの時代にもある。小生が現役時代,医学生や研修医諸君に答えていたことは,「まず何でもよいから一通り心電図の本を読んで基本的事項を理解し,その後は一例一例の心電図を読んで専門家に教えてもらう」であった。本書の編者はまさに同じことを序文で述べている。しかし周囲に心電図の専門家が必ずしもいるとは限らない。そのような場合どうすればよいか? この難題に応えてくれるのが本書である。心臓血管研究所の山下武志先生とその5人のお弟子さんの手で上梓された。

 基礎編(小手調べ)7例,実践編(いよいよ本番)43例の計50例から成る。まず簡単な病歴と心電図が提示され,多肢選択形式で質問に対する回答を読者が考えるという形式である。解答としては心電図所見の場合もあれば,疾患名の場合もある。解説では心電図所見が丁寧(重要な部分にはアンダーライン)に説明され,必要に応じて胸部X線写真,冠動脈造影,心エコー図などが示され,読者の理解を容易にする工夫がされている。心電図や,提示されている画像は鮮明で見やすい。解説に続いてLearning Pointとして,その心電図所見で注意すべき要点が示され,最後に深く学びたい読者のために参考文献が引用されている。本編に続いて逆引き疾患目次があり,心電図所見,疾患名から検索できるようになっている。最後にLearning Pointのまとめが50例分示され,心電図所見のカルテへの記載例が英語で示されている。痒いところに手が届く工夫が随所になされている。

 本書を通読すれば代表的な心電図所見,不整脈,疾患が網羅的に学べる。甲状腺機能亢進症や気胸など臨床現場でしばしば遭遇する疾患についても取り上げられており,一昔前には想像できなかった新型コロナウイルスワクチン接種後の副作用や心房細動既往例のAI診断などup-to-dateな話題も取り上げられている。AIによる心房細動既往例の診断では4症例が提示されているが,全くお手上げであった。AIが重要と判断した心電図所見の中には,これまでの知識でなるほどと思わせられるものもあるが,心房細動発生とどう結びつくのか理解に苦しむものもある。今後,心電図のAI診断が普及してくるのであろう。

 心電図に関して基礎的な知識を持っており,さらに臨床的な心電図判読力を増したいと願っている若手医師,医学生に本書を薦めたい。通読するもよし,折に触れて(受け持ち患者さんの疾患に応じて)ひもとくもよし。全国どこにいても,あたかも心臓血管研究所で山下先生から心電図判読スキルを学べることができる,このような本を企画し形にまとめ上げた編者,著者,そして出版社に敬意を表したい。

 最後に1つだけお願いをしたい。提示されている心電図はきれいであるが,惜しむらくは一部の心電図では上下の胸部誘導のQRS波が重なっていて見にくい。版を改める機会があれば,ぜひとも感度が半分の記録も並列して提示していただきたい。30年以上前に山下先生に心電図判読を少しばかり教えたことのある先輩からのお願いである。


病態,診療の手順,考え方を問う心電図ドリル
書評者:村川 裕二(村川内科クリニック院長)

 心電図のドリルです。
 循環器診療の経験を積んだ人を念頭に置いて書かれています。

 六本木の心臓血管研究所の先生たちの共著です。
 初めから終わりまで1人の人が書いているような語り口。
 共著の本は語調がギクシャクしているものもありますが,本書には一貫したトーンがあります。

 症例は幅広く網羅されています。
 問題の出し方は,よく言えば「自由度が高い」ですが,「あいまいで,どっちともいいにくい」と感じる読者もいるかもしれません。

 専門医試験でも大学の定期試験でも最近の選択問題では「択一式」が優先されますが,本書では「誤っているものをすべて選べ」というのがやたらと出てきます。

 サラサラとは読めません。
 それぞれの症例が濃いからです。

 シンプルな心電図判読ではなく,「病態の本質は何か」とか,「診療の手順や思考法」まで,入口から出口まで視点は広くなっています。

 「p波の形」の解釈は古典的な心電図の読み方ですが,p波みたいな小さな波形に惑わされると人間が小さくなるから,あまり気にしないほうがいいと思っていました。
 本書ではかなりp波の形が取り上げられています。

 「両心房負荷」という言葉も出てきます。
 「波形から心臓の形の変化を察する」という基本姿勢をきちんと学んでほしいという意図かと思います。

 解いてみると楽しめました。
 とはいえ,半分しか正解できませんでした。
 不正解には,「難しくて間違ったもの」,「“誤っているもの”という設問に惑わされたもの」,「そうかなあと思うもの」があります。
 ST上昇の判定はあいまいですし,QT時間延長の有無などは「補正式をどの程度の心拍数まであてはめていいか」という見解の差も影響します。

 アミロイドーシス,甲状腺疾患,不適切洞頻脈などは,病態と心電図の考え方が簡潔にまとめられて印象に残るケースでした。

 医学書はおざなりな中身だと引用文献が大きなスペースを占めています。
 本書は隅っこに小さなフォントで2,3個付け加えられているだけで,控えめで奥ゆかしい。

 手だれの循環器の専門医が腰を据えて解いても正答率70%に達するのは難しいでしょう。
 パッと見て30~50%ほど解ける方には面白く勉強になりますが,ベースラインで20%しかわからないと半分も読み進められないでしょう。

 興味のある方は,まず本屋さんや出版社のHPで,第2章「実践編」をいくつか解いてみることをお勧めします。


心電図だけでここまで診られるんだ!
書評者:永嶋 孝一(日本大学医学部内科学系循環器内科学分野准教授)

 おおっ,山下武志先生の新刊が出ている! しかも久しぶりに心電図の教科書ときた!
 胸を張って推し活をする時代,生粋の山下先生ファンである僕は,即買いだろう。
 早速手に取ってみた。表紙には難解な心電図が散りばめられている……今回は心電図にとことんこだわっていますよ,という無言のメッセージ……そう,そうでなくっちゃ!
 とはいえ僕ももう中堅循環器医,心電図は大得意だ。
 無数にある心電図の教科書のどれに目を通しても,真新しい発見にはなかなか出会えない。
 そんな慢心とともに目次をパラパラ。この教科書は「判読ドリル」と名の付く通り,問題形式で纏められているのか。
 まずは小手調べの7Cases! いいじゃないか,ここはさっと全問正解で読み進めるぞ! と意気込んだ矢先,Case1の選択肢を二度見してしまった。

 や……山下先生,僧帽性P波と左心性P波って……ち,違うんですか? 肺性P波と右心性P波も違うんですか(T-T)?

 いきなりの衝撃に戸惑いながらもページをめくると,定義やその違いについて,いつもの山下先生の筆調で理路整然と解説されている。なるほど,深い……思っていた以上に深いぞ。底の見えない温泉に足を浸けるときのように,おそるおそる読み進める。しかしその先も「心電図だけでここまで診られるんだ」と驚くTipsだらけ。目からウロコの連続である。

 左室の圧負荷と容量負荷の違い
 両室肥大を見落とさないコツ
 肥大と虚血によるT波の違いを見分ける「T波終末のオーバーシュート」

 いったい僕の目にはウロコが何枚張り付いていたのか……ギネス記録になりそうだから一回数えてみたいものである。これはワンランク上の教科書だ……山下先生,恐れ入りました,さっき心電図は大得意だと書いた自分が恥ずかしい。ついでに調子に乗ってTwitterに投稿した,「心電図王におれはなる!」というツイートも削除したい。海賊王になるほうがよっぽど簡単だったかもしれない。

 患者さんの経過という時間軸で心電図を比較するのも新しい!

 そうなんです山下先生……臨床医は,弁膜症や心不全の進行を,時系列の心電図で捉えるという勉強もしたかったんです! 心電図を通して患者さんの人生と寄り添う極意もちりばめられていた。もはや,人類の書き得る最高の心電図書ではないか。
 一気に読み終えてしまった。
 さぁ……もう一周しよう! やっぱり心電図王におれはなる!

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本書で提示した症例の心電図PDFがご覧になれます。拡大したい場合にご利用ください。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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