• HOME
  • 書籍
  • Dr. 長澤印 輸液・水電解質ドリル 


Dr. 長澤印 輸液・水電解質ドリル

もっと見る

輸液・水電解質のリアルに挑め。経験豊富なDr.長澤の思考プロセスがみえる20症例!つまずきやすい輸液や水電解質をDr.長澤が初学者にもわかりやすく解説。1章(総論)で学んだあとは、2,3章(各論)の症例問題を解いて、どんどん実践すべし。わからないところがあったらいつでも1章(総論)に立ち返ろう。解き終えた後は付録の関連検査値・式、逆引き疾患目次、Learning Pointまとめもご活用ください。

長澤 将
発行 2023年10月判型:B5頁:192
ISBN 978-4-260-05296-2
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 正誤表を掲載しました。

    2023.11.21

  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 正誤表

開く

はじめに

 東北大学の長澤 将(たすく)です.この度は「Dr.長澤印 輸液・水電解質ドリル」を上梓することができました.
 私の単著としては10冊目です.

 最近,水・電解質の講義をする機会が増えました.「やっぱりよくわからない」というお声をいただく反面,直接教えると「そういうことなんですね!」とわかっていただけます.
 そんな経験から,そうか!実践って重要なんだ,とあらためて認識しました.総論だけ勉強して各論に応用できる人もいれば,そうでない人もいるのだと思います.

 本書は,水・電解質の基本的知識としての総論(1章),通常レベルの症例問題集Part1(2章),難しいレベルを含む症例問題集Part2(3章)という構成にしています.
 水・電解質の症例をみたときに,どのようにアプローチし,実際にどう検査をオーダーして,その結果をどう解釈して,落としどころをつけていくかを感じてください.

 本来は直接指導できれば一番スッキリしていただけるのですが,現実問題として難しいです.できるだけリアルな形で伝えるような本を作りたいなと思っていた時に,声をかけていただいた医学書院の小柳 健氏に感謝申し上げます.すごくややこしい構成になったものをスッキリ紙面にまとめていただきました.
 また,無茶なリクエストを聞いてくれたデザイナーの加藤愛子さまに感謝を申し上げます(実は表紙の結晶構造にも意味があります).

 本書はこれまでの本と比べてスラスラとは読めないかもしれませんが,なるほど,こんな感じで診療を進めているのだな!と感じて,自分の診療に役立つ部分を吸収していただければと思います.

 2023年夏
 長澤 将

開く

はじめに

1章 ベッドサイドに出る前に
 1 身体のバランスは「完璧なラーメンの味付け」である / 本書の使い方
 2 まずは何より体液量
 3 なぜ「体重」が重要か?
 4 輸液の基本──レベルチェック
 5 Na総論──細胞外液の主役はNaである
 6 低Na血症──体液量別に捉えよう
 7 高Na血症──どのような症例が危険か?
 8 K総論──筋肉が大きなプール
 9 高K血症──尿が出ない状況は危険
 10 低K血症──怖いし,ニセモノが少ない
 11 Ca総論──ビタミンD,PTHが重要
 12 高Ca血症──大事なのは「病歴」
 13 低Ca血症──簡単か難しいかどちらか
 14 P総論──Caとセットで考えよう
 15 Mg総論──ちょっとしたことで異常を来す

2章 まずは基本のナトカリ
 Case 1 嘔吐・下痢を伴う低Na血症の70歳代女性
 Case 2 尿量が多いため輸液されていた低Na血症の50歳代男性
 Case 3 肝硬変・CKDで低Na血症を来している70歳代女性
 Case 4 病状は落ち着いているが高K血症を呈した60歳代女性
 Case 5 20年以上の高血圧加療歴があり低K血症の60歳代男性
 Case 6 低Na血症だが自覚症状のない70歳代女性
 Case 7 強い倦怠感を伴う低Na血症の30歳代女性
 Case 8 腎機能悪化と感染が重なった高Na血症の80歳代男性
 Case 9 潰瘍性大腸炎・SLEで多薬服用中に低K血症となった50歳代女性
 Case 10 術後に多尿と高Na血症を呈した70歳代女性
 Case 11 救急受診後の再診で低K血症を来していた40歳代女性
 Case 12 低K血症を来したSjögren症候群の40歳代女性

3章 知っておきたい電解質異常
 Case 13 移植後フォロー中に低Ca血症を来した40歳代男性
 Case 14 腎機能低下を伴う高Ca血症を来した80歳代女性
 Case 15 甲状腺外来で偶発的にみつかった高Ca血症の70歳代女性
 Case 16 膵癌切除後に脱水・高Ca血症を来した80歳代男性
 Case 17 糖尿病治療の自己中断後に高P血症を来した50歳代男性
 Case 18 神経性やせ症での入院時に低P血症を来していた50歳代女性
 Case 19 多発ニューロパチーに伴う低Mg血症を来した60歳代女性
 Case 20 しびれ・こむら返りに伴う低Ca血症,低K血症を来した40歳代男性

付録
 ・ おさえておきたい関連検査値・式
 ・ 逆引き疾患目次
 ・ Learning Pointまとめ

column
 ・ 日和らずRA系阻害薬を継続できるか?
 ・ なんでPとっちゃったの?
 ・ 涙液の電解質
 ・ 「mEq」が苦手な人のために
 ・ 最近アツいぞ低Na血症界隈
 ・ K補充に注意!シグモイドカーブで上がる
 ・ 嘔吐だけで低K血症になるか?
 ・ 塩の振り方と体液量
 ・ ブルース・リーと低Na血症
 ・ 恐怖の高Na血症
 ・ 何かと話題の皮膚のNa
 ・ カルシウム神話
 ・ Mピークの話
 ・ フロセミドの使い方
 ・ 緻密斑に関する伊藤先生の偉大なる業績
 ・ 石灰化の原因はCPP(calciprotein particles)だった!?

開く

ページごとに感嘆が止まらない輸液・水電解質の実践書
書評者:小松 康宏(板橋中央総合病院副院長/群馬大名誉教授)

 本書を手に取り読み始めると,数ページごとに「うわー」,「うわー」と感嘆してしまう。輸液・水電解質の基本と臨床の実際とを,著者の深い知識と経験の下に,それを気付かせないようなさらりとした文体で,読者にとってわかりやすいように書かれている。学生や研修医は気軽に読めるだろうし,指導医クラスは,行間に埋もれている腎生理学に気付くとともに,自らの経験を思い返して納得することであろう。

 私は学生時代から輸液・水電解質に関心を持ちつづけてきた。臨床実習で提出したレポートは「麻酔と電解質異常」で,卒後,医師になってからも輸液・水電解質の勉強は楽しかった。いくつかの解説書も出版させていただいたが,今回,長澤将先生の書かれた本書を読み,もう私の出番はないなと感じた次第である。

 輸液療法は最も頻回に指示される薬物療法であり,輸液関連インシデントは医療安全上の課題でもある。血清電解質濃度異常は最も頻回に遭遇する検査値異常であるが,条件反射的に「直ちに是正すべき」と判断することは,不要な検査や治療,業務負荷,さらには医原性の新たな問題を生じかねない。Hb低下に対し,条件反射的に輸血を指示する医師はいない。同様に,電解質濃度の逸脱に対し,やみくもに検査や治療を指示することは賢明ではない。個々の患者の精神社会医学要因を含めた全体像,さらに生理学,各種検査法の限界を理解した上ではじめて,適切な医療・ケアが提供できる。医療の目的が,「医学的異常の是正」から,「患者にとっての価値の最大化」に変わっている今日,輸液療法や電解質管理も同じ視点が求められる。本書の1章は,このような医学医療の大原則を確認するところからはじまっている。

 とはいっても,迅速な診断と治療が必要な電解質異常も少なくはない。2章以降は読者に対し,どのように考え,診断と治療を進めるかについて,症例に沿って読者を誘う。本書を読んで,輸液・水電解質の基本を身につけた若手諸君は,ベッドサイドで電解質異常を見た際に,本書を読み直し,基本知識の理解を深めてほしい。さらには,一人でも多くの若手が,本書に示された参考文献,さらには腎生理学の教科書をひもとき,腎生理学や輸液療法の実践,研究を発展させていただきたいと思う。著者が薦めている『Clinical Physiology of Acid-Base and Electrolyte Disorders』は,UpToDateを創設したBurton Roseの著書であり,私は研修医時代に購入した第3版を今も大切に持っている。

 「日和らずRA系阻害薬を継続できるか?」,「最近アツいぞ低Na血症界隈」,「何かと話題の皮膚のNa」,「フロセミドの使い方」などのコラムは,専門医にとっても興味深い。専門領域にかかわらず,全ての研修医と専門医にぜひ手に取ってほしい書籍である。


腎生理からの威嚇・脅迫にお悩みの先生方へ
書評者:杉本 俊郎(滋賀医大教授・総合内科学)

 水・電解質異常を専門としている腎臓専門医にとって,日々の臨床の現場で,しばしば遭遇する電解質異常への対応に苦慮しているのが現状です。さらに,もっと苦慮しているのが,実際に患者さんに対応している研修医や専攻医の先生方,そして,腎臓を専門とされていない他科の先生方へ,水・電解質異常への(初期)対応をできるように,病態や対応方法を説明することです。

 私は,病態や対応の説明に,「腎生理を理解していただく」という方略をとりました。しかし,この私が採用した方略は,米国において腎臓専門医の専攻者数の減少の原因の一つに「腎生理に威嚇・脅迫される(intimidation by renal physiology)」が挙げられているように,私の周りでは,はなはだ不評です。「患者さんに対応するのに,ハイギョ註)の話や原尿の流れを見ろと言われてもなー」という声が日々聞こえております。

 以上のような日々のモヤモヤのなか,私が敬愛する長澤将先生の新しい著書『Dr. 長澤印 輸液・水電解質ドリル』(先生の10冊目の単著ということで,出版おめでとうございます)を拝読しました。簡潔に説明された総論,そして,本書のキモである,指導医の長澤先生と共に実際に患者さんの診療を行っていると錯覚するような,長澤先生が「これができれば臨床でのトラブルは大体対応できるであろう」と取り上げられた各論の20症例を読了後(巻末のLearning Pointのまとめも秀逸),この先生の新著が,私を,今までの「苦慮」から解放してくれるのではないかと思いました。

 本書を,研修医や専攻医の先生のみならず,彼らを指導する立場にある指導医の先生に推薦いたします。

 最後に,本音を。
 「長澤先生,これ以上,私より,わかりやすい本を書かないで!」

註)ハイギョ(肺魚)は,魚類でありながらその名の通り「肺」を有し,乾燥した環境で長時間生存可能なことから,陸上生物の腎生理を研究する上でしばしば参考にされます。腎生理の父として知られるHomer W. Smith先生は,ハイギョの研究を通じて,腎ネフロンの機能を解明したことが知られています。


超現場至上主義の輸液・水電解質本の誕生!
書評者:龍華 章裕(リウゲ内科小田井クリニック)

 私は最近まで3次救急病院で働いていたが,3次救急病院はその病院の特殊性からか電解質異常の症例に満ち溢れている。病棟で研修医や若手の内科専攻医と診療をしていると,彼らがいかに電解質異常の診療に苦手意識を持っているかがよくわかる。これは,おそらく,「細菌性肺炎→抗菌薬投与」といったような,ルーチンでの対応が電解質異常では現実的ではないからだと思う(そこに面白さがあるようにも思うが)。例えば低Na血症。その原因は多岐にわたり,その治療方法も病態によって使い分けが必要であり,目の前に低Na血症の患者さんがいても,若手の医師は次にどのようなアクションを起こせば良いのかわからないのだ。

 この度,長澤将先生の『Dr. 長澤印 輸液・水電解質ドリル』が上梓された。学会関連のWEB会議でご一緒させていただいたことがあり,一方的に存じ上げていたが,ここ数年は若手の先生が腎臓内科をローテーションしてくると,長澤先生の本を携帯していることが多く,長澤先生の「とっつきにくい腎疾患を若手に教えること」における影響力の大きさを感じざるを得ない状況である。さらに,先日の日本腎臓学会総会(2023年)では,前方の席でたくさんメモされている姿を目にし,長澤先生の影響力はこの勤勉さから来るのか,と思ったのを昨日のことのように思い出す。そんな長澤先生の書かれた本書は,「まさに超現場至上主義」である。

 1章は,各電解質異常の病態が解説されているが,いたずらに細かい病態生理は省いてあり,かつ現場で見ないような病態(例えば,体液量の多い高Na血症など)に関しても,「ここはない」「これもみたことない」と現場目線で潔くカットされている。

 2,3章は実際の症例提示がなされ,現場でよく遭遇する症例を中心に解説されており,網羅性以上に,「〇〇という病態を見たら,まず□□を考える」といったような,超実践的な現場で役立つ知識のオンパレードである。さらに,フロセミドは食事の影響を受けるから,患者さんには「朝起きて,体重を測って,飲むか決めましょう」と話すと良いなど,電解質異常以外の超実践的なクリニカルパールも散りばめられている。何が重要かの順位付けをすることが難しい初学者には,網羅的であるマニュアル本よりも本書のような潔い実践的な本のほうが現場での瞬発力を鍛え,活躍してくれるのではないかと思う。

 この現場のニーズを満たした本書は,きっと電解質異常という深い迷路で行き先を見失っている若手の医師だけでなく,そういった症例の診療をサポートする医療スタッフの助けにもなってくれることは間違いないであろう。

開く

本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

正誤表はこちら

本書の一部を医学界新聞プラスで無料公開中!
医学界新聞プラスのページへ


  • 正誤表を掲載しました。

    2023.11.21