看護・介護する人の腰痛ゼロをめざして腰痛予防と緩和のためのセルフケア
[第6回] セルフマッサージによる腰痛緩和ケア
連載 関恵子
2024.12.10 医学界新聞:第3568号より
(関恵子)
前回(本紙第3567号)紹介したあんま手技を用いた下肢マッサージは,医師あるいはあんまマッサージ指圧師しか施術ができません。そこで筆者は,看護師が実施可能な腰痛緩和ケア方法を検討しており,看護従事者の腰痛緩和に関心のある看護学生さんと一緒に,安全かつ効果的な方法に関する研究を行っています。今回は看護師が実施可能なマッサージ法と,マッサージローラーを活用したセルフマッサージ法について紹介します。
患者さんへ行っている看護マッサージ法を応用する
まずご紹介する看護師が実践可能なマッサージ法は,便秘ケアやハンドマッサージなどで活用される表層の皮膚やリンパ,血管を対象とした軽擦法に,深層にある筋組織までを対象とする圧迫法を組み合わせたものです(写真1)1)。施術部位は下腿とし,皮膚に直接施術するため肌なじみのよいベビーオイルやホホバオイルを使用します。下腿マッサージは両足で計20分の構成です。①オイルを下腿全体になじませる(30秒),②足部から膝窩に向けての軽擦(1分),③足部(足底,外果・内果周辺部,足趾,アキレス腱)の強擦(3分30秒),④下腿内側の軽擦,圧迫,強擦(2分),⑤下腿外側の軽擦,圧迫,強擦(2分),⑥下腿全体の軽擦(1分)を片足ずつ行います。

安全かつ効果的なマッサージ手技を習得するため,あんまマッサージ指圧師の有資格者である筆者の下,看護学生は1か月間の指導を受けた後に施術した。また,施術時間とマッサージ方法を読み上げてくれるアプリを開発し,正確に実施した。
あんまマッサージ指圧師資格を有さない方でも効果的に実践できるかを検証するため,筆者による指導の下,看護学生同士による他者施術前後の腰部脊柱起立筋における組織血液循環動態を測定しました。その結果,施術後20分以降より組織酸素飽和度の上昇,25分以降より脱酸素化ヘモグロビンの減少が有意に認められました。施術による下腿筋ポンプ作用によって腰部脊柱起立筋内の血行が促進していると言え,筋疲労物質の蓄積や発痛物質の産生を防いでいる可能性が示唆されています2)。ただし,非介入日における安静臥床でも同様の組織血液循環動態が認められたため,下肢マッサージ単独の効果とは言いきれません。このマッサージ方法は軽摩が中心であ...
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