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非特異的腰痛の運動療法[Web動画付] 第2版
病態をフローチャートで鑑別できる

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非特異的腰痛の症状に応じた運動療法を解説し、好評を博した書籍の改訂第2版。今版では、「前屈動作」と「後屈動作」では鑑別できない症例に対応し、「側屈動作」と「回旋動作」をフローチャートに追加。さらに「病期別」という視点から、「急性期」「亜急性期」「慢性期」別の運動療法とホームエクササイズを、Web動画でわかりやすく解説する。また、その根拠となるメカニズムを、豊富なエビデンスをもとに解説する。

荒木 秀明
発行 2023年12月判型:B5頁:248
ISBN 978-4-260-05006-7
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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  • 序文
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動画より一部をご紹介します。

・股関節トルクテスト


・不安定下でのブリッジと肩伸展によるモーターコントロールエクササイズ

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推薦の序/第2版の序

推薦の序
 10年近くを経て心待ちにしていた第2版が刊行されたことは率直に嬉しい.その間,腰痛の保存療法に対する荒木氏の探究心は衰えることなく,日夜,海外の文献を読み,国際的課題に関して臨床研究に取り組み,その成果は第9~11回の国際腰痛骨盤痛学会(Singapore, Antwerp, Belgium,Melbourne, Australia)にて発表された.私もこれらの国際学会に同行したが,その都度,荒木氏は自分の研究発表内容について著名な研究者に意見を求め,次の課題に向かって取り組んできた.その姿勢と達成後の自信には敬服するのみである.
 第2版は,初版に比べてかなりボリュームアップし,充実した内容となっている.高齢者の腰痛に関しては,体幹筋量を増加させることの重要性が評価・治療アプローチに反映されている.また,腰痛の発生源である脊柱,骨盤,股関節に加えて,体幹と下肢の機能に関与する大腰筋,多裂筋,胸腰筋膜の病期ごとの病態も理解しやすい.
 臨床家にとって最も必要な腰痛の理学療法評価と運動療法ならびにホームエクササイズは,著者の過去10年間の臨床と研究に裏付けされたものとなっている.初版でも好評だった評価のフローチャートに,前屈・後屈時痛群に加えて回旋時痛群・側屈時痛群が加わった.問診では,具体的な質問項目とその背景が図表とともに記載されており,臨床経験の浅いセラピストにも理解しやすい.視診には側弯の評価が加わり,自動運動テストには胸腰筋膜伸張テストが加わり,新たに筋機能テスト,末梢神経に対する神経伸張テストが入るなど,必要な項目が追加されている.
 第2版で著者が最も力を注いだのは,第5~7章の運動療法とホームエクササイズであろう.第5章では多裂筋・腹横筋の生理学的メカニズムに基づいた治療アプローチとホームエクササイズが,第6章では胸腰筋膜に対する静的・動的筋膜リリース手技およびストレッチ法が,第7章では大腰筋由来の側弯症に対する徒手アプローチとホームエクササイズが,いずれも動画を用いてわかりやすく説明されている.
 最後の第8章「非特異的腰痛の治療理論の変遷とシステマティック・レビュー」は,内容・図表とも大幅に増えているので研究者にも一読してほしい.

 腰痛の臨床に携わる諸氏はその解決のために,腰痛を学ぶ学生諸君はその臨床の理解を深めるために,「腰痛専門バカ」と言われるほど腰痛の臨床に身を投じてきた荒木氏のこの1冊を是非,熟読されたい.

 2023年10月
 札幌医科大学名誉教授,北海道文教大学名誉教授 宮本 重範


第2版の序
 初版刊行から10年余りが過ぎ,腰痛の研究・診療は大きな変化を遂げた.2019年に改訂された『腰痛診療ガイドライン 第2版』では,重篤な脊椎疾患の可能性がある「red flags sign」,神経症状を伴う「特異的腰痛」,神経症状のない「非特異的腰痛」がフローチャートで分類されている.腰痛患者のトリアージとプライマリ・ケアを主体としており,日本の腰痛診療の実情にあったガイドラインとなっている.その中でも多くを占める非特異的腰痛は,運動療法を中心とする保存療法が優先されるため,詳細な機能評価に基づく腰痛発生源の同定が急務となっている.
 初版では,非特異的腰痛の前屈・後屈時痛群に対して,疼痛誘発テスト・筋機能テストを行い,障害部位に応じた積極的安定化運動のフローチャートを提示した.しかし,高齢者の腰痛症例では脊柱変形による回旋制限と側屈制限が顕著だが,疼痛誘発テストでは陰性例が多く,初版のフローチャートのみでは対処が不十分であった.
 そこで第2版では,非特異的腰痛の前屈・後屈時痛だけではなく,腰椎由来の回旋制限と側屈制限を追加した.回旋制限は,筋膜性腰痛の主体をなす胸腰筋膜の機能障害を,滑走性と筋機能から鑑別し,リリースとストレッチから積極的安定化運動へと進む.側屈制限は,腰椎変性側弯症の進行に関与する大腰筋の機能障害を,股関節の可動域と圧痛から鑑別し,リリースから側弯を矯正する非対称性安定化運動へと展開する.加えて,モーターコントロール障害の中心的役割を担う多裂筋に対する運動療法を,「疼痛の反射抑制による縮小相」である急性期,「炎症性サイトカイン増加相かつ筋線維TypeIからTypeIIへの移行相」である亜急性期,「萎縮と脂肪浸潤相」である慢性期に分けて,各病期に特化した運動療法を提示した.いずれも,写真や動画を用いて具体的かつ詳細に示したところが第2版の特長となっている.
 本書は,基本的には初版と同じ概念で構成されている.詳細な問診や自動運動テスト等から腰痛の発生源を同定し,患者自身による運動で腰痛に対処するという捉え方である.そして,本書で一貫しているテーマは,「痛み」である.
 この改訂版が,腰痛保存療法における新たな手がかりになれば幸いである.

 最後に,企画段階から動画撮影までアドバイスいただいた日本臨床徒手医学協会事務局長の水谷哲也氏,オリジナルイラストを描いていただいた岩間絢子氏,今回も読者の目線から理解しやすいようにご編集いただいた医学書院編集部の金井真由子氏に感謝の意を捧げたい.

 2023年10月
 荒木 秀明

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第1章 今なぜ腰痛が問題なのか?
 I 腰痛の実態
  1 疫学的観点から
  2 経済に及ぼす影響
  3 腰痛の危険因子
 II 高齢者の腰痛
  1 疫学的観点から
  2 加齢と脊柱変形
  3 腰椎変性側弯症とその要因
 III 腰痛の治療戦略
  1 腰痛の自然経過
  2 これからの腰痛治療

第2章 腰痛を理解する──構造・機能と病期の関係
 なぜ,痛いのか?
 I 椎間板
  1 疼痛発生のしくみ──神経解剖学的観点から
  2 臨床解剖
  3 椎間板のバイオメカニクス
 II 椎間関節
  1 疼痛発生のしくみ──神経解剖学的観点から
  2 臨床解剖
  3 椎間関節のバイオメカニクス
 III 仙腸関節
  1 疼痛発生のしくみ──神経解剖学的観点から
  2 臨床解剖
  3 仙腸関節のバイオメカニクス
 IV 股関節
  1 疼痛発生のしくみ──神経解剖学的観点から
  2 臨床解剖
  3 股関節のバイオメカニクス
 V 大腰筋──腰椎変性側弯症との関連から
  1 大腰筋の解剖,バイオメカニクス,病態的特徴
  2 腰椎変性側弯症
 VI 多裂筋
  1 多裂筋の解剖
  2 多裂筋のバイオメカニクス
 VII 胸腰筋膜
  1 臨床解剖
  2 神経支配
  3 胸腰筋膜のバイオメカニクス
  4 胸腰筋膜の病態生理学

第3章 腰痛をみわける──診断的トリアージ
 I 腰痛の分類
  1 非特異的腰痛が慢性化する要因
  2 腰痛のガイドライン
 II 症例提示──red flags signに注意する
  1 red flags sign
  2 green light
  3 yellow flags sign

第4章 非特異的腰痛を評価する──理学療法アプローチ
 フローチャートでみる理学療法評価
 I 問診
 II 視診
  1 体型
  2 歩行
  3 態度,外見
  4 姿勢
  5 腰椎変性側弯症
  6 下位交差性症候群
 III 自動運動テスト
  1 前屈動作
  2 後屈動作
  3 側屈動作
  4 回旋動作
  5 腿上げテスト
  6 股関節可動域テスト
  7 トーマステスト
 IV 疼痛誘発テスト
  1 腰椎の疼痛誘発テスト
  2 仙腸関節の疼痛誘発テスト
  3 股関節の疼痛誘発テスト
  4 触診テスト
 V 他動運動テスト
  1 腰椎の他動運動テスト
  2 仙腸関節の他動運動テスト
  3 股関節の他動運動テスト
 VI 筋機能テスト
  1 能動的下肢伸展挙上(ASLR)テスト
  2 片脚立位テスト
  3 歩行動作の観察
 VII 神経伸張テスト

第5章 多裂筋・腹横筋の運動療法とホームエクササイズ
 I 運動療法をはじめる前に
  1 運動療法の目的
  2 運動療法の基本方針
 II 急性期
  1 急性期の生理学的メカニズム
  2 急性期の運動療法
  3 急性期のホームエクササイズ
 III 亜急性期
  1 亜急性期の生理学的メカニズム
  2 亜急性期の運動療法
  3 亜急性期のホームエクササイズ
 IV 慢性期
  1 慢性期の生理学的メカニズム
  2 慢性期の運動療法
  3 慢性期のホームエクササイズ

第6章 胸腰筋膜の運動療法とホームエクササイズ
 I 胸腰筋膜性腰痛の運動療法
  1 結合組織に対する徒手・運動療法
  2 胸腰筋膜性腰痛の特徴
 II 急性期
  1 胸腰筋膜に対する静的リリースの効果
  2 急性期の運動療法とホームエクササイズ
 III 亜急性期
  1 胸腰筋膜に対する動的リリースの効果
  2 大殿筋と広背筋の共同収縮の効果
  3 亜急性期の運動療法とホームエクササイズ
 IV 慢性期
  1 胸腰筋膜に対するストレッチの効果
  2 不安定下でのモーターコントロールエクササイズの効果
  3 慢性期の運動療法とホームエクササイズ

第7章 大腰筋の運動療法とホームエクササイズ
 I 大腰筋の運動療法
 II 急性期
  1 急性期腰痛群に対するリリースの効果
  2 側弯症に対する自己矯正の効果
  3 急性期の運動療法
  4 急性期のホームエクササイズ
 III 亜急性期
  1 亜急性期の大腰筋に対する運動療法の効果
  2 亜急性期の運動療法とホームエクササイズ
 IV 慢性期
  1 慢性期の大腰筋に対する運動療法の効果
  2 慢性期の運動療法とホームエクササイズ

第8章 非特異的腰痛の治療理論の変遷とシステマティック・レビュー
 I 脊柱の不安定性とは
  1 機能的脊柱単位
  2 機能的脊柱単位の不安定性
 II 脊柱安定化運動の変遷
  1 腹腔内圧理論
  2 後部靱帯系理論
  3 体幹深層筋制御理論
 III 深層筋群に関するエビデンス
  1 多裂筋
  2 腹横筋
 IV 表層筋を含めた筋膜系のエビデンス
  1 胸腰筋膜(後部斜方向安定化システム)
  2 腹部筋膜系(前部斜方向安定化システム)
  3 大腿筋膜系(外側方向安定化システム)
 V モーターコントロールエクササイズのシステマティック・レビュー
  1 モーターコントロールエクササイズとは
  2 腰部多裂筋の形態に対する効果
  3 腰痛に対する効果
  4 腰部多裂筋の形態変化と,腰痛または腰痛関連性障害に相関性はあるか?
  5 モーターコントロールエクササイズの効果

索引

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腰部疾患の評価および運動療法に悩むセラピストに具体的な方策を示す一冊
書評者:東 裕一(南越谷病院リハビリテーション科)

 腰痛および体幹機能障害は,理学療法士が臨床において頻繁に直面する課題の一つである。理学療法士の特殊性は人の運動を扱うことにある。そのため上肢の障害に対する肩甲骨の位置の修正,下肢の障害に対する理想的な荷重の回復および初動の力源という意味でも,腰部骨盤帯もしくは体幹に対する運動療法は基本となることが多い。腰部に対する運動療法は,疾患にかかわらず,ADLの拡大に向けた理学療法の根幹になると言える。

 本書では,腰部骨盤帯に関して,構造と機能および評価から解説されている。そのため,書名にある非特異的腰痛だけではなく,多くの腰部疾患および体幹機能についての基本事項が記載されている。宮本重範氏の教えが生かされ,現在では「医療面接」と言われることも多い「問診」および「視診」を重視しながら,自動運動時の痛みの発現もしくは制限からフローチャート(アルゴリズム)が展開されている。医療面接の経験が少ない理学療法士にとっては,「問診」の項目が参考になるであろう。

 腰部疾患に対する運動療法には個別性が必要と言われているが,必須の評価項目,それに対する運動療法は全く確立されていないのが現状であり,議論するためのたたき台となるものが必要とされている。フローチャート内の検査では,難しい手技が入らないように配慮されている。今後は運動器理学療法に関して,本書をベースに,さまざまな腰部疾患および診療形態でのアルゴリズムを話し合うことが重要であろう。

 運動療法については,腰部骨盤帯の安定化に重要な筋群について,急性期,亜急性期,慢性期と病期に分けて提案されている。負荷量や対象とする筋群の組み合わせなど臨床場面で悩んでいる理学療法士も多いのではないだろうか。本書では具体的な方法論が紹介されている。一部でスリングを使用した運動が紹介されているが,まだ完全に一般化された道具ではないので,代替案の提案が待たれる。また,わが国の臨床でよく目にする側弯を伴う中高齢者に対する検査および運動療法は参考になると思われる。

 第8章のシステマティック・レビューでは,治療理論の変遷がわかりやすく解説されているが,モーターコントロールエクササイズのシステマティック・レビューでは拡大解釈が見受けられる。臨床における介入研究のデザインとその効果判定は難しく,十分な研究報告が出ていないことがわかる。わが国において不十分なこの研究の隙間を埋めていただけることを期待したい。

 臨床において,腰痛あるいは体幹機能に対するさらなる治療効果を知りたい,あるいは臨床研究を行いたい方には,ぜひご一読いただきたい。


腰痛に対する「エビデンスに基づいた運動療法」を実践するための一冊
書評者:葉 清規(浜脇整形外科リハビリセンター)

 著者の荒木秀明先生は,腰痛に対する臨床と研究に取り組まれる理学療法士として,私が尊敬する先生のお一人です。

 腰痛に対する理学療法の方法論は数多く紹介されていますが,医療技術として,理学療法はエビデンスに基づいて行われるものであり,エビデンスの臨床応用として,Evidence-Based Practice(利用可能な最良のエビデンス・医療者の専門性・患者の価値観を統合し,最善の医療を行う)という概念が重要となります。エビデンスとは臨床研究です。研究には,研究を実践する立場と,研究結果を解釈(活用)する立場があります。荒木先生はご自身の臨床データを,国際腰痛学会・国際骨盤痛学会や日本腰痛学会で学会発表されるなど研究を実践しています。しかし,それだけではなく,先生の真骨頂は,臨床疑問の解決に結びつく数多くの先行研究の成果を理解して臨床応用する,「研究結果を解釈する立場」を高いレベルで行われているところにあります。『非特異的腰痛の運動療法 第2版』には,そのエッセンスが盛り込まれています。

 腰痛は,画像所見から推測する病態と理学所見が一致しないことが多々あります。私自身,臨床において先生が紹介されている骨盤の正中化や,腰痛の原因を探索するフローチャート,それに適した運動療法を参考にしています。第2版では,臨床で遭遇する機会も多い脊椎疾患の腰椎変性側弯症についても取り上げられています。近年,国内でも脊椎後弯変形に対する手術療法や運動療法の研究報告がみられます。しかし,高齢者の脊椎疾患においては,純粋な後弯変形だけでなく,後側弯変形を呈する症例も多く,臨床では治療に難渋する場合もあります。また,それに対する運動療法のエビデンスも明らかではありません。

 本書では,評価のフローチャートに「側屈・回旋動作」が追加されました。臨床では,画像所見上の腰椎変性を改善することは困難と考え,運動療法の対象としていない場合もあるかもしれませんが,そこには運動療法の対象となる病態が潜んでいる可能性もあります。本書を熟読することで,高齢者の腰痛に対する運動療法の治療展開が広がることを確信しました。

 また,本書ではエビデンスを基に,病期別の運動療法を系統的に解説されています。特に運動療法の必要性が明らかとなっていない急性期・亜急性期の腰痛についても,先行研究のエビデンスを基にわかりやすく解説されており,腰痛に対する治療経験が豊富な方々だけではなく,治療経験が少ない方々にも理解しやすい内容となっています。ぜひ,これらの治療展開に関する臨床データを蓄積し,腰痛に対する運動療法の新たなエビデンスの構築につなげていただきたいです。

 本書は,腰痛に対する運動療法について,経験則や基礎医学的観点だけではなく,臨床研究というエビデンスに基づいて運動療法を実践するに当たり参考になる書籍です。腰痛に対する臨床・研究にかかわっている方,これから学びたいと考えている方は,ぜひ一度手に取ってみてください。

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参考文献

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