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医学界新聞

看護・介護する人の腰痛ゼロをめざして 腰痛予防と緩和のためのセルフケア

連載 伊丹琢,関恵子

2024.10.08 医学界新聞(通常号):第3566号より

 腰痛予防のための正しい姿勢を看護動作の中で身につけることは,不良姿勢が習慣化する前の初期教育から徹底することが重要です。伊丹先生には2021年度より本校看護学部1年生対象の「基礎看護技術Ⅰ」で,「看護援助をする上で基本となるボディメカニクスの活用と技術」をテーマに腰痛予防教育システムの機器説明と活用方法を担当していただいています。今回は,大学での基礎看護教育における腰痛予防教育の実際をご紹介します。

(関恵子)

 看護学生の腰痛の実態を調査した研究では,日常で腰痛を感じる学生は74.3%,実習中に腰痛を感じる者は56.8%と,多くの看護学生も腰痛を抱えていることが報告されています1)。本学においても,1年生へのインタビュー調査で演習や実習による腰痛や腰部倦怠感があるとの声や,4年生へのインタビュー調査では看護援助だけでなく,長時間の静的動作となる患者さんとの会話や看護記録の作成等で腰痛を自覚するとの声を聞きました。さらに,腰痛は実習への負荷を増幅させるとの声も聞かれます。

◇大学入学直後から腰痛予防への意識づけをする

 本校では1年生から演習科目「基礎看護技術Ⅰ」の中で90分間×2コマを用いて,腰痛予防につながる看護動作習得を目的としたボディメカニクスに関する座学と演習を行っています。シーツ交換の際は,前傾姿勢やひねりが腰部負担の大きい動作となるので,ベッドの高さを上げる(身長の45%の高さ),広いスペースでひねらず行う,膝を曲げて腰を落とすことが重要であることを正しい看護姿勢と共に学びます()。

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 シーツ交換時における正しい看護姿勢
ベッドの高さを上げる,広いスペースでひねらず行う,膝を曲げて腰を落とすなど腰部負担の少ない動作姿勢

◇可能であれば座ってケアをする職業風土の醸成を

 看護師の職業風土として患者さんのベッドサイドで座って話したり,援助をしたりすることはまだまだ一般的ではありません。腰痛予防教育を受けて間もない2年生の実習では,患者さんの椅子を借りて会話やバイタルサイン測定を実践しているものの,臨床現場で働く看護師像を見て学びが増えた4年生になる頃には座って患者さんと会話をする,援助をするといった行動が非常に少なくなっています。臥床している患者さんとコミュニケーションをする上で重要となる「相手と目線を合わせて話す」といった行動は,座らない限り腰痛要因となる前傾姿勢にならざるを得ません。安全かつ質の高い看護・介護を患者さんに提供するには,われわれの身体は資本となります2,3)。腰痛予防意識と行動を定着させていくためにも,卒前・卒後にかかわらず腰痛予防教育は生涯教育として行っていく必要があると筆者は考えます。

 腰痛予防のための生涯教育においては,腰痛になる前から腰痛予防意識を定着させるための危機予知トレーニング(以下,KYT)を導入することも効果があります。看護基礎教育の演習や実習中に腰痛を感じた場面に関して,原因および今後の対策をKYTの手法を用いて継続的学習することで腰痛予防意識が定着し行動変容につながります。

(執筆:関恵子)

 筆者は滋賀県立大学人間看護学部の「基礎看護技術Ⅰ」において,腰痛予防教育の効果をさらに高めるため,自ら開発した腰痛予防教育デバイス「LBPP」を活用して,学生が自身の看護動作を客観的に確認し,ボディメカニクスを活用した看護動作,介助動作を身に着けられるよう教育と支援を行っています。

 前回(第3565号)紹介した通り,LBPPはアラーム機能の活用によって自らの看護動作姿勢を客観的に把握し,腰痛予防意識定着と行動変容につなげることを目的......

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