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  • 看護・介護する人の腰痛ゼロをめざして 腰痛予防と緩和のためのセルフケア(2)腰部負担改善をめざした腰痛予防教育システムの開発(伊丹君和)

医学界新聞

看護・介護する人の腰痛ゼロをめざして 腰痛予防と緩和のためのセルフケア

連載 伊丹君和

2024.08.13 医学界新聞(通常号):第3564号より

 厚労省が『職場における腰痛予防対策指針』1)を2013年に改訂しました。これにより,原則人力での抱え上げは行わず,福祉機器の活用を促すことで,「患者を持ち上げない!抱え上げない!」が看護・介護現場では合言葉として浸透してきています。しかし,腰痛は腰部への荷重だけで発生するものではなく,前傾姿勢や不自然な姿勢,長時間の静的作業姿勢が関与します。本稿を執筆する伊丹君和教授は,看護師が腰痛を起こしやすい姿勢すなわち“前傾姿勢や体幹部のひねり動作”に着目し,正しい姿勢で業務を行うための行動変容につながる教育システムを開発されてきました。腰痛予防教育システムは看護・介護職の腰痛予防意識・行動意欲を高めてくれます。本稿では腰痛ゼロをめざすにあたり,低コストで明日からでも実践可能な一人ひとりの腰痛予防意識・行動変容の必要性を再認識していただきたいと考えています。次稿から2回に分けて紹介する本教育システム活用の実際を含め,腰痛予防のための組織づくりに役立てていただければ幸いです。

(関恵子)

 病棟看護師を対象とした腰痛実態調査を行った結果,腰痛発生率は49.6%と減少傾向にあるものの,高い現状であることがわかりました2)。さらに,看護・介護職ともに腰痛発症時の姿勢は「中腰姿勢」「長時間の立ち作業」が多く,腰部負担から腰痛へと“徐々に”進展していることが明らかとなっています2, 3)。しかし,「仕事中に腰痛を起こした場合に労災申請をしない」と回答した人の割合は看護・介護職ともに高値であり,その理由としては「仕事が原因かどうか不明だから」が最も多かった3)。これは看護・介護職に生じる腰痛が業務による腰部筋疲労の蓄積によって“徐々”に発症し,再発と軽快を繰り返している人が多いことに関連していると考えられます。業務上発症する腰痛が労災に該当する認識が一人ひとりにないこともまた,腰痛発症率を高めている要因と考えられるのではないでしょうか。

 2013年に『職場における腰痛予防対策指針』1)は改訂されましたが,腰痛予防教育を学生時代や職場で受けたことがある方はいずれも半数以下という調査結果があり2),腰痛予防に対する「意識」改善も含め,腰痛予防教育および腰痛対策を組織として行っていくことが急務であると筆者は考えています。

 勤務中の腰部負担状態をセルフモニタリングすることは,腰痛発症リスクのある姿勢を回避する行動につながることが示唆されています4)。しかし,簡便かつ日常動作に支障なく客観的に前傾姿勢を測定可能な機器は見当たりません。そこでわれわれは,腰痛予防に対する意識改善と,看護・介護中の姿勢改善を図ることを目的に,自己の動作姿勢を客観的に評価する腰痛予防教育システムの開発を進めてきました5...

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