看護・介護する人の腰痛ゼロをめざして 腰痛予防と緩和のためのセルフケア
[第1回] 患者に安全な医療を提供するうえで,身体は資本!
連載 関恵子
2024.07.09 医学界新聞(通常号):第3563号より
本連載では,看護師の腰痛問題の現状と,腰痛予防・改善に向けたこれまでの取り組みや,臨床現場で明日から実践できる腰痛予防・緩和ケアについてご紹介します。
増加の一途をたどる看護・介護従事者の腰痛発生件数
厚労省が調査した「令和4年業務上疾病発生状況」2)によると,4日以上の休業を要した業務上の負傷に起因する疾病発生件数は延べ7081件,うち腰痛の発生件数は5959件と全体の84.2%を占めており,腰痛はわが国の主要な職業病と言えます。
業種にかかわらず仕事による腰痛を防ぐため,1994年に「職場における腰痛予防対策指針」が制定され,腰痛の原因となる重量物を取り扱う事業場などに対して啓発や指導が始まりました。腰痛発生件数が多かった製造業を中心とした有痛発生件数は減少傾向にあるなか,医療施設や社会福祉施設といった保健衛生業では,入院患者の高齢化が進み,その介助度の高さも相まって増加の一途をたどっています(図)2)。
腰痛は心身の健康を害するだけでなく,腰痛により動作制限が生じうることで,看護・介護援助時間の延長や痛みに耐えながら援助を実施することにつながり,看護・介護の質の低下を招くことが研究により明らかにされています3)。
求められる社会・組織的な腰痛予防対策
筆者は看護従事者の腰痛予防・緩和に向けた今後の看護研究課題の明確化および看護実践への示唆を得るために,過去20年間(1999~2019年)に発表された90本の論文の検討を行いました1)。看護従事者が行っている腰痛緩和ケアは,ボディメカニクスの活用と生活の工夫が大半を占めており,次いで何もしない,薬物治療,コルセットや腰痛ベルトの着用が報告されています。腰痛ゼロに向けては,こうした個人レベルの取り組みだけでなく,社会・組織的な腰痛予防・緩和ケアも求められます。介護分野では令和3年度介護報酬改定による介護職員処遇改善加算及び介護職員等特定処遇改善加算の算定要件の一つである「...
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