レジデントのための患者安全エッセンス
[第5回] カルテにしっかり書き,患者も自分も守りたい
連載 綿貫聡
2024.08.13 医学界新聞(通常号):第3564号より
診療録(カルテ)は診療経過の記録であり,作成者の行動や考えをケアチームのメンバーに伝えるためのツールでもあります1)。カルテ記載は,医師法第24条で「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と規定され,違反した場合には50万円以下の罰金が科せられます。すなわち,医師は必要事項を適切に記載する必要があるのです。
これらの内容は卒前・卒後の医学教育の中でも強調され,現場の医師もその重要性を理解しているものの,実際には不十分な記載や報告の遅れが事後に指摘されるケースが多いと筆者は感じています。そうした実感を明らかにしてくれたのがカナダ発の論文です2)。臨床研究を行ったのは,カナダ国内の医師会員に対して医療に関連する法的な支援や助言,教育を行い,医療訴訟事例に関するデータベースも有するCMPA(The Canadian Medical Protective Association)です。この研究では,2016年1月1日~20年12月31日までにCMPAが支援した医療法務案件3万7866件の中で,救急科の医師に関連したカルテ記載1628件について記述的調査と内容分析が行われました。
同論文では,最終的に解析の対象となった391件の中で無作為に抽出された79例について,カルテ記載に問題があるとされた内容がまとめられています(表)1)。カルテ記載がない/不十分であるとの指摘は計117回記録され,最も問題が多かったのは病歴,臨床検査,診断,鑑別診断などを含むケアの初期評価と精査を行う段階(n=69)でした。カルテ記載の不十分さと直接の因果は証明されていませんが,患者の状態の安定化を図るとともに,集まってきた情報の統合が行われる診療の初期段階では,担当医に認知的な負荷が大きくかかることは間違いがありません。
●冒頭の会話を分析する
忙しい
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