MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
書評
2024.03.11 週刊医学界新聞(レジデント号):第3557号より
《評者》
本郷 一博
伊那中央病院院長
信州大名誉教授
座右に置きたい解剖学テキスト
愛知医科大学医学部名誉教授の中野隆先生監訳による『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』の待望の第2版が刊行された。本書はAnne M. Gilroy氏により著されたAnatomy:An Essential Textbook(3rd Edition)を,単に原書の和訳にとどまらず,豊富な美しくわかりやすいアトラスと監訳者により全編テキストの表現法を統一された読みやすい日本語,さらに監訳者により随所に「監訳者注」として説明を加えられている点が,本書の大きな特徴といえる。
本書は日本語で書かれた単なる解剖学のテキスト,あるいは解剖学洋書の単なる和訳書とは全く異なる。原書にも大きな特徴があり,第3版は,各部の冒頭に目次が追加され,各章とセクション,そしてその中に表や161項目に及ぶBOXが掲載され,新たな図版が第2版に比して100以上追加され,多くの図版が改訂されている。本書では,オレンジ色で「発生学の観点」,青色で「臨床医学の視点」と色分けしてBOXが挿入されており,単なる解剖学の知識のみでなく,発生学の観点,臨床医学の視点からより深く解剖を理解することができる構成になっている。解剖の内容を理解するのに有用な画像,X線写真,模式図が多く掲載されているのも特徴である。各部の終わりには,復習問題が掲載されているが,この内容も単なる解剖の知識を問うものではなく,日常臨床にも大変有益なものである。
「単に原書の和訳にとどまらず」と前述したのは,随所に「監訳者注」が付記されているためである。テキスト,表,BOXの説明,さらには復習問題でも,全ての部にわたり監訳者がきめ細かく必要に応じて説明を追加している。これにより読者は,より正確に発生学の観点からそして臨床医学の視点から,解剖を理解することができる。そして,臨床医学を解剖学の観点からより深く理解できる。これらの内容が,美しいアトラスと共にわかりやすい日本語で記述されていることが,本書の価値を格段に高めているものと思われる。
本書は,このように臨床に即した内容が豊富に盛り込まれているため,解剖学を学ぶ学年の医学生にとどまらず,実際に患者を診る高学年の医学生,さらには臨床医,また医師のみならず,解剖の知識を必要とする看護師をはじめとするその他多くのメディカルスタッフにとっても極めて役立つ有用なテキストであると確信している。座右に置きたい解剖学テキストである。
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