サイエンスイラストで「伝わる」科学
[第5回] 物語の力で見る人を引き込む
連載 大内田美沙紀
2023.09.18 週刊医学界新聞(通常号):第3533号より
擬人化やデフォルメなどを使ったやさしい描写で,伝える対象を怖がらせない工夫についてこれまで述べた。今回はさらに「物語」の要素を加えることによって,よりわかりやすく,見る人を引き込むテクニックを紹介したい。
突然だが,「セントラルドグマ」を子どもにもわかるように説明せよ,と言われたら皆さんはどのように説明するだろうか。「DNA」「RNA」「複製」「転写」「翻訳」という言葉を使って理路整然と説明してもおそらくさっぱり伝わらないだろう。ここで使えるのが「物語で例える」ことだ。
昔,セントラルドグマについて,誰にでもわかりやすく解説した記事を制作する機会があった。この時,当時の京都大学iPS細胞研究所でのサイエンスコミュニケーターの同僚が,セントラルドグマを「図書館にあるレシピ本から料理を作る」という例え話で,見事に表現してみせた1)。DNAを図書館にあるレシピ本,タンパク質を完成した料理と見立てると,持ち帰ることができないレシピ本を書き写したり,材料を集めたり,料理を作ったりする役割を担うのがRNAとなる。私はその時挿絵を担当し,RNAを女の子に擬人化してケーキを作る過程を描いた(図1)。こうした複雑な機序こそ,例え話で表現したほうがはるかにわかりやすいだろう。
先のセントラルドグマの物語は一つのイラストで表現したが,第1回「手順を伝えるイラスト」で述べたように,コマ割りを使って物語を伝えること
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