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書評
2023.04.24 週刊医学界新聞(看護号):第3515号より
《評者》 佐々木 淳 医療法人社団悠翔会理事長・診療部長
自分が望む生き方をイメージできる
◆在宅医療と看護師,重なるコンセプト
久しぶりにアンダーラインをたくさん引きながら読んだ。看護師としてどんな働き方=生き方を選択するのか。医療機関経営者として,多くの看護師を採用し,そのキャリアアップに伴走してきた立場で考えさせられることが多かった。
僕らがかかわる在宅医療は,もともと看護との親和性が高い。というよりも,在宅医療のコンセプトは看護のコンセプトとかなり重複する。ICUベッドで患者のバイタルを追い,指示通り医療処置をするのではない。暮らしの中で,その人が「患者」ではなく,一人の家族,一人の地域住民として最後まで生き切れるように,その人にとっての最善の選択を共に考え,そっと支援する。
「ケアリング」という言葉が紹介されていた。対象者との関係性,対象者の尊厳を守り大切にしようとする倫理的態度,気遣いや配慮が具体的な援助行動として示され,それが対象者に作用する。そしてケアする人とされる人,双方の人間的な成長をもたらす。まさに在宅医療における医療者と患者とのかかわりのプロセスそのものだ。ケアリングのサイクルの中で共に仕事をする医師としてどうあるべきなのか,あらためて考えさせられた。
◆急速に変化する時代でどんなキャリアを描くか
同じ医療者として,医師と看護師,キャリアの悩みも重複する。少子高齢化と疾病構造の変化に伴い求められる役割の変化は医師と同じ。DXや働き方改革などベテランが直面する社会環境の変化も医師と同じ。さまざまなものが急速に変化していく時代において,ジェネラリストの道を究めるのか,スペシャリストの道を進むのか,そしてその先にあるマネジメントのプロをめざすのか。
在宅医療における看護は,その人の生きることの全体をケアできるジェネラリストであるとともに,在宅というフィールドで求められるスペシャリストとしての実践能力を持ち,そして時にチームをマネジメントする力も求められる。ジェネラリストも1つのスペシャリティという議論もあるが(ここでは詳細は割愛したい),在宅医療はその全ての要素を包含する,医療職にとって最適なキャリアを模索するための最適な領域でもあるのかもしれない。
これまでの豊富な経験を生かしながら日々のケアにかかわるとともに,新しい考え方で再整理していく。本書を読み進めていくと,これから先も輝き続けるために,自分が望んでいる生き方はどんなものか,社会の中で活躍し続けるために新たに獲得すべきものは何か。具体的にイメージできる。
社会からフェードアウトするのではなく,これまで獲得してきた強みを基軸に成長を続けていく。より良い人生の選択を重ねていく。女性の社会進出のトップランナーである看護職が,人生100年時代,定年にとらわれない働き方で,年齢に関係なく自己実現していく。そんな超高齢社会を豊かに生きることを体現するロールモデルとしても輝き続けてほしい。
当法人にも少しずつプラチナナースが生まれつつある。彼女たちが力を発揮できる,成長を続けられる環境を作っていきたい。そして僕も負けずに頑張りたい(ちょっと心もとない生え際君にも,もう少し頑張ってほしい)。
(「訪問看護と介護」28巻2号掲載)
《評者》 直井 亜紀 さら助産院院長
ケアとデザインを“わくわく”でつなぐ
この本には,“わくわく”が溢れています。...
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