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はたらく看護師のための自分の育て方
キャリア選択に活かす気づきのワーク17

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プラチナ世代の先輩ナースと、ビジネススクールで大人を育てる経営学者が共鳴した、人生の岐路に直面する世代のための知恵と勇気をこの1冊で。専門職である看護師ならではのライフサイクルに添って構成する第I部で学び、現場あるある事例に基づく17ワーク[MBA式思考トレーニング]の第II部で心がまえを養ってみてください。休み休みでいいんです。あなたが自ら選ぶ扉のその先へ、本書はご案内します。

川﨑 つま子 / 高田 朝子
発行 2023年01月判型:A5頁:224
ISBN 978-4-260-05059-3
定価 2,200円 (本体2,000円+税)

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はじめに

 「あなたは生まれ変わっても、また看護師になりますか?」と質問されたなら、筆者は迷うことなく「はい」と答えます。この職業に出会えたことに心から感謝し、これからの人生も看護師であり続けたいからです。ただ、はじめからそう考えていたわけではなく、前半生は紆余曲折の連続でした。岩手県で育った少女時代、東京に近づく手段として両親を説得して埼玉県の看護学校に進学したのがこの職業を選んだ不純なきっかけでした。就職してからも、第一希望の脳外科病棟に配属されてすぐ職場不適応になり、数か月で体重が13kg痩せる試練の時期を迎えました。その後、現場の業務をひと通り覚えた若手時代には「できる(ようになった)自分」に陶酔したり、周囲の同僚を舐めていたりした時期さえあったように思います。その後にさらに出会った挫折の経験を振り返って恥ずかしくもあります。自らの未熟さから患者を深く傷つけたこともありました。
 看護師が100人いれば、100通りの個性と100種類のキャリア選択があります。還暦を過ぎてプラチナナースと呼ばれる年代にある筆者の願いは、同じ看護師の道を選ばれた皆さんが、それぞれに幸せに輝ける道を歩んでゆかれることです。人生は意思決定の連続です。職場のことでも暮らしのなかでも思い悩むことは多々あるでしょう。ただ、さまざまな学びから気づきを得て、まず落ち着いて課題に向き合える心がまえを確立できたら、くよくよ悩んでしまう時期を越えて、新たな成長の扉をひらくことができるでしょう。
 筆者は40代で看護管理者の道を選んでから、一般社会で広く通用する経営学などの知の世界に触れ、さまざまな先人の理論やフレームワークを学ぶようになりました。部署運営やスタッフとの関わりに悩んだとき、また日々の看護管理にその成果を実際に活かすことができ、効果を実感しました。ただ、もっと早い時期にそうした学問に出会って考えを深めることができていたら、より良くできてこられたかもしれないと残念にも思っていました。それが、マネジメント学の専門家で専門職研究者としても著名な法政大学の高田朝子教授を共著者として、コロナ禍中で可能なかぎり議論を重ねながら2人で本書を準備してきた背景です。

 本書は看護師が幸せに勤め、暮らしてゆけるための本です。そのための情報を整理して伝え、自分自身のための意思決定トレーニングを勧め(第I部)、具体的なワークを提案します(第II部)。成人として社会で既に勤労してきた「私」を、さらに成熟した大人に育ててゆくことこそ、その幸せを支える土台になる――。それが、筆者たちが届けたいメインテーマです。
 書名の最初に掲げる「はたらく」は、漢字の「働く」でなく、あえてひらがな表記にしました。語源は諸説ありますが、「傍(はた)を楽(らく)にする」が転じて「はたらく」となったという説が、看護という仕事を通じて周囲・地域の人たちを楽にしたい私たち看護師にぴったりで、自らの人生の中でも、常に傍を楽にする存在でありたい、あってほしいと願うからです。

 2022年11月 研修のため松本に向かうあずさ号の車中で
 川﨑つま子

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はじめに

第Ⅰ部 幸せにはたらき続けるために
 第1章 あなたの未来を描く・想像する
  1.あなたが直面する「今」に向きあう
  2.専門職としての看護師の条件
  3.改めて看護という仕事に向きあう
  4.キャリアの分岐点に気づく
  5.自分を取り巻く世界を知る
  6.デジタル社会の現実を知る
  7.ストレスマネジメントを知る
  8.女性の社会進出のトップランナーとして
  9.サステナビリティとSDGsに気づく
 第2章 仕事のしくみと悩みを整理する
  1.はたらく人の悩みを解決する学び
  2.なぜマネジメントを学ぶのか
  3.マネジメント視点で仕事を分解する
  4.3つの視点で考える  ~個人・組織・環境
  5.仕事の構造に気づく
  6.あなたの報酬は足りているか
  7.専門職研究からの気づき
  8.専門職がより幸せにはたらくために
 第3章 今できることに向きあう
  1.自分の感情に気づき、整える
  2.迷ったらGO  ~意思決定できる自分を育てる
  3.リフレクションを理解し、活用する
  4.メンタルモデル  ~「考え方のクセ」を把握する
  5.人生曲線を描く
  6.他者理解は看護の本質
  7.メンターをもち、メンティを支える
  8.成長のサイクルを回す
  9.時間管理で人生を充実
  10.ネットワークづくり  ~つながりを見直す
  11.多様性の時代  ~やりぬく力と世界の拡張
 第4章 今できることをはじめる
  1.女性ならではのキャリア選択
  2.3つの「私」を育てる
  3.新しい学びを得ていくために
  4.仲間づくり  ~根幹は信頼
  5.ダイバーシティを認め、世界を広げる
  6.新しいことに取り組む心を育てる
  7.あなた自身のビジョンとゴールに気づく
  8.患者という当事者体験に学ぶ
 第5章 専門職が自分を変えるために
  1.最初の問い  ~決めることは得意ですか?
  2.マインドセットに影響を与える社会環境
  3.社会は変化し、現状ではいられない
  4.あなたの状況に気づき、把握する
  5.自分を変える  ~「このままでよい」を変える
  6.マインドセット変化の3段階
  7.解凍と移動の推進  ~動機づけを高める方法
  8.効力感を発生させるしくみとしかけ
  9.仕事の全体像を理解する
  10.他者を気にせず新しいことをはじめる

第Ⅱ部 悩まず考えられるようになるワーク17
 第1章 7つの選択で思考トレーニングする
  Work 1 思い込みに気づく
  Work 2 レジリエンスとは
  Work 3 ロジカルに考える
  Work 4 他者を知る
  Work 5 未来を予想する
  Work 6 仕事の楽しさを掘り下げる
  Work 7 意思決定を意識する
 第2章 隣ではたらく10人の悩みを想像する
  Case1 愛さん(29歳)
   ──仕事の継続と結婚(外国籍の彼と移住)の板挟みに
  Case2 拓也さん(30歳)(男性)
   ──家庭生活とスペシャリスト(認定看護師)の学びを両立したい
  Case3 遥さん(27歳)
   ──周囲の励まし(他者評価)を信じられず、後輩指導に自信がもてないで悩む
  Case4 美穂さん(31歳)
   ──自身の感情に左右されることから後輩との関係に苦労する
  Case5 舞さん(30歳)
   ──結婚2年目で妊娠を望み、夜勤のない生活(病院退職)を考える
  Case6 彩さん(31歳)
   ──同僚のモチベーションの低さに自らのやる気も下がる
  Case7 佳奈さん(27歳)
   ──後輩のメンタル不調による休職は自分の責任と考え、悩む
  Case8 萌さん(28歳)
   ──学生の頃にあこがれた海外留学を再び考えている
  Case9 桃子さん(30歳)
   ──主任試験に直面し、小児科看護を突き詰めたい自分に気づく
  Case10 瞳さん(33歳)
   ──高齢者の暮らしを支援するため、地域ではたらくか悩む

おわりに
索引
著者紹介

Column
・看護管理者公募制のすすめ
・まず、自己開示  ~ジョハリの窓から
・患者相談室のお悩みあるある
・マネジメントの5視点
・ナース30歳のハローワーク
・看護師の仕事に魅了された2つの理由
・基礎教育4年+臨床経験4年でジェネラリストナースへ
・患者相談室のアンガーマネジメント
・ウェルビーイングをめざす
・最後はジャンプする勇気
・シンプルに生きる

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はたらく看護師がキャリアを考える時の道標となる1冊
書評者:石田 陽子(東京医科歯科大学病院・看護師)

■自らの次のステップに悩む看護師へのエール
 看護師として働く中で幾度となく自分自身の「今後」について迷うことがある。ただ,多くの看護師は,その「今後」について漠然としたイメージしか持っていないのではないだろうか。卒後数年は,院内教育システムの中にいるだけで,自然と看護師としての自分の育成につながる。だが,その数年を過ぎた頃から次にどのようなステップを目指していくのかを考える機会を持つ。それは,上司との面談の中で問われることもあるが,実際には多くの先輩たちを目にし,自分はどの道を進むのかを考えていく。
 本書は,このような迷いや葛藤の中にある看護師に向けたエールのようなものであると思う。トップマネジメントを経験したプラチナナースの経験から培われた考え方の軸と,専門職について経営学の視点で分析された視点を中心にまとめられている。特に,著者の経験を振り返りながら生み出される多くの言葉は,臨床で働く看護師にとって,身近でありながらも,自分自身を肯定してくれる力強いものである。
 また,本書を読み進めると,著者がいかに深いリフレクションのもとで日々を過ごしているかを理解できる。おそらく,日頃から鍛錬されたリフレクション能力によるものだと思うが,著者のそういったリフレクションを通した文章を読むことにより,読者も自身の経験をリフレクションする機会となる。そして,そのリフレクションから得た自分を見つけるきっかけを,整理して明確化していく方法がすぐに分かり,それを基により深く考えることができる。そのため,本書は,第Ⅰ部から読み進めることで第Ⅱ部でのワークがさらにスムーズに実践できる。

■自身を知ることが自ら行うキャリア選択の第一歩に
 本書を通して一貫していることは,自分自身を知ること,そこからチャレンジすることの重要性である。私は,30歳頃からキャリアについて考えていた。どの道を進むのかという前向きなものというよりは,漠然とした不安の中にあったと思う。専門職である看護師の生涯学習の幅の広がりによって,悩みはより増えている。ただ,私自身も本書の中で言われるように自分自身の意思決定に関する能力は低く,管理職となった時も自身で選択したとは言えなかった。
 そんな中,与えられたキャリアではなく,自分で考えてキャリア選択をするきっかけとなったのは大学院への進学であった。経営学や社会学など幅広い学びを得られる社会人大学院生活で,さまざまな職種や年齢の人の考えに触れたことは大きな経験だった。飛躍的なキャリアの選択や変化はないが,小さな変化を感じ取ることはできる。自分にとって大切に思うことや自分の行動が何によって影響されるかを理解できたのである。自分を知ることは,キャリアを考える最初の一歩であることを実感している。

■現代社会と個の課題を網羅し,解決法までも説明
 本書は医療や社会の諸問題を包括的に網羅しつつ,現代社会の課題と自分自身の課題とを見比べながら読み進めることができる。さらに,その課題の解決の方法や考え方までも体系的に説明されている。看護師は,漠然とした問題から自然科学だけではなく社会科学の視点を携え,答えを導くことは日頃から得意としている。本書は,その力を自身へ発揮するための「はたらく看護師」にとっての道標となる1冊ではないかと思う。

(「看護管理」33巻5号掲載)


自分が望む生き方をイメージできる
書評者:佐々木 淳(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長)

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■在宅医療と看護師、重なるコンセプト
 ひさしぶりにアンダーラインをたくさん引きながら読んだ。看護師としてどんな働き方=生き方を選択するのか。医療機関経営者として、多くの看護師を採用し、そのキャリアアップに伴走してきた立場で考えさせられることが多かった。
 僕らが関わる在宅医療は、もともと看護との親和性が高い。というよりも、在宅医療のコンセプトは看護のコンセプトとかなり重複する。ICUベッドで患者のバイタルを追い、指示通り医療処置をするのではない。暮らしの中で、その人が「患者」ではなく、1人の家族、1人の地域住民として最後まで生き切れるように、その人にとっての最善の選択をともに考え、そっと支援する。
 「ケアリング」という言葉が紹介されていた。対象者との関係性、対象者の尊厳を守り大切にしようとする倫理的態度、気遣いや配慮が具体的な援助行動として示され、それが対象者に作用する。そしてケアする人とされる人、双方の人間的な成長をもたらす。まさに在宅医療における医療者と患者との関わりのプロセスそのものだ。ケアリングのサイクルの中でともに仕事をする医師としてどうあるべきなのか、あらためて考えさせられた。

■急速に変化する時代でどんなキャリアを描くか
 同じ医療者として、医師と看護師、キャリアの悩みも重複する。少子高齢化と疾病構造の変化に伴い求められる役割の変化は医師と同じ。DXや働き方改革などベテランが直面する社会環境の変化も医師と同じ。さまざまなものが急速に変化していく時代において、ジェネラリストの道を究めるのか、スペシャリストの道を進むのか、そしてその先にあるマネジメントのプロを目指すのか。
 在宅医療における看護は、その人の生きることの全体をケアできるジェネラリストであるとともに、在宅というフィールドで求められるスペシャリストとしての実践能力を持ち、そしてときにチームをマネジメントする力も求められる。ジェネラリストも1つのスペシャリティという議論もあるが(ここでは詳細は割愛したい)、在宅医療はそのすべての要素を包含する、医療職にとって最適なキャリアを模索するための最適な領域でもあるのかもしれない。
 これまでの豊富な経験を生かしながら日々のケアに関わるとともに、新しい考え方で再整理していく。本書を読み進めていくと、これから先も輝き続けるために、自分が望んでいる生き方はどんなものか、社会の中で活躍し続けるために新たに獲得すべきものは何か。具体的にイメージできる。
 社会からフェードアウトするのではなく、これまで獲得してきた強みを基軸に成長を続けていく。よりよい人生の選択を重ねていく。女性の社会進出のトップランナーである看護職が、人生100年時代、定年に囚われない働き方で、年齢に関係なく自己実現していく。そんな超高齢社会を豊かに生きることを体現するロールモデルとしても輝き続けてほしい。
 当法人にも少しずつプラチナナースが生まれつつある。彼女たちが力を発揮できる、成長を続けられる環境を作っていきたい。そして僕も負けずに頑張りたい(ちょっと心もとない生え際君にも、もう少し頑張ってほしい)。

(「訪問看護と介護」28巻2号掲載)

看護と経営学が「行ったり来たり」する画期的な良書
書評者:坂本 すが(東京医療保健大副学長・看護学科長)

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 「あなたは生まれ変わっても,また看護師になりますか?」と質問されたなら,本書の著者川﨑つま子さんは迷うことなく「はい」と答えるという。私だったら,次はプロゴルファーになりたい! と答えるのに……と来世を想像しながら,ちゅうちょなくそう答えるつま子さんをすてきだなと思う。

 そんな著者と出会ったのは,2009年に私の所属する東京医療保健大大学院の看護マネジメント学領域の2期生として入学された時だった。当時すでに看護部長職にあり,さらなる学びを求めての志望だった。ただ,その性格として自らが前に出ていくタイプというより,どちらかというと謙虚で柔和な物腰だが,言うべきことは臆せず伝えられる様子が見てとれた。入学後の交流からも信頼のおける看護管理者だと感じられた。

 著者のそうした人柄は,本書の随所で表れている。還暦を過ぎてプラチナナース世代となった今も,週3日は大学病院の患者相談室で現場に立つ業務を務めているそうだが,患者だけでなく後輩職員の相談にも乗っているのだろう。悩める看護師の,特にキャリアの悩みに対し,著者が解決してあげるのではなく,その人自身が向き合い,リフレクションし意思決定していけるよう,そっと背中を押すさまが本書からも読みとれた。

 ここで,それは著者の人柄や長年の紆余曲折の経験(本書p.77にある人生曲線を参照)があってこそできることではないか,という人もいるだろう。看護には固有のアートという側面もあるかもしれないが,そこにバッサリと研究者目線でメスを入れるのが共著者の経営学者,高田朝子先生のパートである。本書最大の読みどころは,看護の「内の人」であるつま子さんの看護管理実践を,「外の人」である高田先生がマネジメントの知識として学べるように解説し,さらにワーク(思考トレーニング)を通して身につけられるように構成している点だと思う。本書は2部構成となっているが,第1部がつま子さん,第2部が高田先生という区切りではなく,両著者が交互に登場する。看護の学びと経営学との“行ったり来たり”のクロスレクチャーが,意外にも読み手の理解を深くする。例えば,経営学的に「意識的に立ち止まって構造理解をする時間をとることが大事」といわれると,忙しい職場で難しい……と感じるが,「リフレクションのクセをつけよう」といわれるとすっと頭に入ってくる。それぞれが使う言葉は異なるが,書名の『はたらく自分の育て方』を,読者は看護の先人(つま子さん含む)の知恵から感覚的に得るとともに,経営学という一見,異世界の知識から俯瞰し深化させて味わうことができる,いわば一冊で2度おいしい書である。

 看護管理者はもとより,さまざまな場面でマネジメントの視点が必要になる中堅看護師,またキャリアに迷うあらゆる年齢層の看護師にとっても有用な書であることは間違いない。

自らを整え,他人とはたらく私たちに深く刺さる啓発書
書評者:矢田 明子(Community Nurse Company 株式会社代表取締役)

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 本書をひらいてまず,優しいニュアンスで自己啓発につなぐ内容だと思った。とにかく読みやすく,スッと入る文章であるのが印象的だった。

 読み返してみて,タイトルどおり看護師向けに構成されているけれど,これは人間誰しも知っておいて損はない内容だと感じた。世の中の動きや学問の成果をアップデートし,知恵をこらすワークを体験・反復し,見つめ直す……。「自分」という資源の成長・学習を自ら担っていくための学びばかりだからだ。万人が10代の頃から身につけておいてよいことだと思う。

 キャリアとは,振り返ったときにどんな歩みを経てきたか,その軌跡がその人だけの道筋となるものだと認識している。誰かが敷いてくれたレールに沿うものではない。私自身は26歳で3児の子育て中に,50代だった父を末期がんで看取ったことが,看護学を学ぶ動機になった。ただ,元々好奇心や知的関心が高い性質があり,自らの可能性をひらく1つのエッセンスとして看護学を取り入れながら,社会起業家と呼ばれる現在まで歩んできただけだと思う。今は5児の母にもなった。コミュニティナースが運営するあやしく楽しい診療所も本年オープンする予定だ。

 さて,第II部のワーク内容はそんな私にとって「悩まず考えられるように」なっているものばかりで,どれも一瞬で答えることができた。それらが日々自問してきたことばかりだからだ。回答に恥ずかしさも虚栄もない。自らの特性や考え方のクセ,何に心が動くのかということが再確認できただけだ。コンプレックスに根差すこともその人の美しさとしてにじみ出ると,私は思っている。独自のバックグラウンドは人生の景色を豊かにする。また,私には本書で言う視座(p.88)を変えて上空から俯瞰し,車を見下ろすように自己を観察し,操縦している感覚がある。その『自分』の使い方しだいで,他の誰かの可能性をひらく資源となること――。それが私の興味そのものだ。毎日,誰かとの関係性も全部,自分から始まっている。ケアリング(p.9)といわずとも全部,みんなから自分につながって返ってくる。それを知らないでどう人と付き合っていくのか。自分の機嫌も取れない人が,なぜ他人の機嫌を取ることができるのか。ケアする人になれるのか。大事なのは,自らを整え,沸き立たせてくれるような仲間,友達,知人の環境をしっかり選び取ってゆけることだろう。メンターやメンティ(p.83)に限らない。人とうまく付き合うための学びがマネジメントだと,本書は言う(p.33)。自分を知り,他人とはたらく――たしかに,本書は人とかかわる仕事を選んだ私たちに深く刺さる内容だと思う。

 私は,多くの人が本来持っていた「看護」を社会に戻していきたい。ケアの担い手1人ひとりも自分とうまく付き合い,幸せで,そして社会全体でナーシングがユニークに広がっていく未来を見たい。本書がその手立ての1つになるような気がしている。

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