看護のアジェンダ
[第214回] 「行いてその責をとる」
連載 井部俊子
2022.10.31 週刊医学界新聞(看護号):第3491号より
会せず
会して議せず
議して決せず
決して行わず
行いてその責をとらず
聖路加国際大学教育センター主催の看護管理塾第4章「効果的な会議」のセッションで,今年も登場した「会議五悪」といわれる名言である。
「会議五悪」に学ぶ効果的な会議の条件
「会せず」とはメンバーがきちんと集まらないことを指している。参加する/しないの問題だけでなく,会議に遅れてくるなど定刻通りに始まらない状態である。会議が開催される場所がわからなかったり,開催時刻が変更になったりすると生じやすい。会議室に近いところにいる人が,会議に遅刻しやすい傾向がある。そもそも,どの会議に誰をメンバーとするかは組織の意思が働く。
「会して議せず」とは,メンバーがきちんと集まっているのに議論が交わされない状態を表す。上司からの一方的な伝達や,現状報告だけで終わってしまう「報告会」などが当てはまる。一方的な伝達や報告,資料の説明などはできるだけ事前にやっておきたいものである(が,しかし,なかなかできない)。会議をやるには集まっているメンバーの人件費などのコストが発生しているわけであるから,もっと生産性のある仕事をしたほうがよいということになる。
「議して決せず」とは,議論は行われるものの,最も大切な「結論」を出さないで会議を終わらせてしまうことである。ただ会話をして終わるのではなく,会議の最後には必ず結論を出し,どのような行動をするのかを明確にすることが必要不可欠とされる。これらをきちんと記録に残す書記の役割はきわめて重要である。議事録の取り方で書記の「概念化力」がわかる。
「決して行わず(実行せず)」とは,せっかく出した結論なのに実行しないまま進展しないことを表す。なぜ出した結論をすぐに実行しないかというと,日々の業務に追われて新しいことをやる余裕がない,実行するのを人任せにしている,期限が決められていないといった理由が考えられる。これらを防ぐには,誰が,いつまでに,何をどうやってやるかを「結論」に含めておく必要がある。
「行いてその責をとらず」とは,一応「やるべきことはやろう」というところまではいっているのに,そこに責任が伴っておらず,「とりあえずやっておこう」という意識で進められてしまうような状況である。会議に参加したメンバーが熱い気持ちでコトにあたる気概が必要である。
というわけで,看護管理塾第4章「効果的な会議」では,会議の目的・目標を明確にして,その達成をめざすこと,構成員の主体的な参加を促すこと,会議は予定した時間内に終了することを効果的な会議の条件として挙げ,その方法論を学ぶ。
再考「看護師長会議の議長は誰がすべきか」
「効果的な会議」のセッションで,事前学習資料として提示された「看護師長会議の議長は誰がすべきか」(本連載第212回)がある(当初の計画では,この資料に基づいて「意見交換する」予定であったが,時間切れとなった)。
上記の資料の筆者である私の主張は以下である。「看護師長は,おそらく最低月1回以上は開催される看護師長会という会議体において,ガバナンスとアカウンタビリティを果たす重要な役割を持つ。中医協の会長が議長を務め,幾多の猛獣をコントロールして一定の結論に達するように,看護師長会議も個性的な猛獣を育て議論し,看護部の考えや活動を公開するアカウンタビリティを持たなければならない」。そうであるからこそ,「看護師長会議の議長は,師長持ち回りなどという発想ではなく,看護部長が真剣勝負の場として,議長を担わなければならない」のである。
つまり,看護師長会議は人材育成のためのレッスンの場ではないと私は考えている。レッスンの場として看護師長会議の議長を他者に委ねるならば,看護部長はその意思を明確にしておくとともにそのリスクも認識しておく必要がある。いずれにしても,毎回全ての看護師長会議をレッスンの場とするわけにはいかない。
看護部の意思決定機関として,看護師長会議が「会し,会して議し,議して決し,決して行い,行いてその責をとる」ことの中心となるのは,やはり看護部長である。
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